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詰将棋おもちゃ箱詰将棋研究室
研究展示室 No.1 近藤真一さん
詰将棋研究室
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出題時のコメント:

手数表示なしだと全員誤解かも。実力者のみなさん、是非挑戦を。367手


おもちゃ箱初の300手超の長手数作品の出題です。 作者は詰将棋パラダイスで大学院を担当する現役看寿賞作家、近藤真一さん。 さて、どのように楽しませてくれるのでしょうか。 上図で手順を並べながらお読みください。

[序(12手)] 12手目15玉まで
「14と、同玉、24と、15玉、14と、同玉、64飛成、15玉、24龍、同玉、33桂成、15玉」
序は軽く、と金消去から龍捨てで玉を24に引き出して33桂成と飛を入手します。

[35歩消去(10手)] 22手目同銀まで
  13飛、14飛合、同飛、同玉、
  34飛、15玉、35飛、25飛合、同飛、同銀

34飛と狙いをつけて35の歩を奪取します。

[45歩消去(24手)] 46手目同銀まで
  13飛、14飛合、16歩、同銀、14飛、同玉、
  44飛34歩合、15歩、同玉、45飛、35飛合、同飛、同歩
  [35歩消去]

25銀をどかしてから、同じように44飛と45歩に狙いをつけます。
ここですんなり取れれば普通の遠打型連取りですが、34歩の中合。これを同飛と取ってしまうと、15玉、35飛、25飛合、同飛、同銀。あれ、元の局面に戻ってしまいました。失敗です。
そこで、15歩から45飛と45歩を奪取。35飛合、同飛、同歩で、45の歩は消えたけど代わりに35歩が発生してしまいました。これを[35歩消去]の手順で消します。
45飛のとき25飛合の応手は34歩があるので詰み。手順は上図の分岐棋譜で。

[55歩消去(36手)] 82手目同銀まで
  13飛、14飛合、16歩、同銀、14飛、同玉、
  54飛44歩合、15歩、同玉、55飛、45飛合、同飛、同歩
  [45歩消去(16歩、同銀は不要)]

同様にして55歩を45歩、35歩と移して消去します。
これで趣向が見えてきました。ある筋の歩を消去する手順のなかに、一つ前の歩を消去する手順が含まれる、飛の再帰連取り趣向です。

[65歩消去(48手)] 130手目同銀まで
[75歩消去(60手)] 190手目同銀まで
[85歩消去(72手)] 262手目同銀まで

同様にして65歩、75歩、85歩と消去して行きます。

[95歩消去(72手)] 334手目同銀まで

ここも同様にして、と書きたいのですが、恐ろしい罠がありました。

  13飛、14飛合、16歩、同銀、14飛、同玉、
  94飛84歩合、15歩、同玉、95飛、85飛合、同飛、同歩
  13飛、14飛合、14飛、同玉、
  84飛74歩合、15歩、同玉、85飛、75飛合、同飛、同歩
  13飛、14飛合、14飛、同玉、
  74飛54歩合、15歩、同玉、75飛、55飛合、同飛、同歩
  13飛、14飛合、14飛、同玉、
  54飛44歩合、15歩、同玉、55飛、45飛合、同飛、同歩
  13飛、14飛合、14飛、同玉、
  44飛34歩合、15歩、同玉、45飛、35飛合、同飛、同歩
  13飛、14飛合、14飛、同玉、
  34飛、15玉、45飛、25飛合、同飛、同銀

8筋、9筋の歩が消えると、96馬の筋が生じます。
そのため54歩合のところ64歩合だと短い順(上図で分岐棋譜で示します)があり、普通に64歩合、54歩合、44歩合、とする手順は変化別詰ということになります

むろん、作者は誤解者を狙ったわけではなく、規則正しくしたかったがやむを得ず不規則箇所ができてしまった、ということで、「誤解狙いではないので手数表示でお願いします。」との指示がありました。

[収束(33手)] 367手75金まで
  13飛、14飛合、同飛、同玉、24飛、同玉、25香、33玉、24銀、34玉、
  35歩、44玉、45歩、54玉、55歩、64玉、65歩、74玉、96馬、85歩合、
  76香、同と、85馬、同玉、76金上、94玉、95歩、同玉、86金、94玉、
  95歩、84玉、75金右まで367手

飛の再帰連取り趣向は、これまで今村修さんの「天月舞」(近代将棋1995年12月、塚田賞)1局しかなく、実現が非常に難しい趣向です。 本局はそのバリエーションで、玉方に銀が加わっているために変化がかなり複雑になっています。 最後の変調は趣向的にはちょっと残念ですが、微妙な変化紛れの差で趣向が成立していることを考えると、ここ1箇所だけに抑えたのは作者の力量のなせるわざともいえそうです。

ともあれ、この楽しい趣向の2号局誕生を喜びたいと思います。 是非並べてご鑑賞ください。

それでは皆さんの感想を(解答到着順)。

橘圭吾さん:
手数がなければまず間違いなく気が付かないですねえ。分かれば、短縮できそうな部分がこの辺しかないので、発見は簡単でした。手順も綺麗な構図の呼び出しはがしになっていて面白い。

トップ解答は初解答の橘さん。 かなりの実力者とお見受けします。

谷口翔太さん+今川健一さん:
雄大な剥がし趣向に感激。飛合の回数は新記録?。
手数表示に助けられての解答で、64歩合で危なく填る処でした。
看寿賞推薦はホームページもOKかな?。

飛合回数はメタ新世界93回が記録なので、更新は大変ですね。
看寿賞はホームページは対象外らしいです(ここ参照)。 来年は変わるかな。

井上徹也さん:
初型からは、天月舞趣向とわかるのですが・・・収束への入り方がわかりません。
それと印象的なのが52玉の配置。某氏の同趣向の未発表作も52玉を配置してありました。
鳥本敦史さん:
手数から見て解く気があまりしなかったのですが、覚悟を決めて解いてみると序盤が比較的わかりやすかったので趣向にすんなり突入できました。
趣向に入ってからはすんなり収束まで行きましたが手数が合わず。
どこで間違えたのかわからずしばらく放置していましたが、64歩を打つと早詰が生じるのがわかってやっと解けました。
趣向部分は今村さんの天月舞に似た感じですが楽しめました。
手数表示がなければやられるところでした。
橋本孝治さん:
私自身も「アルカナ」などの経験で、このような呼出しはがしの実現の困難さは身に沁みて知っているので、これを実現した作者の腕と根性(?)に敬意を表します。
294手目に64歩が利かない破調は残念ですが、むしろ「よくこれだけで済んだ」と思います。解く前はもっと乱れがあるんじゃないかと思っていましたので。
涼秋さん:
手数が示されていなければ379手詰,手数は長いがワンパターンの繰り返しでやさしい問題と済ませてしまうところ。こういう形では全て中合するものと思い込んでしまいますが,6筋に歩合をすると早詰とはとんだ落とし穴があったものです。
塚本治さん:
近藤真一様の 詰将棋は 残念ながら 379手 より みじかくならなかったので 今回は見送りです。
こちらは 疲れましたけど 楽しかった。

このような大作を投稿くださった近藤さん、そして正解されたみなさま、挑戦されたみなさまに敬意を表します。 ありがとうございました。  


研究展示室No.1 解答・感想:8名 正解:6名(下記)

  橘圭吾さん  谷口翔太さん+今川健一さん  鳥本敦史さん
  橋本孝治さん  涼秋さん

抽選の結果、 涼秋さん が当選!

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