木目1

超長編作品のプログラムによる解図と検討

1999年 9月 加藤 徹

300手以上の超長編詰将棋の修正図、改作図を含む全作品について、 コンピュータで完全性を確認し、現時点で最良と考えられる

超長編作品リスト

を作成しました。

1998年9月に行われたコンピュータ将棋協会 (CSA) の例会で、その時点の結果を報告しましたが、 それ以降 (1999年9月までに) 発表された超長編作品についても完全性を確認しましたので、 合わせて報告します。

1.超長編詰将棋の完全性

何百手にもおよぶ超長編詰将棋には、強い魅力を感じる人が多い。 新しい作品が発表されると、これは歴代第何位の長手数である、といったことが話題になる。

しかし、長手数であるだけに検討も難しく、不完全作も多い。 そのため、修正図も多数発表されており、更に、少しでも手数を伸ばそうとした改良図も、 作者自身によるもの、他の作家によるもの、かなり発表されている。

これらの図は解答募集されないことが多く、ほとんどは完全かどうか不明である。 また、発表時完全とされた作品も、あとで不完全と判明したケースも多い。

そこで、コンピュータでこれらの作品の完全性を確認し、超長編作品リストを作成することを試みた。 もとより、100%の完全性チェックは不可能だが、現時点で最良のリストが作成できたと考えられる。

2.完全性のチェック方法

これまで発表されている、300手以上の超長編詰将棋の全作品に対して、 プログラム(脊尾詰と脊尾弐)で解図を試みると共に完全性をチェックした。

パソコンは、CPU:PentiumII 400MHz、メモリ:384MB、 OSはWindows95である。

プログラムは、下記のベータ版を使用した。 ベータ版は頻繁に更新されるため、それにより解図時間が変動することがある。 そのため、解図時間は、参考程度に見ていただきたい。

 励棋 6.0  脊尾詰 2.1 脊尾弐 2.3

このプログラムには、求めた解答が変化別詰か検証し正しい解答を求める、変別検証の機能、 作意手順と別な詰上りになる手順があるかチェックする、別詰検索の機能がある。 これらの機能を使用して、まず正しい解答を求め、更に別な手順がないかチェックした。

解図、別詰チェックとも、長時間結果がでない場合は、原則として2時間で打ち切っている。

3.チェック結果

結果として、これまで完全とされてきた作品の中に、相当数早詰、不詰などの不完全が発見され、 また、解答募集されていない作品は、ほとんどが不完全であることが判明した。 超長編の完全作を創作することの困難さを、再認識させられる結果である。

脊尾詰と脊尾弐では、脊尾詰の方が超長編に強いといわれているが、 脊尾詰だけが解けた問題は 「ミクロコスモス」 だけであり、 逆に脊尾弐だけが解けた問題は、「桃花源」 「ゴゴノソラ」 「天国と地獄」 「回転木馬」 の4題であった。

また、脊尾詰と脊尾弐のいずれでも解けない問題は下記の7題だけとなった (不詰の作品を除く)。

「メタ新世界」 と 「呪われた夜」 は、持駒変換しながら大量のと金をはがす作品で、 順番が不特定のため組み合わせが多いのと、共謀数の見かけ上の増加が発生するのが、 解けない原因と推測する。 「風神」 は竜追い作品で、これが解けないのは不思議である。 他の4題はいずれも複雑な馬ノコである。

この調査結果から、詰将棋プログラムの実力は、超長編作品に対しても、 解図だけでなく検討にも十分実用の域に達したといえる。

ただし、裸玉や大道棋など、手数は短くても解けない問題も多数あり、 上記の作品とともに今後の課題である。 新手法の開発を期待したい。

チェックした結果を 超長編作品リスト に示す。

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