詰将棋おもちゃ箱カピタンリバイバル

48 Andernach(アンダーナッハ)について

占魚亭

カピタンリバイバル
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フェアリールール「Andernach」の紹介をさせていただきます。
Andernachとはドイツの街の名前で、どうしてこの名がついたのか私は知りません。


1.ルール

WFP作品展登場ルールのまとめ(PDF)で、Andernachは以下のように説明されています。

【Andernach】
駒取りを行った駒(玉を除く)は、その場で相手の駒となる。

補足
1)取ると二歩になる場合相手の駒にならない
2)駒の向きの転換は成生の選択の後に行われ、成生の選択権は駒を取った側にある
3)駒取りの場合に限り、8段目への桂の不成、9段目への桂香歩の不成が可能(二歩の例外を除く)

※駒取りにより所属が変化することを「転する」といい、棋譜では「転」と表記します(例:5五竜転)。


2.作例:Andernach協力詰

ルール説明だけではどういう感じなのか分からないと思いますので、Andernach協力詰を3作紹介します。

まずは自作。 Andernach協力詰入門シリーズの1つ(Twitter / 2014・5・28)。
初手は1二香か2三桂のどちらかですが、1二香には同玉or2二玉で詰まない(飛車で取るのは転して王手がかかるため着手不可)ので2三桂。 これには同飛と応じますが、駒取りが行われたので転して所属が攻方に変化します(「同飛転」と表記)。
以下、1三香に同桂転と桂馬を転させて、2一飛成で詰み。

(手順)2三桂、同飛転、1三香、同桂転、2一飛成まで5手。

続いては、スマホ詰パラで活躍中で昨年本誌初入選を果たされたdivDさんの作品(Twitter / 2016・1・17)。
受方6一香がなければ6八竜で詰みなので、香が消えた局面を目指します。
ということで、初手は6一香不成転(成転だと6九地点に戻れない)。2手目は合駒をするか逃げるかですが、ここは5八玉が正解。4八玉や合駒をすると詰みません。
以下、金で香を呼び戻し、香で玉を初形位置に戻して初形から受方6一香が消えた局面が完成し、6八竜で詰み。
双方香不成転で原形消去をする作品でした。

(手順)6一香不成転、5八玉、6九金、同香不成転、5九香、同玉、6八竜まで7手。

最後に紹介するのは、伝統ルール・フェアリー双方で活躍中の上谷直希さんの作品。
初手は2五歩。これに対しては合駒しかありませんが、頭の丸い角・桂合は手が続かないので論外。金・銀合は2七竜に対して同金or同銀と応じると転して王手がかかるため玉で取るしかなく、手が続かないのでダメ。香合は2七竜に同香不成転(成転は王手がかかるため着手不可)とできますが手が続かずダメ、2八桂も1七玉でダメ。ということで、歩合が正解。
3手目2七竜には玉で取るのは論外なので歩で取りますが、二歩になるため転は行われず同歩不成と応じます(成転は王手になるため着手不可)。
以下、2八桂に同歩成転と歩を転させ、1七とで詰み。
二歩禁を利用し、転の可否を歩の成生と対応させた秀作です。
なお、自作解説が『フェアリー時々詰将棋』の「ネット発表作」で読めますので、興味のある方はご一読を。

(手順)2五歩、2六歩、2七竜、同歩不成、2八桂、同歩成転、1七とまで7手。


以上でAndernachの紹介を終わります。
本稿をきっかけに、1人でも多くの方がこのルールに興味を持っていただけると嬉しいです。
また、作品の使用を快諾して下さったdivDさんと上谷直希さんに御礼申し上げます。