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38 フェアリー詰将棋の分類(1) 詰将棋の分析 小林 博 ・ 加藤 徹 カピタン第8号より |
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フェアリー詰将棋は、普通の将棋の一部を変えた将棋の詰物としてみることができます。
例えば、安南詰やネコ鮮詰は駒の動きを変えたものだし、円筒盤やドーナツ盤を使用する詰将棋もあります。 ところが、盤、駒の動き、ルールなどを変化させるのではなく、「詰将棋」のルール自体を変えてしまったフェアリー詰将棋も存在します。
主要なルールはこの4つ位でしょう。 まず最初に、3と4を変化させることを考えてみましょう。 先手、後手とも最善(協力して後手玉を最短で詰める)とすると「協力詰」になることはすぐわかると思います。 それでは先手が「最悪」、つまりできるだけ詰まないように、詰むとしても長く詰めるようにする、としたら、いったいどうなるのでしょうか。 |
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先手が詰めようとしないのだから、通常ではとても詰まないでしょう。 そこで、協力詰のように、後手は「最善」(できるだけ早く詰まされる)としてみます。 仮に「最悪詰」と呼ぶことにします。 |
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1図。 初手は36金か27歩しかありません。 玉方は詰められようとして、詰方は詰めまいとする。 こっちの方が本当の自玉詰のような気がするんですが、どんなものでしょうか。 |
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先手が詰めまいとするばかりではなく、後手も詰められまいとする。 そんな詰将棋が果して可能でしょうか。 後手玉の詰という目的に対し双方最悪の手順を選ぶにもかかわらず、まるで悪魔に罠を仕掛けられたかのように詰んでしまう。 それが「悪魔詰」です。 なにしろ双方がどんな手を指しても全て詰んでしまうのです!! 双方「最悪」を尽くすのだから、最長手順のみが正解です。 |
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2図。 初手は16歩の一手。 後手も14玉の一手です。 そこで15歩とすると詰んでしまうので36馬。 詰将棋ならこれで詰ですが、まだ合駒の余地があります。 25合に同馬は詰みだから15歩、24玉の一手で25馬は詰みだから25香、で34玉。 ここで25の合が歩、香、銀だったら45金か45馬(か45銀)しか王手がなく詰んでしまいます。 桂合は26桂、44玉、45金で詰。 飛合は44飛、同玉、45金迄、または14飛、24合、45金迄、いずれも3手で詰みます。 金合ならば24金、44玉、34金、同玉、45金迄と5手かかるので、これが正解です。 ここでまとめておきましょう。 後手玉を詰めるという目的に対し、
次に2の後手の玉を詰めるという目的を先手の玉を詰めるという目的におきかえた詰将棋−−自玉詰の系統を考えてみましょう。 |
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先手の玉を詰めるという目的に対して、先手は最善、後手は最悪を尽くします。 今迄に発表された自玉詰は十数局に過ぎませんが、六千手をこえる超長編、煙詰など高度な作品も多く、自玉詰独特の手筋もあり、まだまだおもしろい作品の登場が期待されます。 |
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3図。 自玉詰の第一人者、花沢正純氏の小品です。 初手は27金。 28金では後に27玉と逃げられます。 18銀と打って後手の玉を詰めてしまったり、29桂、同香成、同玉のように王手が続かない順は先手の負け、不詰です。 さて、27金に対して後手は同香生! |
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先手の玉を詰める協力詰ですが、後手の玉に王手をかけるので少し妙な気がします。 これも発表数は少ないですが、短編に佳作が多く、今後開発されそうな分野です。 協力詰と同様、詰上りを想定すると解き易いようです。 |
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4図。 99角、77飛合、57飛、64玉、97角、同桂成迄6手。 協力自玉詰の初形は、たいてい先手の玉は詰みにくいようになっています。 それをどうやって短手数で詰み形にもっていくか。 そこに協力自玉詰の醍醐味があるのではないでしょうか。 本局は角の限定打2回に飛合を入れてスッキリまとめています。 先手玉を詰めるという目的に対し、
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これは先手は最悪、詰められまいとするが、後手は最善、詰めようとして結局詰む、というもの。 これだけみると詰将棋で先後を逆にしたようであるが、これが先手は王手をかけ、後手は王手をはずす手順の中での話であるから、全く異なる詰将棋になるわけです。 |
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5図。 初手は47金と27金がありますが、47金だと27玉、そこで37金、17金、28金は1手詰だから18金の一手。 これに対して後手は16玉。 そして27金、同玉、37金、同桂生の8手です。 27金は、以下同金、47金、26玉、36金、17玉、18歩、16玉、26金、同金、17歩、同桂生迄12手で初手47金の8手より長く、この手順が正解です。 |
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これは悪魔詰の自玉版で、先手はつめられまいとし、後手は詰めまいとするにもかかわらず、先手玉が詰んでしまうのです。 |
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6図。 初手は28香か39桂ですが、28香だと、17玉、18香、同桂成の4手詰。 したがって39桂。 以下、同飛成、、28香、同龍、同歩、17玉、27飛、同と、18香、同と迄10手が正解となります。
古くから行われているその方法の一つは、玉ではなく玉以外の駒を詰める、というものです。
飛を詰める飛詰、、角を詰める角詰などがよく制作されるようですが、これらを総称して「駒詰」と呼ぶことにします。
もちろん駒詰も3、4を変えることによって「駒協力詰」「駒悪魔詰」などが考えられ、また2を先手の玉以外のある駒を詰める、とすれば「自駒詰」の系統もあるわけです。 つぎに1の王手条件をはずしてしまったらどうなるでしょうか。 これまで「詰将棋」のルールの変化について不十分ながら分析してきました。 その中で、協力詰、自玉詰の位置がある程度明確になったと思います。 また、いくつかの新しいルールを導入しましたが、これらのルールの作品、これらに対する意見など、お寄せいただければ幸いです。 なお、例題の作者は3図を除いて全て小林博です。 |
柿木義一さんの Kifu for Java を使わせていただいています
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