「やっぱり。。。」
「ん?」
「映画観て食事してっていう、それが定番じゃないかな」
「そうか」
「先生、映画は」
「最近観てない」
「そうですか。。。」
「じゃあ、映画にするか」
「いいんですか?」
「ん。何が観たい?」
「できれば、小さな映画館でやってるような映画がいいです。大作映画とかじゃなくて」
「そう」
「先生と観るならそういう映画のほうがいいかなと思って」
「どうして?」
「あまりたくさんの人と共有しているようなものは観たくないっていうか
『あの小さな映画館に行ったよね』って後で話せるようなものがいいです」
「そうか。。。」
「はい」
「じゃあ考えておいてくれるかな」
「私が決めていいんですか」
「ん」
「どんな映画でもいいですか?」
「まかせる」
「わかりました。いつごろ行けそうですか」
「明後日は君も休みだろう」
「はい。じゃあ探しておきますね」
このところ、2人の休みが合う日はいつも一緒にいた。
それが当たり前になりつつある。
。。。あそこにも行きたい。あんなこともしてみたい。
やりたいことはあるし、2人で見たいものもある。
でも。。。と倫子は思った。
本当は、先生の部屋で、一緒に時を過ごせればそれでいいのかもしれなかった。
何をするでもなく、何を話すでもなく。
先生は本を読んでいたりして。
私はコーヒーを入れたりして。
私が呼べば先生が笑ってくれる。
先生が呼べば私が返事をしてあげられる。
『そばにいてくれ』
そう言った先生との、それが一番幸せな時間の過ごし方なのかもしれないと倫子は思っていた。
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