川面に夕日が映っていた。倫子は毎日、この川に来ている。
まだ水は冷たいだろうが、夕日が映し出されたそこだけはなんだか温かいように感じられた。
。。。川面に映った夕日に、直江が思い出された。
今まで何かあると川に来て、先生ともよく川で出会った。
ここにくるといろいろ思い出してつらい気もするが、でも、一番直江を感じられる場所でもあった。
『もっとここでいろんな話をしたかったな。。。』
夕日に直江の温もりを思い出す。
『ここで先生と夕日を見たことはあったかしら』
夕日は、ないような気がする。
先生の部屋からはよく夕日を見た。
オレンジ色に染まった先生の顔を覚えている。
とても優しい顔だった。
「おかあさーん」
陽介の声だ。
「ここよー」
陽介が清美と一緒にやってきた。
「陽介がお母さんはどこだっていうもんだから」
「そう」
「おかあさん、何してたの?」
「お父さんとお話ししていたのよ」
「おとうさん?」
「そう。ここだとおかあさんはおとうさんとお話ができるの」
「ふうん。。。僕もお話がしたいなぁ」
「。。。夕日が綺麗ね」
陽介の願いに答えられなかった。
おとうさんは死んだということを、陽介がどれほど理解しているかわからないが、
簡単に会うことも話すこともできないのだということは理解しているようだった。
「うん! きれいだね」
陽介の顔が夕日に染まってオレンジ色に輝いていた。
あの日の直江のようだった。
『この子は直江先生に似てくるだろうか』
先生のお母さまは『庸介の子供の頃によく似ている』といって涙を流されていた。
会うととても喜んでくださるが、いつも涙ぐまれる。
庸介を思い出す。。。と。
『先生に似てもらいたいなぁ』
先生によく似た陽介を育てるなんて。
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