−朝の医局−

「大丈夫か?」
「あ、はい。すいませんでした」
「いや。すまなかったな」
「え?」
「本当は気がすすまなかったんだろう」
「。。。そんなことありません。先生に言われたこと、ちゃんと自分で考えました」
「それならいい」
「はい」
「石倉さんは?」
「私に何度もお礼を言って。。。今は眠ってます」
「そうか」
「すいませんでした」

「君はよく泣くな」
「そうですか?」
「うれしくても悲しくても」
「先生の前でうれしくて泣いたことなんかありません」
「そうかな」
「先生には何度も突き放されたっていうか」
「そんなことはないだろう」
「じゃあ、驚かされてばっかり」
「え?」
「なんか、夢のようですから」
「何が?」
「こんな話をしてるの」
「しかも医局で、か」
直江が微笑みながら言った。

先生が私の前で笑ってる。初めてかもしれない。。。
それを見て、倫子はまた涙が出てきた。

「どうした?」
「これはうれし涙です」
「忙しいな、君は。。。」

そう言いながら、直江は倫子をまた抱きしめた。

賛否両論あるであろう医局の抱擁。直江先生だってちょっと気がとがめていたんだよ。