翌朝

会計を済ませた後、直江が声をかけた。
「カメラ、持ってきてるって言ってたな?」
「? はい。持ってますけど」
「じゃあ、写真を撮ろうか」
「え? 先生、でも。。。」

「すいませんが。。。表で写真を撮りたいんですが、お願いできますか?」
倫子の返事も聞かずに直江が言い出した。

「はい。どちらでお撮りしましょうか」
「どこで撮りたい?」
直江が振り返って、倫子にたずねた。

「え、どこでもいいんですけど、でも先生。。。あの」
「じゃあ、玄関のところで」

ホテルの玄関の脇に大きな木が立っていた。昨夜からの雪で白く化粧している。
「じゃあ、ここでいいかな」
直江がその木の前に立った。
倫子は直江の後ろについてきたが、突然のことにまだ躊躇していた。

「君もここに」
「いいんですか?」
「何?」
「写真なんて。。。」
「もちろん」 直江が微笑んだ。
その微笑みに安心したように、倫子が直江の横に立った。

「よろしいですか? それではお撮りしますよ」

カシャリ。

「あ、あの、すいません。もう一枚お願いできますか?」
「どうした?」
「いえ、なんか変な顔しちゃったかもしれないので」
「それでは、もう一枚お撮りしますね」

倫子は自分が驚いた顔をしたかもしれないと思っていた。
『だって、先生がいきなり手を握るんだもの。。。』

あくまで写真に固執する私。しつこすぎる。