焼き増し

「高木くん」
「はい?」
「これなんだけど」
「え? あ、この間の写真できたんですね」
「皆に渡してくれるかな」
「はい! ありがとうございます」

しばらくすると、休憩室から笑い声が聞こえてきた。写真を見て皆でいろいろ話しているらしい。
『志村くんの声も聞こえる。喜んでもらえたかな。さて、と。。。神崎先生と直江先生は医局で渡すか』

小橋が医局に行こうとすると、倫子が駆け寄ってきた。

「どうもありがとうございます」
「喜んでもらえた?」
「こういう職場の写真って初めてなんで、うれしいです」
「直江先生もいるしね」
「え? あ、そうですね。ほんとはそれが一番うれしいです」

小橋が医局に行くと、直江だけがいた。

「直江先生、これ」
「あ」

直江はしばらくだまって写真を見ていた。

「わりとよく写っているでしょう」
「そうですね。僕もまともだな」
「ご迷惑じゃなかったですか」
「え?」
「無理にお願いしてしまったんじゃないかと気になっていました」
「いえ、そんなことはありません。。。ありがとうございます」
「ええ。。。志村くんも喜んでくれたようです」
「それなら、よかった。彼女も笑って写ってますね。。。彼女のためにもよかったです。そう思います」
「そうですか」
「はい」

そう言って、直江はまた写真を見つめた。
優しい目をしてる。。。そう小橋は思った。

直江先生の優しい目。基本的には成田さんの一件があったあと、「じゃあ、表で」と言った倫子にうなづくあの目。
これだけでわかるあなたもかなり重症ですよ。直江先生が倫子を見つめる目。第3者が見たことってなかったような。