「外科に新しい看護婦入ったでしょう」
「ああ」
「かわいい人よね?」
「。。。」
直江は、さっきまで一緒にいて、泣きながら抗議していた倫子の顔を思い浮かべた。

「前の病院で、彼が院長の息子を殴って、それで辞めたんですって。
 で、その彼っていうのがこの間入院した戸田次郎だっていうんだから」
「そう」
「すごいわね。うちで騒動起こさないといいけど」
「しかし、正看だろう。それなら仕事はしっかりやるんじゃないのか」
「だといいけど、どうかしらね。早速小橋先生と仲良さそうだって噂よ」
「誰に聞いたんだ」
「え? 誰かしら見てるものよ。先生も気をつけないと」
「別になにもない」
「MRと親密だってこともない?」
「ない」
「どうかしら」
「何が言いたい」
「別に。ただ、噂は広がるってこと。私はあなたが何をしていようと気にしないけど」

三樹子が直江を連れ出せたのは久しぶりだった。
こんな話をしていても、それで直江が不機嫌になったとしても、三樹子は気持ちが高揚していた。

「。。。出るか」
「先生ったら怒ったの? 例え話よ」
「別に」

三樹子は直江の女性関係、どのくらい知ってたのか、謎。小夜子のことは耳に入ってると思うんだけど。