転寝うたたね

倫子は直江の傍らで転寝をしていた。
顔をこちらに向けて、かすかに微笑んでいる。
夢でも見ているのだろうか。

「あ、私、眠っちゃったんですね」
「夢でも見てたのか?」
「え? なんでですか?」
「笑ってた」
「そうでした? 二人でボートに乗ってる夢見てたんです」
「ボート?」
「二人でボートに寝転がって。すっごくきれいな青空でした」
「そう」
「雲ひとつないんですよ」

「窮屈じゃないかな」
「え?」
「二人で横になるんだろう」
「そうですけど、多少窮屈でも我慢してくださいよ! だって同じ空が見られないじゃないですか」

直江はその光景を思い浮かべて、ふっと笑った。

「大変そうだな」
「そうかな。。。でも、やれないと困ります。今やりたいことのナンバーワンだから」
「ナンバーワンか。。。」
「はい」
「今度、川原にでも行くか」
「え?」
「この時期、ボートは寒くてかなわないが、川原に寝転がるのでも雰囲気は味わえる」
「そうですね!」

そういえば、前に二人で空を見上げたことがあった。
あのときと同じことをしても、気持ちはずいぶんと違うだろうなと倫子は思う。

『だって、私は泣いていないし、先生がそばにいてくれる』
空は同じように青いだろうけれど。。。

二人でボートに乗る。夢でしかなかったのだけど。