「三樹子さん。。。私」
「なに?」
「子供、できたんです」
「え? 直江先生の?」
「はい」
「。。。そう。おめでとうって言っていいの?」
「もちろん! 産むつもりですから」
「直江先生は知ってたの?」
「いえ」
「知らなかったの?」
「はい。。。なんて言ったでしょう。直江先生」
「そりゃあ喜ぶでしょう」
「堕ろせって言われたかもしれませんよね。。。」
「直江先生がそんなこというはずがないわよ」
「そうでしょうか?」
「そう思わない?」
「。。。なんか、いろいろ考えてしまって。
先生は知らなかったほうがよかったって思う気持ちもあるし、
知っていれば一人で逝くなんて思わなかったんじゃないかって思う気持ちもあるし」
「そうね。。。」
「私は生きていてもらいたかったから」
「わがままな人よね。結局自分ひとりで何でも決めてしまって」
でもね、私はあなたがうらやましいわ」
「三樹子さん?」
「直江先生が選んだのはあなただったんだから」
三樹子も直江先生といろいろあったんだろう。つらいのは私だけじゃない。
倫子が泣き出しそうになっているのを見て、三樹子は言った。
「きっと男の子じゃないかしら。私の勘、当たるのよ」
「男の子ですか?」
「きっと、生まれ変わりね」
『生まれ変わり』
倫子は涙がこられきれなくなった。
「ほら泣かないで。あなたの笑顔が好きだったんだって言ったでしょう」
「はい!」
『あなたの愛した人は素晴らしいわね』
泣きながら笑顔を見せる倫子を見て、三樹子は直江に語りかけるようにつぶやいた。
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