三年目

このところものすごく暑い日が続いている。
このぶんでいくと、北海道も暑いだろうなぁ。
あ、でも北海道はそんなでもないかな。
そうだと、いいけれど。

「志村さん、夏休みは来週だったわね」
「ええ。この時期は北海道に」
「支笏湖ね。。。」
「陽介と約束してますし」
「そうよねぇ。お誕生日のお祝いでもあるんだし。陽介くんも楽しみにしてるでしょ」
「飛行機が好きみたいです」
「男の子ねぇ」
「夏もいいですけど、私は冬の支笏湖のほうが好きです」
「どうして?」
「直江先生に会えるような気がしますから」
「そう」

「夏に行くときは陽介のやりたいことを聞いてあげるようにしてるんです」
「何?」
「花火とか、キャンプとか。。。」
「陽介くんはどうして行くのかわかってるの?」
「一応、話はしてますけど、わかってるのかどうか。でも、『おとうさん』って話してたりしますから」
「湖に向かって?」
「ええ。まだ私はボートに乗る勇気がないので岸からですけど」
「そう。。。支笏湖ではボートに乗っていないの」
「まだ。。。いつかは絶対直江先生の近くに行って、先生のいるところを感じなくちゃとは思ってるんですけど」
「悲しいから?」
「悲しい。。。そうですね。飛び込んでしまうかもしれないなって思うんですよ」
「まさか」
「だって。。。そうすれば会えそうな気がするんです」
「じゃあ、ボートに乗るのは夏のほうがいいわね」
「え?」
「冬だと本当に飛び込みそうだから」
「三樹子さん。。。」
「夏だったら陽介くんもボートに乗ってくれるんじゃない? きっと気持ちいいわよ」
「そうですね。。。考えてみます。そろそろ陽介の顔も近くで見せたいですし」

あれから3年が経った。
彼女は相変わらず頑張っている。
陽介くんもかわいい盛りだ。

『直江先生』
三樹子は思った。
さっき、会えそうな気がするといった彼女の言葉に、あやうく泣きそうになった。
そう。深く蒼い湖の底で彼が眠っている、そんな情景を思い浮かべたからだ。
彼女が直江を忘れていないように、私もまだ忘れていない。
『私だって、できることなら直江先生に会いたい』 支笏湖で会えるものなら。

三樹子はまだ支笏湖に行ったことがなかった。
いつか行きたいと思いながら、まだ行けていない。
彼女が支笏湖でボートに乗ったら。。。
そうしたら、行ってみようか。
あの人がいる、湖の、その色を確かめたかった。
行かなくてはこの気持ちに区切りをつけられない。
こんな私を、あの人は笑うだろうけど。

夏に考えて冬にアップするなんてどうかと思いますが。
そして書き進めて行くうちに、三樹子さんがメインになったのもどうかと思いますが。