紅茶

直江が去った後、倫子はしばらくその場に立ち尽くしていた。
ハッと我にかえった倫子は、バッグを持ってあわてて化粧室に駆け込んだ。
『こんな顔してちゃまずい』
もうすぐ歓迎会のメンバーが集まってくる。泣いてたりしたら、何を言われるかわからない。

化粧を直すと、まだ目は赤いもののなんとかごまかせそうだった。
化粧室を出ると、店内が妙に静か。
クラシックだろうかBGMが流れている。
交わされる会話もそんなに大きくなく、静かな空間だった。
。。。やばっ。私ったら、さっき興奮して大きな声出してたんじゃないかな。
どう思われただろう。私は泣いちゃってたし。。。
気のせいかもしれないが、ほかの客からの視線を感じるような気がした。
居づらいなぁと思いながら、出るわけにもいかず、倫子はまた腰掛けた。

「紅茶、入れ直しましょうか?」
ウェイトレスの女の子が微笑みながら聞いてきた。
「え、でも。。。」
「遠慮なくどうぞ」
カウンターの中からマスターの声がした。
「それじゃお願いします」

しばらくして紅茶が運ばれてきた。紅茶のいい香りが倫子を包む。
ケーキはもう食べる気がしなかった。あまり。。。食欲がない。
ケーキセットなんて勢いで頼んだだけだった。
直江先生がいるとは思わなかったし、話したこともあんまりなかったし。
第一とっつきにくい、あの先生。
それに、あんなこと言われるなんて。
倫子にしてみれば落ち込みそうなことを何度も言われたような気がする。

。。。紅茶もらってよかったな。だいぶ落ち着いてきたみたい。

店をでるとき、倫子はマスターに礼を言った。
「ありがとうございました」
「落ち着きましたか」
「はい」
「紅茶は精神安定剤なんですよ」
そういってマスターは微笑んだ。

あの場面見たときに「声が大きいよ」と突っ込みました。ラルジェネメインのストーリー。確かマスターいたよね。