倫子は屋上にいた。
ここは日当たりがよくて暖かい。
誰もいないのを確認して、ベンチに横になった。
ちょっと休憩、と思ってここにきたが、気持ちよくて長居してしまいそうだ。
もしかしたら先生がいるかな、とも思ったが、直江はいなかった。
ま、いいや。ちょっと一休み。。。

青い空が広がっていた。
『雲もない快晴だー。気持ちいいー』

空を見ながら、直江のことを考えた。
このところ、一緒にいたいときはいつでも先生といられる。
拒まれたことが嘘のように、先生はとてもやさしかった。
だけど、幸せだけど、ちょっと不安。。。

『あったかいなー』
目を閉じたら、寝てしまいそうだ。
目を閉じたら、だめだぞ。。。

何か感覚を感じて目を開けると、そこに直江の顔があった。
直江の手が伸びて、倫子の頬をつついていた。
「え? 先生? 何してるんですか」
「何って。君こそどうした」
「どうしたって。。。え、ちょっと休憩を」
「。。。寝てたね」
「寝てないですよ! そりゃちょっと目を閉じてたかもしれませんけど」
「寝てた」
「寝てないですってば」
「ほっぺた、かなりつついていたが気づかなかった」
「え? かなり?」
「そう」
「えっと。。。」
「寝てた」
「すみません。。。空を見てたら、つい気持ちよくて」
「まあいい」

帰る直江の後ろをあわてて倫子がついていくと、直江が何か言った。
「帰りに」
「はい?」
言いかけた直江の背中に問いかけた。

「帰りに川原にでも寄るか」
「はい?」
「また、君とあそこで空を見たくなった」
「ああ、はい! 前にもありましたね!」
「寒いかもしれないが、いいか?」
「はい! もちろん!」
「ありがとう」
「じゃあ、あとで」
「ん」

「ああ、さっき、ほかに何をされたか覚えていない?」
「ほっぺたをつつかれてました」
「そのほかは?」
「え、ほかにも何かしたんですか」
「覚えてないならいい」
「何かしたんですか」
「してない」
「何です?」
「ほら、人がくるぞ」

そう言って歩き出した直江は楽しそうに笑っていた。
先生は何をしたんだろう。。。?

さてさて。先生は何をしたと思いますか。
あの日。あの二人はもっと会話をしたのか,それともしなかったのか,気になります。
照れて話ができなかった直江先生とうれしくて少し饒舌になっている直江先生。
いずれにしても,倫子はずーっとしゃべりどおしだったような気がしますが。