横顔

『悲しいな。。。』

直江の横顔を見ながら、倫子はそう思った。
さっきから、ずっといいようのない悲しみを直江から感じている。
何を言うでも、何もするでもない、ただ石倉の顔をじっと見つめている直江から、悲しみがあふれているような気がした。
それは、さっき直江の後ろ姿を見ていたときから感じていたことだ。

『だから、立たずにいられなかった。。。』

「よし。もういいだろう。お疲れさま。終わろう」
手術室の外では、ミツが心配そうに待っていた。
「先生、大丈夫でしょうか」
「はい」
「成功したんですね」
「できるかぎりのことはしました」
「ありがとうございました」
「いえ」
ミツの姿が見えなくなると、直江は大きく一つ息をした。

手術は30分、そのあと何もせずに2時間立っていただけだった。
なのに、ひどく疲れている。
。。。春までは持たないだろう。。。石倉を思い、次に自分のことが思い出された。
これくらいのことで疲れている自分だって、この先どうなるか。。。

彼女がいきなり横に来たときは驚いた。
『嘘をつくのが不安』と言っていたはずなのに、『嘘をつくために立ってる』と言った彼女。
一体、何がそうさせたんだろう?

何も言わなくても語る直江先生の横顔。