背中

直江は倫子を抱きかかえ、土手の上で倫子をそっと降ろした。
「おい」
「う。。。ん。。。」
「どこか痛いところは?」
「ああ。なんともありません。すみません、私。。。」
「いや。気分は?」
「はい、大丈夫です」
「少し休んだほうがいいな」
「ほんとうに大丈夫です」
「ちょっと待て。鞄を取ってこよう」
「私が」
「そこにいろ」

直江は川原に置いてあったスクーターのところまで戻り、倫子の鞄を取って戻ってきた。
「マンションが近くだから、横になるといい。歩けるか?」
「え、はい。。。」

そう返事をしたものの、倫子はまだふらついていた。
その様子を見て、直江は倫子の前で背中を向けてしゃがみこむ。
「背中に」
「え?」
「早く」
「でも、そんな悪いです」
「いいから」
「すいません」

倫子を背負い、直江は自分のマンションに連れて行った。
病院は大変なことになってるだろうが、しばらく休ませたほうがいい。

。。。腰に鈍い痛みがあった。
背負うのはちょっと無理があったかな。まあしようがない。
思ったほど軽くはなかったんだ、などと言い訳している自分がいた。
彼女一人背負えなくなっているなんて。
。。

倫子をどうやってマンションに連れてったかってのは議論になるところだけど、私はおんぶ。お姫さま抱っこのままはキツイと思う。