再会

直江と七瀬は固く握手をした。

「やあ」
「先生、どうされたんですか」
「いや、ちょっと東京に出張する用事ができてね。お前にも会いたかったし」
「びっくりしました。連絡くださればよかったのに」
「急に決まったんだよ。それに、連絡して気を使わせるのもな」
「そんなことは」
「変わりないか」
「はい。先生も?」
「相変わらずだ」

二人の親しげな様子を、倫子はその場に立ち尽くして見ていた。
こんなににこやかに笑う直江を、倫子は初めて見た。

「今日はもう終わりだって?」
「はい。先生、東京にはいつまで?」
「明日の夜帰るんだよ」
「お泊りは?」
「ホテルを予約してある」
「今日は? 時間ありますか」
「ん? ああ大丈夫だ」
「じゃあ、ちょっとマンションにいらっしゃいませんか? お見せしたいものもありますし」
「そうだな、寄るか」

話しながら、直江と七瀬は正門の方に歩いていく。
倫子は二人の後姿をじっと見つめた。
その視線に気づき、直江は倫子のほうを振り返った。
まだ、いるんだな。。。

『私は大丈夫です』
急にさっきの倫子の声が蘇ってきた。
倫子に何か言うべきだったかなと、直江は少し後悔していた。
言おうとしても、きっと言葉が見つからなかっただろうが。。。

倫子はこのときの直江先生の様子を忘れないと思う。あんなににこやかで嬉しそうな彼を見たのは初めてだろうから。