お守り

「これ、なんだ?」

七瀬はあるものを見つけた。
テーブルの上にガラスのかけらのようなものが置いてある。

「え? それは。。。」
「ガラスか?」
「ええ、あのう、まあそうです」
「ガラスだよな」
「きれいな色でしょう」
「変な形だな」
「そうですね」
「帽子みたいに見えるが」
「帽子ですか。ああ、そうですね」
「何に使うんだ? 使い道がわからん」
「使うって。。。えーと、その、お守りです」
「お守り? お前のか」
「ええ」
「何のお守りだ」
「なんだっていいじゃないですか」
「なんだ。聞かれちゃまずいことでもあるのか」
「別にないですよ。拾っただけですから」
「拾った? お前が? 拾ってお守りにするのか」
「いけませんか」
「いけないってことはないが」
「いいじゃないですか」
「変なやつだな」
「別にそんなことはないですよ。きれいだなと思って」
「色がきれいだから拾ったっていうのか」
「だから、ボートに似てると思ったんですよ!」
「ボート? どこが」
「えっ? そう見えるじゃないですか」
「そうか? うーん、そうは見えんがな」
「いいですから、こっちにください」
「お守りだって? ボート? わからん」
七瀬はガラスのボートを直江に渡しながら、つぶやいた。

「で、先生、さっきの話なんですが。。。」
ようやく直江は話題を変えることができた。

片付け忘れてたんだな。失敗した。
ボートに見えない? そうかなぁ、これはボートだよな、うん。。。
ん? お守りだって? 何言ってるんだ、オレは。
七瀬と話をしながら、直江は心の中でつぶやいていた。

あの二人、こんなたわいもない話をしてたらおもしろいと思ったんで、ね。