「志村くん」
「はい?」
「戸田くんに病室代わってもらわなくちゃならないんだけど、一緒に来てくれるかな」
「はい、わかりました」
小橋について倫子も病室に行き、寝ている次郎を起こして病室を移動してもらった。
起こされた次郎は不機嫌だったが、こればかりはしようがない。
代わりに入るのが直江の患者と聞いて、次郎はいっそう不機嫌になった。
ナースセンターに戻ると、高木が話しかけてくる。
「ちょっと小橋先生と直江先生、険悪なムードじゃなかった?」
「そうですか?」
「そうよ〜。こんな時間に病室を代われだなんて普通じゃ考えられないわよ」
「そうですね。。。でも、宇佐美さんじゃしかたないんじゃないかな」
「そうそう。びっくりしたわよね。宇佐美繭子なんだもの」
「私、病院で芸能人見たの初めてです」
「私も似たようなもんよ。ところで、大学教授の紹介だって言ってたわよね?」
「ええ、確か。そういえば一度電話が」
「信頼できる腕のいい医者って言われて教授から連絡があるなんて、やっぱり直江先生ってすごいのね」
「そうなんでしょうかねぇ」
「あのマネージャー、小橋先生じゃだめだって言ってたじゃない」
「そうですね」
「さっきの処置だって見たでしょ? ま、私は直江先生なんか目じゃないけど」
「え?」
「ああ、なんでもない。直江先生は腕がいいってことよ」
「はぁ」
確かに、さっきの処置は見事だった。
いきなり現れた直江にはびっくりしたが、その後の処置といったら。。。
大学教授が推薦するのも無理はないと思う。
なんか、不思議な人だ。
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