待ちぶせ

あれから直江とは口を聞いていなかった。
病院ではもちろん、電話をしても、マンションに行っても無視され続けている。
まさか、本当に終わりにするとは思えなかった。

。。。このところ、私はあの人を追いかけ回しているような気がする。
もともと向こうから誘ってくることなどあまりなかったが、こんなふうに出勤するところを待ちぶせしようとする自分が、本当は嫌だった。
電話に出てくれなくても、どうせタクシーなんだし、私が車で送るといえば乗ってくるだろう。
そう理由をつけてマンションの前から電話をかけた。

呼び出し音を聞きながら待っていると、少し離れた土手を歩く直江の姿が目に入った。
まさか、もう出勤するなんて信じられない。。。
そう思いながら見ていると、直江が立ち止まり後ろを振り返った。
。。。志村倫子だ。
直江は彼女を待って、それから二人は並んで歩き始めた。
どうして彼女がここに。こんな朝早く。

あの子ったら、私の話を無視したのね。まったく。いい気になって。。。
許せない。でも。。。
腹が立つのと同時に、怖くなってきた。
そんなにあの子が大事なのか。
本当に私とのことを終わりにしようしているのかもしれない。
どうしよう。
三樹子は初めて男性に対して弱気になっている自分に気づいた。
『愛してたから抱いてたわけじゃない』
あの言葉も本気だったら。

どこか冷めたところがあるのはわかっている。
いろんな女性の影があるのも知っている。
あの子もそのうちの一人なのよね?
そう結論づけて、三樹子は病院に向かった。

どこまでも強気な三樹子でも、あの朝はかなりのショックだったのではないかと。三樹子は一晩一緒にいたことなんかなかったんですよ。