誕生日

−直江はスーパーの買い物袋と倫子の母にもらったビール、
  倫子はバースデーケーキと赤ワインを持っている−

タクシーを止める直江。
「タクシーで?」
「ちょっと荷物が多い」
「すいません、私買いすぎちゃって」
「いや、ビールとケーキは予定外だった」

タクシーに乗り込む。沈黙。。。
「先生、ケーキお好きですか?」
「甘すぎるのはだめだ」
「多分、ショートケーキだと思うんですよね。私一番好きだから」
「そうか」
「そんなに甘くはないと思います」
「それならいい」
「ちょっとでもいいから、食べてくださいね」
「ろうそくは?」
「?? さあ、つけてもらってないんじゃないですか。本数も多いし」
「何本だ」
「24本です」
「24本ならいいだろう」
「恥ずかしいですよ。それに吹き消すの大変だし」
「そうかな」
「先生はろうそく吹き消したいんですか」
「誕生日にはつきものだ」

「。。。変なところ子供っぽいんですね」倫子がつぶやく。
直江がじろっと倫子を見る。
「あ、いえ。。。先生がそんなことおっしゃると思わなかったので。。。」
「おかしいか?」
「ええ。あ、いえ。。。じゃあ、先生はハッピーバースデーの歌うたってくださいね」
「え?」
「誕生日にはつきものだから」
「。。。」
直江、しゃべらなくなる。外を眺める横顔。

『先生ったら歌うつもりないんだわ』 倫子がクスッと笑う。
直江が倫子を見る。。。ちょっとムスっとして、心なしか顔が赤くなって、また外を見る。

−そして二人は直江のマンションへ−

たわいもない会話してもらいたかったので。ただそれだけです。