買い物

「先生、好き嫌いありますか」
「いや」
「じゃあ、なんでも食べてくれます?」
「ん」うなずく直江。
「なにもないとか言ってましたけど、お米くらいはありますよね?」
「米。。。ないな。それに炊飯器もない」
「え、じゃあ、ごはん炊けないじゃないですか」
「そうなる」
「そうなるって。。。じゃああれは作れないかなぁ。。。あ、でも大丈夫か」
「どうした」
「え、いえ、メニュー決まりましたから」
「何?」
「なんでも食べるって約束しましたよ」
「それはそうだが」

スーパーマーケットに着く。買い物かごを手にとる倫子。
直江も入ろうとするが、『二人で買い物』という状態はいかにも自分に合わないような気がして、
しばし立ち止まって考えている。
「先生?」
「本屋に行ってていいかな」
「え、はい。じゃあ外で待っててください」
「じゃあ、あとで」
「あ、先生、塩とか胡椒とか調味料は?」
「ない」
「やっぱり。じゃあ買いますね」

倫子の買い物はすばやい。すでにメニューは決まっている。決めたら迷わない。
お米は買うことに決めた。炊飯器がなくても作れるものは。。。ある。

−倫子が作った料理は先刻ご承知のとおり−

炊飯器なかったよね? だったらフライパンはあったのかっていうのも疑問だが。確かお鍋はあったような気がする。