たんぽぽ

あんなところで会うとは思わなかった。。。。頭からあの笑顔が離れない。
石倉さんの言葉を聞いたとき、たんぽぽに似ているな、とは思った。
不思議な気持ちがしたんだ。
こんな時間に、どのくらい探していたんだろう。

川原を吹く風は冷たい。直江はマンションに向かって歩いていた。
ふと前方にたんぽぽが咲いているのが目にとまった。

『ん? なんだ、あそこにあるじゃないか』
さっき彼女が探していた場所よりもよほど見つけやすいところに、たんぽぽは咲いていた。
直江は今来た道を戻りかけたが、思い直して引き返すのはやめた。
どうして、
広い視野で見ようとしないんだろう。女ってのはだいたいそうだ。
一途といえば聞こえはいいけれど、それも厄介なことだった。

この間、泣きながら倫子に言われたことが、まだ直江の心に残っている。
別に気にはしていない。
しかし、忘れかけた何かが思い出され、刺激を受けたのは事実だった。
あのとき腹が立ったのは、やはり図星だったからだろう。痛いところをつかれたな。
一途か。。。ある意味それも長所なんだろうな。

また彼女の笑顔が思い出された。
早く忘れてしまおう。こんなことは許されるわけが、ない。

直江先生はいつからあそこにいたんだろう。そもそも、あれは朝だったのか真昼間だったのかよくわからない。