ガラスのボート

直江は手にとったビールをテーブルに置いた。
一つため息をつく。1週間は長い、と思う。
タバコに手を伸ばす。。。時間があるのも困りものだ。
直江は時間を持て余していた。時間がたつのが遅すぎる。

見るのを避けている。
テーブルの上には彼女が置いていったガラスのボート。
あのとき、時間が止まって彼女とガラスのボートが同化したように思った。
テーブルに置かれたとき、まるで彼女がそこに降り立ったような感じがした。

あのときから、テーブルには近づかず、見ないようにしている。
見なければ忘れられるはずだ。。。
しかし、置かれたときから意識していることに変わりはない。
それがそこにあることを。

いっそのこと壊してしまえばいい。
1日たってようやく直江はガラスのボートを手にとった。
落とせば割れる。。。割れたら捨てればいい。。。

ガラスのボートは夕日にあたってキラキラ煌いていた。
その清らかな煌きが、直江の心をつかんだのだろう。
だから、近づきたくなかった。
この煌きは彼女に似ているから。
しばらく見つめたあと、直江はため息をつきながらテーブルに戻した。

『あきらめが悪いな、オレも。。。』

直江先生がガラスのボートをどう思っていたか、それを考えたかったのです。