NN病的「白い影SP」と「彼の涙」

この二つの情報は同時に突然もたらされた。
ネット上で噂になっていて、メル友さんたちとほんとかね?と密かに話していた「白い影SP」と、
まったく予期していなかったオーラスでの「彼の涙」。
思いもかけない、でもとても大きな話題が一度に二つももたらされた。混乱した。
メールは飛び交うし、BBSにも書き込みがあって、
みんないろいろな感情にどどーっと押し流されているような感じがした。
最初に思ったのは、私はどうして家にいるんだろう? ということ。
なぜその場にいなかったんだと。自分のアホさ加減に腹が立った。

■夢のような話
SPの話は正式な話ではなかったし、ネット上でもあまり話題になっていなかった。
本当だといいなと思いながら、まさかいまさらそれはない、と否定し続けていた。
あんまり期待しすぎると違っていたときの落ち込みようは相当なものになるはずで、私はそれが怖かった。
まったく直江庸介のことになると私は狂信的になる。

彼が告知したとき、会場ははじめ冗談かと思っていたらしい(そりゃそうだろう)。
模倣犯以来、彼のドラマをみんな待ち焦がれていた。
けれど、それが白い影になると予想していた人がどれだけいただろうか?
中居ファンはおろかNN病の人ですらそんなことは想像だにしなかっただろう。
白い影に関しては筋金入りのヘビーウォッチャーである"私"でさえ、
そんなものは製作するわけがないと思っていた。というか考えもしなかった。
確かに公式BBSに長野編を作ってという話が盛り上がったことがある。
かくいう私もそう書き込んだうちの一人で、そのときは漠然と『雪かきをする直江先生を見てみたい』
という単純な気持ちからだった。
しかし、書き込んだ人も、ロムしていた人も、まさか実現するなんてことを考えたはずがない。
あったらいいな。そういう直江庸介が見てみたいな。そういう願望。
原作がある以上、それは難しいことだということも皆わかっていたはずだ。
それよりもっと実現性のある写真集ですら発売する気配もなかったのだから。
都合のいい話があるわけがない。いくら私たちが直江庸介をこよなく愛してたとしても。
プロデューサーのいう『10年後のリメイク』には望みをかけていたが、
それまではせめて主演二人の別ドラマでの共演くらいしか望みがないものだと思っていた。

それが、である。
一体、いつごろ誰がやろうと言い出したのか。
なにがきっかけだったのか。NN病か? PSIKOか? 再放送の盛り上がりか?
やることに対して彼はなんと言ったのか。
どういう話で、どういう出演者で何をテーマにしようというのか。
登場人物は? 倫子は? 彼女は別の役で登場するのか?

■私の心の中
私は、いつまでも彼を直江庸介に縛り付けておくわけにはいかないような気がしていた。
NN病の存在がクローズアップされていくにしたがって、
いつまでも直江庸介のことばかりを追いかける私のような存在は、
彼や中居ファンにとってうっとうしいというか、そういう存在になっているのではないかという気持ちがあった。
申し訳ないなぁという、ある種後ろめたい気持ち。
私は中居ファンになったけれど、やっぱり直江先生は特別な存在で。
だから、両方のファンとして複雑な気持ちになった。
結局、どちらの気持ちが強いかといえば、直江先生を見たいという気持ちよりは、
彼がどういう気持ちでやろうと思ったのかがものすごく気になった。
もう直江庸介のことはあまり言われたくないのじゃないかしら。
SPだって本当はやりたくないんじゃないかしら。
もし『いやいややる』のだったら悲しい。
それだったら、もう直江庸介を封印してかまわない。
だから、本当に心配になった。手放しで喜べないような気がした。
彼には直江庸介をひきずらず、白い影を一つのステップとしてこれからの演技に磨きをかけていってほしい。
彼は彼だし、直江庸介は直江庸介だと、そう思うようにしていた。
どんどん前に進んでいってくれればいい。そういう彼を見ていればいいのだ。

それに。。。その次に浮かんだのは、『ここで直江庸介を演じたら、もう二度とやらないんだろうな』
という漠然とした不安。
あるわけがないSPが終わってしまえば、もう本当に直江庸介は見られない。過去になる。
これで終わり。話題にものぼらなくなるのでは。そう思うと悲しくなった。
もちろん、白い影で中居直江の物語は完結しており、『何をいまさら』という気持ちもある。
そこには商業主義が透けて見える気がした。そんな安易にSPドラマを作っていい、お気楽なドラマではない。
いまさらSPを作るからには何かメリットを見出したからだろうか。
そんなことを考えてしまって、素直に受け入れられない気がした。
嬉しい気持ちと不安な気持ちと、それから若干の疑わしい気持ち。

■そんなんじゃだめ
私と同じような複雑な感情を抱いた方もたくさんいると思う。
でも。。。あくまで前向きに素直に『また見られて嬉しい』という意見がある。
そう、私の心配しすぎなのかもしれなかった。
あえて直江庸介をまた演じようという彼の意気込み。
この2年で白い影の評価はかなり上がっているはずで、より一層のプレッシャーがかかるだろう。
中居ファンならずとも一般的に『ああ、あれね』と認知されている部分はすごくあると思う。
今回は、もちろん彼本人とも比べられるし、白い影本編の直江庸介とも比べられる。
よりハードな状況になる。
本編に匹敵するような直江庸介、2年経ってより成長したであろう彼の演技を期待される。
それをあえて決断した彼の気持ちは。
オーラスで発表したときの会場の盛り上がりに驚いたようだったというが、
先日のサムガでの発言(お久しぶり→竹内結子)のこともあるし、
自ら発表するからには、念願かなって待ちに待ったとはいえないまでも、
相当の意気込みでがんばろうと思っていることは想像できる。
直江庸介が彼の重荷になっていると思ってたのは間違いだったかな。
考えてみれば、連続ドラマを1クールやる時間さえ今の彼にはないだろう。
せいぜい2時間程度の単発のSPドラマが精一杯。
ならばそのドラマに白い影を決めたことに対して、感謝しなくてはいけないのかもしれない。
何より彼がそう決めたのなら、素直に楽しみに待っていればいいのかもしれない。
彼が演じる病気を知る前の、若々しく明るくて優しい直江庸介を。

それに! 結局のところ、公式BBSでの要望が実現したってことは、すごいことなんだ。
6話は強烈だった。七瀬先生との関係を、本当にすぐに想像できた。
あのおそばやさんの話だけで、過去の二人の情景がパーッと浮かんできた。
だから、作るべくして作ることになっただけかもしれない。
"あの"原作者の渡辺淳一先生の許可も得られた上での決定だろうから、それもまたうれしいことだった。
なにせ、当初渡辺先生は中居直江に難色を示されていたから。
今は認めてくださっているのだろうから。

あのころ28歳だった彼は、今年直江庸介と同じ歳になった。
その彼がさらに若い直江庸介を演じる。
彼はNN病の人たちについて『TVに出ている僕をどういう気持ちで見ているんだろう』
と言っていたが、それでは、彼は直江庸介をどう思っているんだろう。
今回はどういう気持ちで演じるんだろう。気になって仕方がない。

■彼の涙
今年のツアーでは初日の名古屋から、毎回『去年の出来事』はMCのネタになっていた。
そのトークを聞きながら、ほかのグループなら、
ここまであからさまにあっけらかんとネタにすることなんてないのだろうな、と思っていた。
ああ、すごい。SMAPは自分たちの歴史を吸収してどんどん大きくなっていく。
それがよいことだろうと悪いことだろうと、そこから逃げずにそれを組み込んで進んでいく。
隠したりしない。終わったことにしない。だからSMAPなんだと。
『SMAPという共同体』というタイトルでPSIKOで書かれていた内容が思い出された。

事件以来、1/14まで143日間がんばってきて、5人になった。
一度リセットして、クリアされて、1/14から始まるんだと、始まったものだと思っていた。
でも、あそこでふっきれたわけじゃなかったんだね。
あなたの中では終わっていなかったんだ。1年以上。

去年のファイナル、ほかの3人が涙で詰まる中、彼は一人涙を見せずに明るく振舞っていたという。
『ライブの終わりはハッピーで』 そうでなきゃ意味がない。
そんな自分の行動を『客席はドン引きだったけどね』と話す彼を、すごいなぁと思ったものだ。
『すごい』としか表現できない自分が情けないけれど。
今年、ファイナルでだれよりも一番先に彼がベストフレンドを歌いながら泣いた。
客席はもちろん、もしかしたらそれ以上に驚いたのがメンバーだったのではないだろうか。
だから、去年は一番泣いていた慎吾が、今年は一番涙をこらえていたんじゃないかな。
それだけ彼の涙は重い。そう思ってるから。
その涙の理由。その涙にいたるまでのがんばり。つらい思いも、突っ張った気持ちも。
一体どんな心の中をしていたんだろう。この1年。何を心の中に溜め込んでいたんだろう。
もう乗り越えたように見えていたのに、本当は今まで重くのしかかっていたんだ。
それを彼の涙が思い出させた。それを思い知らされた。
『ああ、そうだった』 そんなにもあなたを苦しめていたことだったんだ。
彼の涙の理由を思い、そしてその理由を今まで微塵も感じさせずに隠していたことに驚き、
いっそう痛々しく思えた。そんなにがんばらないで。

きっとその涙で流れ出たんだよね? やっと感情を出せたんだよね?
思いがけなく流れた涙は本物。泣きたいときに泣けるって本当は幸せなことだ。
スマスマで「僕だっていろいろあったんだよ。つらいこととか」と言って、
「何があった?」という声に思わず涙した剛くんが思い出された。
あのときもほかのメンバーの目は潤んでた。
思い出を共有しているメンバー。今回の彼の涙の理由も、メンバーは知っている。
そして、それがどんなに彼の重荷になっていたかもわかっている。
嬉しい涙。ほっとした涙。安心した涙。

ツアーファイナルは芸能ニュースではとりあげられなかった。だから、彼の涙はファンしか知らない。
それがうれしくもあり、もったいなくもあり。
彼自身は泣いたなんて世間に知られたくないって思ってるだろうけど、世間に知ってもらいたいことだなぁと思う。
彼の繊細さ、賢明さを世間は知らなさすぎる。
中居正広、明るさと元気が取り柄だけの男じゃない。

やばいな、と思う。これに気づいてしまうと抜けられないな、と。

終わり