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【談話】政府与党による教育3法案の強行採決に抗議する
2007年5月18日 子どもと教科書全国ネット21事務局長・俵 義文
政府・与党は、5月17日、衆議院教育再生に関する特別委員会で教育関連3法案(「学校教育法等の一部を改正する法律案」「教育職員免許法及び教育公務員特例法一部を改正する法律案」「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」)を一括して強行採決した。私たちはこの政府・与党の暴挙―数の暴力に怒りをこめて抗議するものである。
教育3法案は、日本国憲法と国連・子どもの権利条約に違反する改悪教育基本法を具体化し、教育再生会議報告を実行にうつそうとするものである。安倍首相とその政権がめざす新自由主義と新保守主義による「教育改革」という名の「教育破壊」を推し進めるための全面的な改悪法案である。学校教育法の「改正」法案は「一部を改正」するなどというものではなく、根本的に教育のあり方を変えてしまう全面改悪であり、また、他の2法案も政府・文科省による教育の国家統制をすすめるシステムづくりの意図を露骨に表した内容になっている。
この3法案について、私たちが指摘してきた次のような問題点は、特別委員会の審議においてはまだほとんど解明されていないし、国民にも明らかにされていない。これらの問題点が徹底審議を通じて明らかになるならば、3法案は廃案とするしかないことが明白となるはずである。安倍首相は戦後の日本国憲法体制から脱却して「戦争する国」づくりをめざし、憲法9条改悪のための改憲手続き法と共に教育3法案を最重点課題としてきた。その教育3法案を何が何でも会期末までに成立させるために、政府・与党は、3法案の問題点を国民の目から覆い隠し、数を頼みに強行採決の暴挙にでたのである。
私たちは、参議院において徹底審議を要求し、教育の国家統制3法案の廃案をめざして、教員・保護者・市民などと力を合わせて徹底的にたたかうことを表明するものである。
1.学校教育法改悪法案の主な問題点
改悪基本法は、子どものための教育から国家のための教育に180度大転換する法律であるが、学校教育法「改正」法案は、その国家のための教育を全面的に具体化する内容である。
「義務教育」の目標に改悪基本法第2条に盛り込んだ国定の道徳目である「規範意識」「公共の精神」「生命及び自然の尊重」「伝統と文化の尊重」「我が国と郷土を愛する態度」「国際社会の平和と繁栄に寄与する態度」「家族と家庭の役割」などを規定している。これらを規定した「義務教育」の章が各学校種の章の前におかれたことによって、国定道徳目は各教科の目標よりも上位に位置づけられることになる。これによって「教育の目標」は、現行法の学問の成果を教え学ぶことから国定道徳を教え学ぶことに転換することになってしまう。
幼稚園も「義務教育及びその後の教育の基礎」と位置づけられ、「規範意識の芽生えを養う」ことが目標とされている。
これらは、「内心の自由」に国家が踏み込むもので、憲法が禁じているものであり、改悪教育基本法と同様に憲法違反の法案である。
現行法では文部科学大臣が決めることができるのは「教科に関する事項」となっているが、改悪法案はそれを「教育課程に関する事項」に変えている。現行法の「教科」は「教科名」のことであり、教育内容は含まれないが、これを「教育課程」とすることによって、教科以外の活動や道徳教育も含めて文部科学大臣が教育内容の決定権限を持つことを明文化することになる。これにより、文部科学大臣の教育内容の決定権限が無限に拡大され、国家の教育統制はますます容易になる。
改悪基本法は、47年基本法の「能力に応ずる教育」を「能力に応じた教育」に変え、教育の機会均等から「能力別」教育(差別・選別教育)への転換をうたっている。これが改悪法案の高校教育に具体化されている。高校教育の目的は現行法と同様に「高度な普通教育及び専門教育を施すこと」としているが、この文言の前に新たに「進路に応じて」という言葉を入れ、さらに「専門的な知識、技術及び技能を習得させる」ということも明記している。これは、「進路に応じて」「高度な普通教育」と「専門教育」に高校の教育を複線化することを明文化するものである。つまり、高校教育は今後、大学進学のための教育と高卒後の就職のための教育に2分化させることとなる。新自由主義にもとづく差別と格差教育の具体化である。
改悪法案は学校の組織と運営を変更するために、新たに副校長、主幹教諭、指導教諭の職を新設している。これによって学校運営は、校長→副校長→主幹というラインによって監督・指揮が行われ、一般の教員は学校運営からは排除されて、管理ラインと指導教諭の下で文科省・教育委員会に従順にしたがって教育を行うだけの存在(教育マシーン)にさせられてしまう。こうして文科省→教育委員会→校長→副校長→主幹というトップダウンの教育統制が行われることになる。
改悪法案は新たに「文部科学大臣の定めるところにより」「教育活動その他の学校運営の状況について評価を行ない、その結果に基づき学校運営の改善を図るために必要な措置を講ずることにより、その教育水準の向上に努めなければならない」と規定し、さらに「教育活動その他の学校運営の状況に関する情報を積極的に提供するものとする」と定めている。学校運営の状況の報告と評価を通じて、文科省の学校に対する管理統制をさらに強めるしくみがつくられることになる。これによって、文部科学大臣が全国いっせい学力テストを学校の評価方法と定めれば、全国学力テストへの参加が学校に義務づけられ、さらに、テストの結果情報の提供も義務づけられることになる。
2.教職員免許法など改悪法案の主な問題点
教員免許に10年の有効期限を設け、10年目に講習を受けさせ、講習が終了したと認定されれば免許を更新できるようにする、としている。講習で認定されなければ教員免許は失効して職を奪われることになる。さらに、「指導改善研修を命ぜられている者は、免許更新講習を受けることができない」と定めている。「指導改善研修」というのは、教育公務員特例法の改悪法案に盛り込む「指導が不適切」と認定された教員に「指導改善研修を実施」するというものである。「指導改善研修」は「1年を超えてはならない」とし、研修終了後に認定を行い改善がみられない、「指導を適切に行うことができないと」と認定されれば免職になると定めている。つまり、「指導力不足」「不適格」教員と認定されれば、免許更新のための講習も受けられないし、失業に追い込まれかねないということである。これは、「ダメ教師はやめていただく」(『美しい国へ』)という安倍首相の主張を具体化するものであり、この制度によって、文科省や教育委員会に従順に従う教職員をつくる、逆に、「日の丸・君が代」強制に反対したり、「教え子を再び戦場に送らない」などと、「戦争をする国」づくりのための教育、競争至上主義の教育に反対したり抵抗する教職員は「ダメ教師」の烙印を捺して学校現場から排除するねらいである。
3.地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改悪法案の主な問題点
文部科学大臣が教育委員会に対して「是正の要求」や「是正の指示」ができるようにする規定をあらたに明記している。「法令違反や怠りによって」「生徒等の教育を受ける権利が明白に侵害されている場合」(「是正の要求」)「緊急に生徒等の生命・身体を保護する必要が生じ、他の措置によってその是正を図ることが困難な場合」(「是正の指示」)という制限をつけているが、しかし、法律ができれば、この文科相の教育委員会への命令・指示は大きな効力を発揮し、しかも、「是正の要求」は「教育委員会が講ずべき措置の内容を示して」となっていて、踏み込んだ介入を可能にしている。事実、衆議院特別委員会で伊吹文科相は、「日の丸・君が代」の強制も是正指導に含まれると答弁している。国の地方教育委員会への支配・統制が容易になることは明らかである。なお、現在でも文科省からの「通知」はおろか「事務連絡」さえも「通達」と受け取る教育委員会がほとんどである現状から見て、「要求」も「指示」も同じ効果をもつもと思われる。
「市町村は近隣の市町村と協力して教育委員会の協同設置等の連携を進め」として、小規模な自治体の教育委員会の統合をめざしている。これが行なわれれば、教育委員会は地域から切り離され、教育の地方分権は形骸化し中央からの管理統制がいっそうやりやすくなる。しかも、「平成の大合併」によって、合併を拒否した小規模な市町村は大規模自治体の間に点在している。その中で統合をめざすということは、結局、近隣の大きな自治体の教育委員会に吸収されることになってしまい、ますます地域と切断されてしまうことになるであろう。
教育委員会は独立行政委員会であり、合議制を原則としている。ところが改悪法案は、一定の問題について教育長に権限を委譲することを定めている。合議制の原則が崩れて教育長への権限の集中化が進むと思われる。
また、私立学校の教育について、都道府県知事が、当該の都道府県教育委員会に対して、「助言又は援助を求めることができる」という規定を新たに設けた。これは、私学に対して、知事や教育委員会が介入できるようにするものである。改悪基本法は「私立学校」の規定を新設し、第2条の「国を愛する態度」などの「教育の目標」は私学にも適用されるとしている。もし、私立学校が建学の精神を理由に「日の丸・君が代」を実施しなかった場合は、この改悪法案によって「助言・援助」の名目で介入することが可能になる。
以上に見ただけでもこの教育3法案が日本の教育を大きく変えてしまう悪法だということは明らかである。これらの問題点は参議院の審議を通じて明らかにすべきであり、広く国民に知らせていくことが求められている。
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