「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書(扶桑社版)を採択しないことを求める要請書
東京都教育委員会御中
「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書(扶桑社版)
を採択しないことを求める要請書
2005年7月13日
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-6-1小宮山ビル201
電話 (03)3265-7606/fax(03)3239-8590
「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク
代表委員 山田 朗
要請の趣旨:「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を採択しないこと。
来年度から東京都立中高一貫校(文京地区中高一貫校、両国地区中高一貫校、都立大附属中高一貫校および白鴎高校附属中学校)と都立養護学校で使われる教科書採択にあたり、私たちは以下の理由で貴職が「新しい歴史教科書をつくる会」がつくり、扶桑社が発行する中学校社会科・歴史的分野および公民的分野の教科書(以下「つくる会」教科書)を採択しないよう求めます。
「つくる会」の運動は、教育と教科書に名を借りた政治運動以外の何者でもなく、自らの主張を通すために、なりふりかまわぬ行動を繰り返してきました。その内容の最大の特徴は戦争、とりわけ日本が近現代において起こしたアジア諸国に対する侵略戦争を賛美し正当化するところにあります。このような教科書が採択され、将来を担う子どもたちがその特異で誤った歴史観を身につけるとすれば、わが国の今後に多大な否定的影響を及ぼすことになり、看過することはできません。よって貴職が「つくる会」教科書を採択されないよう強く要請いたします。
「つくる会」の人々は、教科書は教育委員が自ら選べと主張していますが、教科書採択はILO・ユネスコの共同勧告「教員の地位に関する勧告」第61パラグラフにあるように、本来、教員の職業上の自由に属する固有の権利です。「つくる会」の主張は、自らの採択に有利にさせようとする動機から発した政治的主張にすぎません。
理由@:教育基本法にも学習指導要領にも反した教科書であること
社会科という教科の最重要目標は、学習指導要領によれば「国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う」ことにあります。「つくる会」教科書が、これに反するものであることは明白です。
「つくる会」は自身の教科書が「学習指導要領を最もよく踏まえた教科書」であると主張していますが、学習指導要領の歴史的分野の目標のごく一部である「我が国の歴史に対する愛情を深め,国民としての自覚を育てる」ことだけを援用しています。しかしこれは自らに都合のよい部分だけを文脈から切り離して強調したものにすぎず、誤りというべきです。この部分でさえ、その次の項目には「歴史に見られる国際関係や文化交流のあらましを理解させ,我が国と諸外国の歴史や文化が相互に深くかかわっていることを考えさせるとともに,他民族の文化,生活などに関心をもたせ,国際協調の精神を養う」と述べられており、「つくる会」の主張とは相容れないものとなっています。
次に、「つくる会」教科書は、歴史・公民とも全8社中、検定意見が最多となっています。教科書検定とは、当該教科書が学習指導要領に準拠しているか否かを国家が判定し、それからの逸脱を修正させる行政処分であって、憲法が禁じている検閲にほかなりません。これを肯定することはできませんが、このような教科書検定の性格に照らせば、「つくる会」教科書は「学習指導要領を最も踏まえていない教科書」ということになります。自らの主張にすら矛盾する教科書というべきです。
理由A:「つくる会」と扶桑社が、虚偽とルール違反で採択を取ろうとしていること
「つくる会」と扶桑社は、教科書宣伝のルールを破り、検定申請本(いわゆる白表紙本)を文部科学省の3度にわたる「指導」にもかかわらず、採択関係者に配布していたことが、国会答弁で明らかになっています(本年4月6日、衆議院文教科学委員会での銭谷文科省初頭中等局長)。また、「つくる会」元副会長の埼玉県教育委員への就任について、「教科書に関与していないので問題ない」と主張していましたが、これも虚偽で、同副会長は公民教科書第1章の監修者であったことも同じ国会答弁で明らかにされています。「つくる会」教科書を採択することは、このようなルール違反と虚偽を教育行政が追認することになります。
理由B:近隣諸国との友好ではなく、対立と緊張をもたらす
「つくる会」教科書は、近隣諸国の人々に対する蔑視に満ちており、21世紀に生きる中学生に誤った偏見を植え付けることになります。東京都にも多くのアジア出身の外国人が居住しており、その子女の多くは、地域の公立学校に通学しています。「つくる会」教科書が採択されれば、そうした子どもたちは多いに傷つけられるでしょう。
アジア諸国は日本の侵略戦争の被害国でもあり、共存していくためには和解が不可欠です。そのためには私たち日本国民が、それを可能とする歴史認識を持つ必要がありますが、「つくる会」教科書はそれとは相容れない教科書です。
「つくる会」は、その内容にあまりにも誤りが多いうえ、教科書としての一般的な教育的配慮にも著しく欠けており、したがって教科書としては不適切であると、多くの教育関係者が指摘しています。1,000名を超える歴史研究者・歴史教育者のアピール、教育関係者のアピール、歴史学関係20団体のアピール、さらに法曹関係者のアピールなど、多くの有識者が強い懸念を示しています。近隣諸国だけでなく、欧米にも「つくる会」教科書に対する懸念が広がっています。
教育的観点から考えれば、このような教科書をあえて採択するメリットは、ありえません。したがって、「つくる会」教科書は採択されませんよう、重ねて強く要請いたします。
東京都教育委員会「平成18〜21年度使用教科書調査研究資料(中学校)」の内容に関する抗議文
東京都教育委員会御中
東京都教育委員会「平成18〜21年度使用教科書調査研究資料(中学校)」の
内容に関する抗議文
2005年7月13日
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-6-1小宮山ビル201
電話 (03)3265-7606/fax(03)3239-8590
「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク
代表委員 山田 朗
去る6月22日、貴職は「平成18〜21年度使用教科書調査研究資料(中学校)」を発表した。その内容は、次のように、「つくる会」教科書採択へと誘導するような露骨で偏ったものである。同文書が自ら言うように、「区市町村教育委員会は、東京都教育委員会が教科用図書選定審議会の答申を受けて作成する『教科書調査研究資料』を参考にした上で、独自に調査研究し、教科書を採択している」とするものである以上、「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク(教科書東京ネット)として、この偏向した内容を看過するわけにはいかない。このような不当で偏向した「調査研究資料」に対して、教科書東京ネットは強く抗議する。さらに貴職が、この「資料」に沿って教科書採択を行うよう区市町村教委に要請し、いわんや強制したりすることのないよう、強く要求するものである。
@ 「つくる会」教科書が「最もよくできた教科書」と見せかけるための「調査研究」であること:社会科全科目(歴史・公民・地理・地図)で「北朝鮮による日本人拉致問題について」、歴史・公民・地理で「我が国の領域についての問題」、歴史で「神話・伝承を知り、日本の文化や伝統に関心をもたせる資料」に関する記述の有無と内容を調査。
A 社会科以外でも恣意的項目で調査:英語と国語でも「北朝鮮による日本人拉致問題について」の記述を調査。美術では「日本の美術作品の取扱い」を調査。保健体育と家庭科では「性差」に関する記述を調査している。
上記各項目は、いずれも学習指導要領と無関係である。貴職は「学習指導要領を最もよく踏まえた教科書」を採択するよう指導しながら、それに反する調査を行ったことになる。@で「調査研究」すれば、扶桑社版が「最良」となるであろうことは容易に予測されるところである。Aでも、一例を挙げれば「性差」に関する記述の調査は、「精子と卵子」とあれば「男が先、女を後に記述」とするような、およそ教科書の内容には関係のない調査である。これは「新聞などの報道によると、男女という記述をやめて、すべて女男というふうに記述している教科書もあると聞いているのですが、小学校の教科書の採択にあたって、こうした点も十分に考慮して調査研究を行って報告していただきたい」(4月8日、平成16年第7回教育委員会)あるいは「小学校の教科書でも『男女』という記載をやめて、すべて『女男』と変えている教科書などもあります。……そういうところをきちんと調査研究を行ってもらいたい」(4月22日、同第7回教育委員会)等の発言を受けたものである。これは教科書内容に対する、したがって教育内容に対する「不当な支配」そのものである。
このような不当で偏向した「調査研究資料」に対して、教科書東京ネットは強く抗議し、この「資料」に沿って教科書採択を行うよう区市町村教委に要請し、いわんや強制したりすることのないよう、重ねて強く要求するものである。
横山洋吉・前東京都教育委員会教育長が自民党県連主催の教科書シンポジウムに出席した問題に関する公開質問状
東京都教育委員会御中
横山洋吉・前東京都教育委員会教育長が
自民党県連主催の教科書シンポジウムに出席した問題に関する公開質問状
2005年7月13日
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-6-1小宮山ビル201
電話 (03)3265-7606/fax(03)3239-8590
「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク
代表委員 山田 朗
去る5月14日、自由民主党宮崎県連合会は、宮崎市の宮崎市民プラザで「歴史教科書問題シンポジウム−未来を担う子供たちのために」を開催したが、その基調報告者およびパネルディスカッションのパネリストの一人として、当時東京都教育委員会教育長であった横山洋吉氏が参加した。シンポは「今の教科書は自虐的歴史観に立った内容がはんらんしている。子供たちに国の誇るべき伝統文化を伝えよう」と、同県連青年局などが呼びかけて企画したものである(毎日新聞5/9付予告記事)。このパネルディスカッションには、横山氏のほか、宮崎県選出の江藤拓衆院議員、古川禎久衆院議員が参加した。
一方、同月22日、自由民主党熊本県連合会が、熊本市にある熊本テルサで開催した「正しい教科書を子供たちに」と題するシンポジウムでも、横山氏はパネルディスカッションに参加している。地元紙『熊本日日』5/23付報道によれば、これには自民党員ら約400人(主催者発表)が参加したという。
シンポジウムでは、県連の島津勇典幹事長が「教科書問題の実態を勉強する必要がある」とあいさつし、基調講演を行った教科書改善連絡協議会の伊藤哲夫運営委員長は、従来の歴史教科書について「階級闘争史観で描かれているほか、中国や韓国の影響が強まっている」と指摘し、「これでは日本の歴史に対して憎悪が深まってしまう」と主張した。
これらの事実は重大であるので、下記の質問を提出する。誠実かつ速やかに、文書でご回答いただきたい。
記
1. 自民党宮崎県連および熊本県連という私的組織が開催した、特定の政治的意図を持った集会に政治的中立を保つ義務を有する公務員がその資格のまま出席した事実は、地方公務員法第35条及び第36条2項に反すると考えるが、見解を問う。
2. 横山氏は、昨年も自民党などの国会議員で組織する教育基本法改正促進委員会の集会に参加し、「休暇を取っているのだから問題ない」と開き直り、その後回答を変更した経緯がある。休日であっても、教育長の肩書きで参加した以上、公務と見なされるべきものであるが、今回は休暇か、公務かを明らかにされたい。
3. これらのシンポジウムに参加するにあたり、公費は一切支出されなかったのかどうか、事実を開陳すること。
以上