活脳鍼の認知症患者に対する短期記憶に及ぼす影響


【調査概要】
長谷川式簡易知能評価スケールから、視覚的な短期記憶を調査する項(※)を割愛させ、替りに都道府県名や地方名の質問をプラスした質問用紙(長谷川式簡易知能評価スケールプラスマイナス)を用意し、活脳鍼による短期記憶の向上の有無を獲得点数の増減により判断した。調査期間は2012年11月26日から12月17日までの3週間で、1週間おきに計4回調査した。初回と1週目は活脳鍼を施術せず、その代わりに風池や完骨などの頸部のツボに鍼を刺入し、15分経過した後に長谷川式簡易知能評価スケールプラスマイナスの設問に答えてもらった。2週目と3週目は活脳鍼施術15分後に同じ要領で答えてもらった。
また、各々の調査時に脳波計による右前頭葉の脳波分析も行った。なお、調査期間中は自宅にて1時間ほど簡単な計算問題を解いてもらった。但し、1週目の調査が終了してから2週目の調査を行うまでの間は、全く計算問題を解かないようにした。
※同時に脳波の測定も行うため、閉眼状態で調査した。そのため、長谷川式簡易知能評価スケールのうち、5品の視覚的記銘(非言語性記銘)の質問を省いた。


【対象者】
公募により集め、本人並びに家族の同意の元に参加してもらった65歳の男性。


【病状】
脳出血の後、認知障害が専門医により確認され、アリセプトを服用している。家人の話では、外出する意欲がなく家に閉じこもりがち。また、身の回りことを構わない、ごみの分別ができない、効率的に洗濯ができない、ものの数分前に言ったことを覚えていない、簡単な計算でも出来ないなどの症状もあるとのこと。


【調査期間中の注意】
今まで服用していた薬剤はそのまま継続してもらい、生活習慣も今まで通りとした。
但し、新たな薬剤の服用や学習、運動などは遠慮してもらった。


【結果】
表1に示すように、活脳鍼を行う前の長谷川式簡易知能評価スケールプラスマイナスによる評価は、調査開始日が12点(長谷川式簡易知能評価では10点)、1週目が13点(長谷川式簡易知能評価では12点)であったが、2週目の活脳鍼施術直後の評価では、21点(長谷川式簡易知能評価では14点)、同様に3週目の評価では25点(長谷川式簡易知能評価では17点)であった。また、表2の通り、活脳鍼施術前の問診時の右前頭葉の脳波は、僅かにα2が優位であったが、活脳鍼施術後は、α2の占める割合が増加していた。


【考察】
活脳鍼施術前よりも後の方が、長谷川式簡易知能評価スケールプラスマイナス評価、並びに長谷川式簡易知能評価の短期記憶に関する項目において、高得点が得られた。また、活脳鍼施術後は、明らかに右前頭葉をα2が占める割合が増加していた。α2はリラックス状態にありながら集中力や思考力が高まっているときにあらわれやすい波形と言われている。
認知症の改善には、前頭葉の血流やα2波の出現率を増加させる必要があると記述している文献がある。活脳鍼による脳血流の増加は、先の臨床調査からも明らかである。更に、家人の話では、活脳鍼施術後は洗濯の際、乾燥機を使用するようになった、積極的に外出するようになった、引き算ができるようになった、計算問題の正解率が増加したとのことだった。更に都心までひとりで同窓会に行ったり、選挙に自分ひとりで自転車に乗って行ったりしたことには驚いたと付け加えていた。これらのことから、活脳鍼の抗認知症作用が強く示唆された。短期記憶の向上は認知症の中核症状の改善、行動様式の活発化は周辺症状の改善を示していると思われる。