コラソン

小林久美子


ブラジル、サンパウロ

※カーニバル(サンパウロ)
illustration:kumiko kobayashi


ビラ・ロボスを聴きたい夜があるというあなたを包む森がひらくよ

この街のよしあし数えあげながら早生のポンカン試食して買う

残務整理はゆびきりよりもかんたんで社屋をでたらいちだんと夕

おもいではぽとんと落ちるトメアスーやインダイアツーバやサンジョアキンや

おもいやりふかく(ふるさと)ぶらじるよあられの缶に写真があふれ

うけいれてくれたぶらじるこんなにも異質でくらいおくびょうものを

たいようにちかいくらしはおわろうとしていることがとてもわかるよ

帰るならかるいものだけつめこんで重い物みなていねいに置き

とり皿に鳥の心臓(コラソン)ふたつ落ち味まろやかにかたちのちがい

食べすぎてかなしくなってしばらくは抽象画家にさすられていた

棚に打ちならべた釘は三年のさびをこしらえぬくもっていて

帰国する荷ができていく ゆびにキズ とうといものをうしなう予感

アロワナはげんきにおよぐあたらしい住家でおよぐ別れをしらず

丘にいきありがとう(オブリガード)をくりかえすとおくに雨の範囲をながめ

自動車の屋根に映ったわたぐもをさがそうとして空をあおげば

九階の窓からみてた大空はゆたかな情をあらわしていた


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