まもん姉さん

東直子



久美子姉さん、お誕生日おめでとうございます。
一緒にくらした時間を、離れて暮らした時間が今日、追い抜きますね。

この季節になると、茱萸のとても好きだった久美ちゃんが、
学校に行く途中に、よその家の垣根や道ばたの茱萸を、
つんでは食べ、つんでは食べ、していたのを思い出します。
わたしもまねして、よその家の垣根や道ばたの茱萸を、
つんでは食べ、つんでは食べ、しました。
学校に行くとき、久美ちゃんはいつもだまりこくっているので、
学校に行くときは、だまって歩くものだと思っていました。
学校は遠くて、坂がありました。
池のそばをとおり、川のそばをとおり、薬局の前をとおり、ゆきました。
薬局の前の大きな瓶からいつも水があふれていました。
わたしは、学校にいくのがいやでしたが、久美ちゃんはどうだったのかな。
鳩胸の久美ちゃんと猫背のわたし。
学校へ行くときは黙って歩くのが好きでした。

あっしらのきち
トイレがわりの排水溝
きいきいいうブランコ
食用ガエルを洗った水道
おばけ屋敷のベッド
巨大なつくし
かかしけんけん
セブンブリッジ
七並べ
ざぶとん
戦争
人生ゲーム
ダイヤモンドゲーム
オセロゲーム
マッチ棒をかけた花札
のりちゃんが起きてこないうちに、
はやくはやく。

こんど返すっていってたアイスクリーム、まだ返してもらっていないけど、
毎日蒸し暑いけど、
元気で、ね。


(初出:短歌メーリングリスト)


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