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E-MAIL MAGAZINE, @LAETITIA<3>,
2000.10.10
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┃ 「@ラエティティア」第3号・目次
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┃ ●キーワードと短詩型[1]スポーツ
┃ ○作品
┃ 加藤栄子(詩人) ◇詩「跳馬の途中で」
┃ 笹田かなえ(川柳作家) ◇川柳「だからこそ」
┃ 入江一月(俳人) ◇俳句
┃ 小川優子(歌人) ◇短歌「公人」
┃ 栗原寿美子(歌人) ◇短歌「競泳選手」
┃ 児玉暁(歌人) ◇短歌「競泳」
┃ 東直子(歌人) ◇短歌「くるぶし」
┃ ○エッセー 私の好きなスポーツの歌・この一首
┃ 五賀祐子(歌人)
┃ 浜田昭則(歌人)
┃ 桝屋善成(歌人)
┃ ●第二号感想
┃ 古谷空色(俳人・歌人)
┃ ●編集後記
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■■■ キーワードと短詩型[1]スポーツ ■■■
今回から連載で「キーワードと短詩型」が始まります。初回のキーワードは
「スポーツ」です。作品は詩、川柳、俳句、短歌からなり、7人による競作で
す。また、エッセーは「私の好きなスポーツの歌・この一首」というタイトル
で3人の歌人に書いていただきました。
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┌───────────────┐ 詩
│ 加藤栄子(詩人) ├──────────────────
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跳馬の途中で
あの日 思いっきり助走をつけて跳んだ
全身バネになって ふあぁぁん 身体を空へ投げ出した
回転ひねりの得意技 その途中だった
観客が逆さに拍手して 母さんも日本の国も逆さになって
耳に響いてきた歓声 すべてうまくいった あとは着地だった
と そのまま戻らないのだ ひとが一人 ぼくがぼくの中に
それからずっと待っている 空を見上げたまま
跳び越えたはずの馬は とっくに片付けられて
観客は誰もいなくなって しろい風が吹き抜けて
ぼくは この星に着地するはずのぼくを待っている
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┌───────────────┐ 川柳
│ 笹田かなえ(川柳作家) ├──────────────────
└───────────────┘
だからこそ
まぼろしの赤が決勝点にある
グレコローマンスタイルビターチョコレート
四股を踏む吉永小百合だからこそ
スポーツ紙くまなく読んで今が旬
錆の色錆の匂いをテンゴング
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┌───────────────┐ 俳句
│ 入江一月(俳人) ├──────────────────
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http://homepage1.nifty.com/PANDORA/
月白や垂線しずかにひずみゆき
さんま焼く回転性人体如何に
投げきってやわらかな光ある
月皓々スローモーションビデオ着地せず
南半球では筋肉は琥珀の虹
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┌───────────────┐ 短歌
│ 小川優子(歌人) ├──────────────────
└───────────────┘
公人
つま先の痺れ確かに広がるも嬉しみて揃ひのラングを脱ぎぬ(一月)
ゲートゆく時遊技場の屋根に立つピンひとつ薄き朱を帯びゆく(三月)
スマッシュを決めたあなたを語りゐる人らの背後吾はただの客(五月)
闘ひは突き抜けること吾を抱きしあの日よりあなたは負けを知らない(七月)
「なんだよ」と拳の強く下ろされて応援といふエゴの仕舞はる(九月)
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┌───────────────┐ 短歌
│ 栗原寿美子(歌人) ├──────────────────
└───────────────┘
http://www2.giganet.net/~sumiko/
競泳選手
バタフライ泳者は自分の水沫を追い越せぬままゴールへ向う
洗眼所の窓だけいつも開いていて赤目で見ても空色の空
辛そうなブレスの仕方が気に入って競泳選手と二度キスをした
深爪の足でフリップターンする鼻の奥までつんと痛んだ
君の肩のニキビに触れた中指をコースロープにひっかけて浮く
※フリップターン=水中ででんぐり返しをして壁を蹴って折り返す方法
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┌───────────────┐ 短歌
│ 児玉暁(歌人) ├──────────────────
└───────────────┘
http://www3.justnet.ne.jp/~satoru28/
競泳
鋼なすししむら水とせめぎ合う刹那刹那のしぶき火の花
臨界にはや達したりされどなお戦う意志のドルフィンキック
自らを恃むほかなしびんびんと撓う体は水を掻き分く
スイマーは水の孤独を崩しつつ泳ぎゆくなりバタ足勁く
ストローク伸ばす体はしなやかにその先白鯨の尾を見据えて
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┌───────────────┐ 短歌
│ 東直子(歌人) ├──────────────────
└───────────────┘
http://www.ne.jp/asahi/tanka/naoq/
くるぶし
くるぶしに神様の棲む少年は落雷のごと水面(みなも)をめざす
水面に浮き上がる笑み筆先のようなてのひら空にささげて
長い坂をのぼりつめたら海が見えあなたが見えた 未来のような
最後までここでみていて跳べるからまた跳べるからあのあかるさを
国境を持たぬ素足はある朝の白きラインにしなやかに添う
※( )内はルビ
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┌───────────────┐ 私の好きなスポーツの歌・この一首
│ 五賀祐子(歌人) ├──────────────────
└───────────────┘
http://www2s.biglobe.ne.jp/~goga/
わたくしはわたくしだけの河に行く 五月、非力な釣竿(ロッド)を提げて
中山明
歌集『愛の挨拶』(1989年、沖積舎)は引っ越しに際しベッドの下から
出てきてふたたび「『愛の』といえば、挨拶しかないでしょう?」と宣った。
ボクはスポーツが怖くて嫌いだ。そこで、中山明さんはどんなスポーツをうた
っているか、と思ったら渓流釣り。あのびちびち跳ねる魚!はもっとも苦手な
んです(;_;)。が、この一連では、魚は釣り上げられるどころか針に寄る気配
も見せずに、しずかに喩の淵に潜むのであった。
※引用作品の( )内はルビ
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┌───────────────┐ 私の好きなスポーツの歌・この一首
│ 浜田昭則(歌人) ├──────────────────
└───────────────┘
http://www.kulawanka.ne.jp/~hamada/
東独の金メダル獲(と)るいきほひの気味わるし強し民を統(す)ぶる国
奥村晃作
オリンピックがアマ・スポーツの頂点であった時代、東欧諸国とりわけ東独
の選手が大活躍した。水泳のエンダーが印象に残っている。「気味わるし強し」
と終止形を重ねて、国家の名誉と体制優位の誇示のために、国家の庇護を受け
る彼らへの違和感を表出した1首である。真のアマとは何かが問われていた。
このたびのシドニー五輪ではプロが大活躍し、ほとんどの競技でいわゆる純
粋なアマがいなくなったのには隔世の感がする。
※引用作品の( )内はルビ
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┌───────────────┐ 私の好きなスポーツの歌・この一首
│ 桝屋善成(歌人) ├──────────────────
└───────────────┘ http://www2.ocn.ne.jp/~meicho
/index.htm
火達磨となりたる与田(よだ)がひざまづく草薙球場しんかんと昼
大辻隆弘『抱擁韻』
(1998年、砂子屋書房)
かつて中日ドラゴンズに在籍した与田剛投手は90年のシーズンに大活躍、
50試合に登板し4勝5敗31セーブの成績を残し最優秀救援投手および最優
秀新人の2タイトルを手にした。150キロを越える速球は野球ファンを魅了
し、だれもがスピードガンの表示にうなった。しかし、ルーキーでの活躍とは
裏腹にその後の野球人生は挫折の日々であった。流転の末、一軍での登板を目
標に、現在は阪神タイガースに在籍している。
※引用作品の( )内はルビ
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┌───────────────┐ 第2号感想
│ 古谷空色(俳人・歌人) ├──────────────────
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http://www.asahi-net.or.jp/~tv1k-fry/
第2号は千葉聡の歌集『微熱体』の特集だった。錚々たる顔ぶれによる短評、
一首評が掲載されているがどれも読み応えがあった。その上での我儘な好みと
なるが田中槐の「この歌集中の「僕」は(中略)なかなか素顔を見せようとは
しない」という指摘はなるほどと思った。あるいは鈴木竹志の言う「読者に対
する過剰なサービス」と裏で繋がっているのかも知れない。
短歌、俳句作品では紀野恵の「航海の断片」、わけても「ステップがときお
りしづむ波の間に低気圧的叱言が凝る」の特異な視点、「約束をつねに違へて
ほほゑんで長手袋を雲に投げ出す」の美しさに惹かれた。
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│ メールマガジン「@ラエティティア」第3号
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│≒∝≒∝≒∝≒∝≒∝≒∝≒ 編集後記 ∝≒∝≒∝≒∝≒∝≒∝≒∝
│
│▽今世紀最後の五輪が終わって、静まりゆく秋という感じです。今回は「ス
│ポーツ」をキーワードに作品とエッセーを寄せていただきました。今後数回
│連載で毎回ひとつずつキーワードを出していきたいと思っています。(久)
│
│▽小さいころものすごい運動音痴で、生きていくのが辛かったです。大人に
│なると、「さあ、ハードルを跳びましょう」とか言われずに済むので倖せで
│す。運動の得意な人をみるとこころからほれぼれします。あの艶。(直)
├──────────────────────────────────
│▼ご意見募集!
│面白かった作品、ご意見、ご希望、その他、「@ラエティティア」について、
│あなたの声をお聞かせください。今後の誌面づくりに活かしたいと思います。
│
│▼読者をご紹介下さい!
│「@ラエティティア」の読者をご紹介ください。お名前とメールアドレスを
│お知らせくだされば、最新号のバックナンバーを配信して、ご本人に許諾を
│確認したのち、配信リストに追加させていただきます。
│
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│らオリジナルをお届けします。最新号以外のバックナンバーは、
│ http://www.ne.jp/asahi/tanka/naoq/framepage1.htm
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│ 発行頻度 不定期刊
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│ 発行人 荻原裕幸 加藤治郎 穂村弘
| (SS-PROJECT http://www.imagenet.co.jp/~ss/ss.html
)
│ 編集人 小林久美子 東直子
| (直久 http://www.ne.jp/asahi/tanka/naoq/
)
│ 発行所 ss@imagenet.co.jp
│ 配信所 laetitia@ml.asahi-net.or.jp
│ 発行日 2000年10月10日
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|※掲載したURLは2000年10月10日現在のものです。
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