GW12日間を使ってこんな休暇もあるのか....!!
橘さんのアマチュア無線日記、南太平洋の小島で世界を相手に交信!
「Timelessな国からTalofa!


 Talofa:こんにちわ

 話は今年1月初旬に開催されたJAIZEK・大和アマチュア無線クラブのミーティングに遡ります。
会議が終了となりかけた頃、いつものいつものペディション仲間、JA1JQY(松井)、JA1KJW(中山)、JA8VE(斎藤)、そして私JA3MCA(橘)の誰からともなく
「ところで、今年はどこに行く?」
「そらやっばり、去年行けなかったツバルしかないで」(去年フィジーまで行ったのにフライトキャンセルで行けなかった)
ということで、二年越しのツバル(T2)へのDXペディション(アマ無線家/ハムが全く居ない、またはアクティビティの低い国や島に無線器材を持ち込んで、世界中のハムに珍しい交信のチャンスを与える遠征のことをいいます。正式免許をその国から得る必要があります)があっさり決定した。
 昨年はフィジー(3D2)まで順調であったのに、いよいよ明朝ツバルに向け出発という日の夕食中、突然フライトキャンセルの報に遭遇、皆で悔し涙をのんだのであるから当然と言えよう。


ツバルについて少々
ツバル/TUVALU(旧英領エリス諸島)はフィジー経由で飛行時間だけで11時間半。グアムの赤道をはさんで南に位置するが、ヨーロッパ、アメリカ東海岸並に遠い(世界で一番最初に2000年を迎えて有名になったミレニアム島があるキリバス共和国の南)。
日本からは、まず成田からフィジーまでエアー パシフィックで8時間半かけて行き(チケット代は往復で165,000円/税別)、フィジーでフィジーエアーの小型機に乗り継いで3時間(料金は、往復で1,300フィジードルでしたので、約13万円くらいでしょうか)。
ツバルと日本との時差は日本+3時間、ツバルは九個の環礁(Atoll)から構成された人口1万人強の小国(世界で4番目に小さい国)で、通貨は独自のコインもあるがオーストラリアドルが流通している=1ドル/82円。我々のような旅行者は首都のある一番大きなフナフチ・アトールしか訪れることが出来ないよう制限されている。南北に細長いこの島には、約3,800人の人々が住んでおり、たった一つの小さな国際空港の周り、徒歩で数分以内に全ての国としての主要な機能が集中している。地理的には、この空港のあたりが一番環礁の幅が広いが、それでもせいぜい歩いて5分位でこの国を横断出来ると言えば、読者の皆さんに感覚的に大きさを理解していただけるでしょうか。最近では地球温暖化の影響で消えてしまうのではないかとも言われています。
特別の観光資源があるわけでもなく「漁業資源や収集マニアに人気の大変美しい切手で外貨を稼いでいる」とは島にたった一人在住している海外漁業協力財団の寺前氏のお話でした。

 

フナフチ環礁(画像上左)の左下の少し広い場所(画像上右)に空港や国の全ての機能が集中している。最近はツバルのインターネットのドメインが.TV(日本は.jp、アメリカは.com)なので
世界のテレビ局に利用権が売り込まれている。ところが99年9月24日に「南国ツバルドメイン名騒動/――夢と消えた一獲千金」という報道があって、どうももめているようです。

←上空から見たフナフチ環礁。右が外海、左が内海。写真上部、島の先端近くにHideaway Guest Houseがあります。時速10キロの車で約30分。道がデコボコでスピードが出せない!!

ちなみに、寺前氏によるとこの国を訪れる日本人は年間せいぜい十数人程度とか。ツバル滞在中は、食料、ビールの買い出しで車に乗せていただき、大助かりでした。なにしろ、この国にはタクシーが空港に1台、バスも1日数便があるのみなのですから。
食料は、島に数箇所ある小さなスーパーで手に入れることが出来ますが、要するに何でも屋です。品数は、驚くほど少ないです。
幸いビールは、オーストラリア製のVBビールとフォスタービールの2種類売られており、水代わりに1時間に1本ぐらいの割合で飲んでいました。24本で、確か31ドル/約2,600円でした。


今回のベディションの概要

日程は99年4月29日〜5月10日12日間(ツバル滞在は5月2日〜9目)。フライトの関係から最低この日数が必要です。ゴールデンウイーク中で、一番航空運賃が高い時ですが、全員現役サラリーマンでは仕方なし。時間をお金で買うようなものです。

リ グ(無線機):FT−850 2台,IC−726,AmerltronALS−500M,FT−690MKII,HL66V
アンテナ:5ASpeclalfor14−2ト28MHz用,DPfor7MHz,21MHz&WARCBANDS,GPforl.8−3.5−3.8MHz,2elDeltaLoopfor50MHz
コールサイン:T22JY/JAlJQY,T22KJ/JAIKJW,T22TK/JA3MCA,T22VE/JA8VE


飛べ!飛んでくれ!

 準備万端の体制で、フィジーのスバにて夜のフライト待ち。仮に設置したアンテナでJA(日本)と交信しても、心はやっぱり
「飛行機うまいこと飛ぶやろか?」
結論的には、
「飛べ!飛んでくれ!」
と離陸の最後の瞬間までまさに祈った小型双発機(10人乗り)は、プロペラ音も軽やかに我々をツバルヘと運んでくれたのでした。飛行機に乗っていたのは、オーストラリアやニュージーランドからの観光客と現地に親戚のある人、そしてキリバスへのトランジット客(現地人)でした。
後で聞いた地元の方の話によると、評判の悪かったエアーマーシャルアイランズは結局フィジー-ツバル間の便を廃止、撤退。替わって、より信頼できるエアーフィジーが代替してスバーフナフチ間を運行。料金は三割も高くなったが、欠航は少なくなっているとのことでした。


HidawayGuestHouse

これまでツバルからQRV(交信)した局は、その殆どが国営”Vaiaku Lagi Hotel”を利用しています。空港から徒歩一分で大変便利が良いのですが、庭が狭くアンテナを張る場所が十分に無いので、我々は足の便が悪いのを承知で島の北部にある”ハイダウェイ/HideawayGuestHouse”を利用しました。



上の画像はHideaway Guest Houseの前での記念撮影。左からEmily,T22JY,T22KJ,T22TK,Rolf,T22VE

ここは、ドイツ人のRolfKoepkeさんとキリバス出身で料理の得意なEmilyさん夫妻が経営する民宿で、1日1室あたり40ドル/3,280円。うるさいことは一切言わず、アンテナも十分広い庭に自由に立てさせていただき、24時間運用が可能という、正にアマチュア無線をやるにはピッタリの宿でした。
建物は2階建ての木造家屋で、1階が客室3、ダイニングルームとなっており、ケプケ夫妻は2階を使っています。周りは、熱帯の木々と花で囲まれなかなか素敵な民宿でした。ただ、湿気が強烈なので、いつも衣類はジトジトしていますし、潮風がすごいので我々の無線装置も1週間で錆が出てきていました。
Emilyさんの料理の腕前はたいしたもので、毎日の彼女の手料理を大いに楽しみました。
Emilyさんの料理は、何といったら良いのか、、、、。
要するに、多分現地の人が食べているのを少し高級にしたようなものだと思います。魚は目の前のLAGOONで獲れた30センチぐらいもある名もしらない熱帯の魚が、まずから揚げ状態にされその上に野菜のアンがかけられていました。

野菜は、スーパーに行っても葉っぱものが一切無く、手に入るのは、にんじん、玉ねぎ、ジャガイモの3種だけでしたので、いつもこれらのものしか出されませんでした。あと付け合わせに、米(インディカ米)とタロ芋(このあたりの昔の主食)が毎回でました。これが確か7ドル/約570円です。

あと、チキンのもも肉を焼いたものを、カレーで味付けしたものも一度出ました。タンドリーチキンとまでは行きませんが、これもおいしかったです。付け合わせは、魚のときと同じです。これが8ドル/約660円でした(左の画像が食卓。右のお皿がチキン)。

朝食は、連日 茹で卵1個とバターかママレードで食べる食パンそれに紅茶でしたので、これにはさすがに飽きてしまいました。此れがなんと5ドル/約410円でしたので、メチャ高です。

昼はもっぱら自炊で、私が数回シェフを担当しましたが、食材が限られるので、卵、玉ねぎ、ジャガイモ、にんじんをうまく使いこなして変化をつけました。アイダホポテトと思われるジャガイモは10キロで2ドル50セント/約205円でしたが、此れを茹でてバターを付けて食べると本当に幸せな気分と満足感が味わえました。
あとは、税関をうまくくぐらせたカップヌードルを、昼、夜関係なくよく食べました。

ちなみに、この宿のあたりの島の幅は、外海側へ30メートル、内海側へ30メートル位しかありません!


体が震えてしまったほどの猛パイルを体験

ここからの第一声は5月2日03:40z、T22VEによる21メガSSBで、手ぐすね引いて待ち構えていたJF1OCQ三宅氏が見事にゲット!その後は連日パイルに継ぐパイルの連続でした(極めてたくさんの局が、同時に団子状態で呼んでくる状態をいいます。混信の極限状態。左の画像は交信中の橘さん)。
当局T22TKも、これまで数エンティティでパイルアップ(pile up =重ね上がった状態)を経験しましたが、ツバルでのそれはすこぶる強烈!最初にQRV(on the airと同じ意味で、電波を出す事)した7メガCWなど、ゴーゴ−いう音(信号ではない!)しかヘッドフォンから聞こえず、思わず体が震えてしまったほどです。Hi
 ファイブナイン誌(海外との交信/DX専門誌)で何度も言われていますが、EU諸国からの狂烈なパイルアップは、JA、W各局に比し信号が弱いことと、QSO中の相手局の真上に重ねて呼ぶ局が多いことなどから、QSOの能率がガックリ落ち、それに反比例してオペレータの疲労が増加。3−4時間パイルをさばいた後は正に疲労困ばい状態に陥ってしまいます(この後のビールの旨さといったら!!!!)。



歴代トップの交信数を記録

コンディションは全般的に大変良く、中でも21メガは連日殆ど一日中オープン状態。狂烈なパイルアップのなか多数のモービル局と交信出来たのは驚きでもあります。
 又、6メーターマン( 50メガヘルツ帯の愛好者)の熱い期待に応えて50メガが4日間にわたりJAにオープン、T22JYが約60局とてんやわんや状態でQSO出来ました。いや−!良かった、良かった!!他のバンドで「ビーコン出てます?」と何回も聞かれ、プレッシャーのなんと強かったことか…。
 ハイパンドの良さとは逆にローバンドはいまいちで、T22KJが蚊に体じゆうを刺されながら苦心惨澹して調整を繰り返した1.8メガ用アンテナですが、熱帯性ノイズがものすごく、僅かにJAIJRK局の信号を確認出来ただけに終わったのは、いかにも残念でした。
 4人の総交信数は1万4千近くにも達し、大和クラブのこれまでの遠征の中で最高を記録しました。


次に乞うご期待!!

結局、
ツバル滞在中の5月2日〜9目は観光らしい観光はしていませんが、国営の切手販売所、島の北端の旧砲台跡ぐらいは行きました。後は1回だけラグーンで水浴びした程度ですかね。これ以外はひたすら、早朝から深夜まで無線をやっていました。
観光客が見て楽しめるものは、この国では自然以外に無いと言ったほうが良いと思いま。それが、わたしにはとても良かったです。

.




現地のあどけない子供達。遊び場は内海。近くでは獲れたての魚をウロコを取って海水で洗い直接かじって食べてました。


空港の近くのお土産売りの屋台。貝のアクセサリーを売ってました(3つで10ドル/820円)。
.


夜部屋から出るとそこは漆黒の闇、足下が何も見えない。夜がこんなにも暗いものだったかと思いました。海岸に行き明かりを消すと目も徐々に慣れ、星明かりで周りが見えてきます。空気がきれいなんですね。金星の明かりが内海に写って光の帯になってました。
上の画像の左に十字の形で4つ並んでいるのが88ある星座の中でもっとも小さな星座「南十字星座」。縦の線の長さを下(南)に5倍するとそこが天の南極。右に同じような並びの星があるがこちらはニセ十字。こちらの方が大きくて目立つので勘違いする人が多い。


終りに、今回のヘディション実施にあたり種々の情報を提供いただいたJA3JA早崎氏、JA1WPX下市氏、JE1DXC三原氏に深く感謝するとともに、連日の大コールで我々4人を励ましていただいたJA各局にお礼申しあげます。
1993年11月から始まったJA1ZEK大和クラブの海外運用シリーズは

93年11月=フィジー経由ソロモン諸島ガダルカナル島
95年1月=ロツマ島が目的であったが悪天候によるフライトキャンセルによりフィジー島
95年10月=フィジー経由ロツマ島、
96年10月=ハワイ経由アメリカンサモア
97年11月=サイパン
98年4月=ツバルのフライトキャンセルでフィジー領内タベウニ島とマロロライライ島
99年5月=フィジー経由ツバル

となりますと次の目標は? 

ご期待あれ!!

 

ホームページの管理人/田中から一言
この日記は「月刊ファイブナイン」99年7月号(画像左。表紙をツバルレポートが飾っている)用に書かれた原稿をもとに再構成したものです。原文はあまりにもマニアックなので、橘さんに食事の事や現地情報を追加で書いてもらって日記風に仕上げました。
右の画像は橘さんが気に入っている島から見た夕焼けの画像です、綺麗ですね。


後日談

さて、次回のペディションが待ち遠しくなって来ました。「月刊ファイブナイン」誌の編集長からは、タヒチやソロモンの中で、無線の世界では別のエンティティ扱いにすることが最近決まったマルケサス諸島、テモツ諸島あたりはどうか、などとという話が来ていました。
これじゃ財布が持たないなー!!

用語解説
「別のエンティティ扱い」=アマチュア無線では世界の国々が320ぐらいに分けられており、ほんの1年ぐらい前まではこれをカントリーと呼んでいました。ただこの呼び方では、どうしても国をイメージしてしまうのでエンティティと呼び方をかえました。例えば、日本は小笠原諸島、南酉島がべつエンティティとカウントされ、呼出符号もJAとは異なるJDが当てられています。このエンティティーは、DXCCとよばれる有名な賞状をもらう時に重要な単位で、たくさんのエンティティと交信しているハムほどこの世界では尊敬されるわけです。

今度こそ終わり


TOP/HOME