97年1月15日(水)晴天 

ロンドンの初日の夜は霧
(当時の為替ルートは£1/ポンド199.5円〜200円換算)

ユーロトンネルは、ミッションインポッシブルを思い出しながらぼーっとしていると20分位であっけなく通過。トンネルの手前でTGV区間は終わって在来線区間に変わるので、スピードが極端に遅くなり故障じゃないかと思う程でした。TGV区間は盛り土の上に線路があって地面から4〜5m位高くなっているので、視線が高い新幹線的風景でしたが、トンネルを抜けるとまるで田舎のローカル線を走る山形新幹線のようでした。

車窓から見える風景もまさにイギリスローカルの風景。そこにはイングランド南西部の風景が広がっていました。うねる様な起伏の真っ青な牧草地が広がり、しかも真っ青な牧草地の上にところどころに真っ白な雪が残っていて不思議な風景でした。牧草を食べる羊も見え、霧まで出ていました。
小麦畑が広がるフランスの大陸の風景とは全く違う風景で、農業国から酪農国に来たのを実感させてくれました。
沿線の家々は蜂蜜色と表現される壁が特徴の茅葺きの農家や赤茶色の煉瓦作りで、パリのグレーがかった白い家並みとは明らかに違う色調でした。

レンガ作りの5階建て位の家々が窓一杯に見えはじめ、ビルも見えはじめたらもうそこはロンドン。ワーテルロー駅に到着です。
ナポレオン崇拝のパリから、ナポレオンが破れて島流しになったワーテルローの戦いを記念して名前をつけた駅に着くのは、イギリス人のお得意のブラックユーモアなのでしょうか?ユーロスターはロンドン-パリ間に限らず、ブリュッセル行きもあります。季節によってはディズニーランド・パリ行きとかフランス・アルプスのスキー場行きなどという特別列車も運行されています。
ロンドン滞在型の旅で町中にある駅から出発20分前までに飛び乗って気軽にパリやディズニーランドに行くなんていうかっこいい事も可能です。僕も次回ロンドンに来た時はユーロスターを使ってパリ1泊旅行をしようと思っています。
ちなみに、
ユーロスターのロンドン発の料金(片道)はAdult Fareでパリ$149、ブリュッセル$229。12〜25歳を対象としたYouth Fareだとパリもブリュッセルもたったの$69です。

ユーロスターから降りて意外と近代的な駅構内を進むと、パスポートコントロールがあり、「何日滞在ですか?」聞かれただけでパスポートに「CHANNEL TUNNEL」というスタンプを押してくれました(最近のヨーロッパではスタンプを押す方が珍しく、同じユーロスターでもイギリスからフランスに入国した場合はスタンプ無しだそうです)。

そして、いよいよイングランド入国。

まずは、HISの大型バスに乗ってホテルへ。
ロンドンの
天気は晴れ、街には活気がありました。町並みは古い建物と近代的なビルが混在していて、パリとはだいぶ違うごちゃっとした印象です。
色が白っぽい色からレンガ色へ変化し、これが景観の違いを決定的にしています。アングロサクソンとラテンでは景観までこうも違うのかと妙に感心させられました。

ホテルはロンドンとヒースローの中間地点にあるハマースミス(地下鉄で中心部から15分位、£1.5=300円の立地)にあるノボテル・ロンドン/NOVOTEL LONDONという何百室もある大きなホテルでした。部屋は広くて近代的、チェストの上にはイギリスらしく紅茶セットが置いてありました。
ホテルで少しゆっくりしてから、まずはミュージカルのチケットを買おうと思ってチケット屋さんが集中しているレスタースクエアーへチューブ/地下鉄で直行。
駅でロンドンのピア=Time Out£1.7/340円を買って出し物を車内でチェックしながら行きました。
ロンドンの地下鉄はパリよりも安全な雰囲気で、乗客の身なりも良かったので安心して乗れます(安心と言っても寝てる人まではいませんよ)。

レスタースクエアーに到着すると、ミュージカルの値段を書いた看板を出したチケットショップが一杯あって列ができている店も2〜3件ありました。ガイドブックに載っていた有名なハーフプライスチケットブースではキャッツとかの有名なチケットは扱っていなかったので、チケットショップをチェック。
チケットの相場をチェックしてから、キャッツやオペラ座の怪人のポスターが貼ってある一番大きいショップで20分位並んでキャッツの当日券(£25+手数料£6=£31/6,200円)を購入。残念ながら「オペラ座の怪人」はどの店も扱っていませんでした。
我々が買った店はお客さんが30人位も並んでいるのに、赤のブレザーを着た金髪のお姉さんが一人で対応していて、しかも一人一人の希望を聞いてから劇場に電話して残りがあるかどうか聞くシステムになっていました。
お姉さんは結構うんざりしながら対応していましたが、僕も今時電話を一件一件かけて確認するなんて、劇場が頑固で端末を置くのを拒否しているのか、それともこの店の考え方が古いのか?と待っている20分位の間ずーっと考えてしまいました。
列に並んでいる時アメリカ人の60代前半と思われる白人のおばちゃんが「私とマイ ハズバンドはミュージカルが大好きで、ニューヨークでもロンドンでも随分見たわ、例えばね〜」と自慢話をし始めて5分位聞かされました。そのおばちゃんはひとしきり僕に話し終えると今度は背の高い白人のお兄さんをつかまえて同じ話しをしてました。しかし、嬉しそうに語るその笑顔と、奥さんをニコニコして見守るご主人を見ているとアメリカ人のリタイヤした夫婦の人生の楽しみ方を少しかいま見たような気がしました。

チケットを買った後は、一息入れる為チケット屋の前にある広いカフェレストランでイギリス名物のフィッシュ&チップスに挑戦(画像左。紅茶と合計で1,000円位。お好みで茶色い麦から作った酢をかけて食べるらしく、塩をかけないと味気ない。正体はたらのフライで、どんなにまずいかと思ったらそんなにまずくなかった)。ここのウェイトレスさんは真っ赤な口紅をしていて歌手のシンディー・ローパーのような派手なお姉さんでした。

一息入れた後は、「オペラ座の怪人」をどうしても見たかったので、直接劇場で買おうと思って、徒歩でハーマジェスティーズシアターまで移動。
もう暗くなっていたので(17時には真っ暗)トラファルガー広場とか
ナショナルギャラリーがオレンジ色の外灯の中にライトアップされて、しかも観光客としては都合良くロンドン名物の霧が出ていたので、建物がまるで舞台装置のように霧の中に浮かんでいました。この日の霧はスモッグではなく、本物の霧でした。
ロンドンはパリに比べて夜でも人通りが多く、歩いている人の身なりもいいので安心して歩けます。

途中、トイレに行きたくなって、チャリング・クロス駅の近くのアメリカ風パブでビール=BUD£2.35/470円を飲んで休憩。なんでまたイギリスまで来てアメリカ風パブに入るのか、しかも BUDなんか飲むのかと思いますが、考えるのがうっとうしかったのです、まあいいじゃないですか。

そしてハーマジェスティーズシアターに到着。早速ダフ屋さんの目にとまり、
「チケットあるよっ」と言われたので
「いくら?」と聞くと
「£70/14,000円」だと言うので、
「いらない! 劇場で売ってるかもしれないだろ」と言うと、
「どうぞ確認して下さい」って紳士的に言うので、ボックスオフィスに聞くと翌週の月曜日までソウルドアウトと言われてしまいました。さてと本気で交渉してやろうとダフ屋に目線を送ると、
「どうだった?」ってニコッとして
「2枚で£90の席ならありますよ」
といきなり言うので(さっきの1枚£70は何?って思いながらも)、
「2枚で£85ならOK」と言い、高っけーなと思いましたが買ってしまいました(1枚£42.5/8,500円=足もと拝見価格です。(正価は1枚たったの£10/2,000円)。金穴卓弥君には「一生もんだから」と言って納得してもらいました。
ちなみに、日本でもワールドチケットぴあとか
JALワールドプレイガイドで高い席は予約できます。£30/6,000円の席が手数料込みで1.3万円位です。長期滞在型の人なら着いた早々買えば正価で良い席が手に入りますよ。

チケットを買った後はキャッツをやっている劇場の近くに移動する為、ポールスミスの本店とかおしゃれな店が多く集まっているコヴェントガーデンへタクシーで移動。
ロンドンタクシーは丸目のクラシックスタイルのブラックギャブ=オースチンが主力。ロンドンタクシーは窓越しに目的地を運転手に言ってOKと言われてから乗り込むのがルールです。中は折り畳みシートを使えば5人まで乗れますがとにかく広く、天井も高いので余裕を感じます。
目的地に着くと降りてから料金も窓越しに払うのもルールです。もちろんドアは手動。料金は初乗り£1/200円、チップは10%が目安です(画像左は最新型でもクラシカルなロンドンタクシー)。

さて、コヴェントガーデン付近は道幅の狭いショピング街ですが、パリにはこういう町は無いので妙にうれしくなりました。シャーロック・ホームズの時代(ヴィクトリア時代)からさほど変わっていないのではないかと思わせる雰囲気でした。どの店のディスプレーもおしゃれで、税金が本と子ども用品(チョコレートを除く)にはかからないので、本屋が一杯ありました。
生きた街としてはパリよりもロンドンの方がおもろいと思いました。経済が上向きなので失業率も低く活気もあるのでしょう。

街を散歩しながらキャッツの劇場(ニューロンドンシアター)に向かい、開演時間(7時45分)の30分位前に劇場に到着。
キャッツは1981年初演のロングランミュージカルですがこの日もお客さんで一杯でした。

僕は劇団四季のやつは見たことが無いので、これがお初。座席一体型円形回転式舞台から7〜8m位の一階の良い席でした。我々の席の後ろに白人の高校生位と思われる金髪の青年の団体がいて、キャーキャーうるさかったのですが、その青年達のしゃべる言葉は僕が全く聞いた事がない不思議な言葉で、北欧の言葉ではないかと想像していました。

キャッツの内容は言葉の理解力が不足していてもそれなりに満足できるもので、猫達はまるで、初日の様に生き生きと歌って踊っていました。僕はあのT.Sエリオット作曲の名曲(バリー・マニローも歌って大ヒットした)「メモリー」が聞けて感激でした(上演時間は休憩をはさんで2時間45分)。
この日はキャッツの後地下鉄でホテルへ。
外は一晩中月が出ているのに霧が立ちこめていて、まさに、霧のロンドン。街中が街灯のオレンジ色に包まれていました。


16日(木)もまたまた快晴(本当に今回は天候に恵まれました)

半日観光〜夜はオペラ座の怪人

9時にホテルでピックアップしてもらい半日観光に出発。バスの中には30人位いました。
HISの吉野さんというスーツを着たお兄さんの案内でバッキンガム宮殿・ビッグベン等をぐるっと回りました。バスの中できのうの霧は最近のロンドンでは珍しいと言っていました。
パリ同様
「先週は雪が降って寒かったから、皆さんラッキーです」
と言われました。途中下車は
ロンドン塔とビッグベンの対岸。それぞれ20分位自由時間があって写真を撮ったりおみやげを買ったり、団体観光旅行らしい感じでした。

この観光の良かった点は散歩があったことでした。
コースは、
バッキンガム宮殿セントジェイムズパーク〜(エリザベス皇太后が住む)クラレンスハウス〜セントジェイムズ宮殿(=チャールズ皇太子の宮殿)まで。15分位かけて徒歩で移動しました。
セントジェームズ宮殿前ではちょうど12:00だったので、黒い熊の毛皮の縦長帽子にグレーの軍服(ロングコート)、手には自動小銃を持った衛兵の交代が見れました。衛兵交代と言っても1対1の交代、上官を含めて総勢4人の儀式でした。
(この年の9月、ダイアナさんのお棺がパリから帰り最初に安置されたのがこのセントジェイムズ宮殿でした。2人の王子が遺体に対面したのがここなのです)。

我々のツアーは宮殿前(右の写真は宮殿前から撮ったもの)でバスでピックアップした後は最後にイギリス屋という免税品店で解散して終了。イギリス屋では「黒柳徹子もお薦め」となぜか箱にシールが貼ってあるROYAL WORCESTERの野苺の絵柄のCoddled Egg Recipes(中に生卵を割って入れて、容器ごとお湯の中に入れてゆでる陶器)をワゴンセールで£8.6/1,720円で買いました。

半日観光では、ハイドパークやバッキンバム宮殿の前にあるセントジェームスパークの芝生が、冬なのに緑色に広がり完全に葉の落ちた木々と見事なコントラストだったのが印象的でした。イギリスの芝生は夏は湿度が低く、冬は湿度が高い気候に合った日本とは違う種類で、葉は柔らかく冬でも青々としています。
この青々とした芝生が冬のイギリスの公園の大きな特徴です。特にセントジェームスパークは、自然の森と池を見事に再現していて、変に柵を作らず手を入れた感じを与えない様に作ってあって感心しました。池には鴨や白鳥が羽を休めていました。
どの公園もさすがガーデニングの本場の国、田舎風にうまく作られ、良く手入れされていました。青々とした芝生が続くハイドパークには、外周に沿って乗馬用の土の道がずーっと続いていました。

半日観光の後は、イギリス屋の前にある日本料理屋でうどんを食べたい気持ちをグッとこらえて、パリにもロンドンにもやたらあるピザ屋で食事をしました。
ピザ数種類が食べ放題のBUFFETが£4.99/998円、サラダバーが£2.99/598円。紅茶が£1.25/250円、ホットミルクが£0.85/170円でした。ピザはアメリカ風ではなく、まあまあでした。サラダバーにネギ1/2本がどかっと何本も置いてあるのには驚きました、イギリス人はかじるのかね?あれを。後で会社でこの話しをしたらパリのモンマルトルの丘でもネギを丸ごとかじっている地元の人を見たという証言もありました。

午後は1日地下鉄・バス=ダブルデッガーが乗り放題のワンデイトラベルカード(朝9:30以降に購入可能。£3.2/640円)を買ってから、British Museum/大英博物館へ。

大き過ぎてつまらないと言う人が多い大英博物館ですが。エジプトとギリシャ関係の展示は立派。「戦利品の山」という言い方が正しい言い方です。外国の文化財を個人が持ち出せば泥棒ですが、国が持ち出せば戦利品。さすがかつて7つの海を支配した大英帝国です。
ギリシャ館では大きな展示室にアテネのパルテノン神殿の飾りやレリーフがずらっと並べてありました。神殿の正面の柱の上の屋根の側面に飾ってあった彫刻、レリーフはほとんどここにあるのではないでしょうか。イギリス人はきっとここにあるから保存が完全に行われているのだ、と胸を張って言うのでしょう。
パルテノン神殿は今でこそ真っ白な大理石の地の色の姿ですが、かつては明るい茶色をベースに部分的に極彩色の着色が施されていたと以前キャノンの広告で見た事があり、そのつもりでよく見たら確かにところどころに茶色の塗料が少し残っていていました。
ギリシャ館も見応えがありましたが、エジプト館はさらに大迫力。高さ10m位ある石作りの2本の円柱、高さ7〜8mの何トンもありそうなラムセス2世の赤銅色の石作りの胸像、思いの外大きく分厚いロゼッタストーン、どこかのピラミッドの石棺、金の棺等々、どれも他では見れない迫力でした。大人気のミイラの部屋も今まで見たことも無いので興味深く見れました。
大英博物館はエジプト物が充実していて必見です。ミュージーアムショップではBC500年の青銅製のネコの置物のレプリカを買いました(高さ8cm位の黒い小さなレプリカ£19.95/3,990円)。

大英博物館の後は卓弥君のリクエストでアビーロードへ。
アビーロードは、地下鉄のトッテナム・コートロード駅(大英博物館の最寄り駅)から2つ目のボンドストリートでノーザン線に乗り換えて北へ2つ目のセント・ジョンズ・ウッド駅で下車し、住宅地の広い道沿いに歩いて3〜4分で着きます。
アビーロードスタジオは閑静な住宅街のなかの、なんの変哲もない道沿いにありました。
ジャケットのビートルズのメンバーと同じように信号は無い横断歩道を渡っている姿をカメラで撮りましたが(写真上が私)、住宅街の中なのに意外と交通量が多い道で、渡っているとすぐ車が来てしまい、なかなかシャターチャンスがありませんでした。
さぞかし観光客が一杯いるかと思って行ったんですが、我々しかいませんでした。アビーロードスタジオの塀にはオーストラリアのデービス参上!てな感じで落書きが一杯書いてありました。

アビーロードの後はまた地下鉄でテートギャラリーへ。
こちらはイギリスが誇る水彩の風景画家ターナーのコレクションが出色です。ボヤッとした画風が好まれている風景画家で、僕は以前東京でやったターナー展で見て以来の再会です。
もともとボヤッとした感じの画風なので、まとめて見ても印象は薄く、一枚だけずーっと見る絵だと思いました。イギリスの落ちついたリビングにはさぞかし合うだろうなと思わせる絵でした。
ここも展示室は天井が高くて立派、天井からは自然光も入り何回見ても雰囲気に感心します。

この後はキャブでナイツブリッジのハロッズへ。ここには日本人観光客が一杯いました。ちょうどセール中で35%OFF。店内は重厚な感じで、ストアガイドを見ると地下1階地上6階まで各階が10〜26のスペースに仕切られているので、見通しの良い日本のデパートと違い自分がどこにいるのか分からなくなるので、ストアガイドが必需品です(画像右は地下の食料品売場/ミートホール)。
ここでのショッピングは、定番のハロッズの買い物袋(緑は当たり前なので、Lサイズの青いのを購入。£5.45/1,090円。三越では緑しかなくて2,900円)、ケーキを取り分ける大きなフォーク(£9.95がセールで£5.95/1,190円)や紅茶を買いました。この時買ったSTRAWBERRY FLAVOURED EXOTIC TEAのティーバッグ(25袋入り)£1.95/390円が帰国後一番うまいと思いました。

この日はオペラ座の怪人を見る日だったので、早めの夕食をとりました。この日のチョイスはイギリス伝統の味ローストビーフ(8.5ポンド=1,900円)。やけに明るいレストランでローストビーフを食べましたが、ここの付け合わせのサラダにもなぜかネギが入っていました。味はまあまあ。
最近のイギリス料理はブティッシュモダンという新しいスタイルが流行っていて、コンランショップのオーナーのサー・コンランが次々開店しているレストランが注目されていているそうですが、食べる機会が無くて残念でした。

その後、いよいよオペラ座の怪人を観劇の為ハーマジェスティーズシアターへ。道を迷ってしまい開幕2分後に到着。暗い通路で5分位待ってから入れてくれました。席は3階席でしたが一番前だったのでラッキーでした。
演出はキャッツとは違い壮麗な感じ、音楽もオーケストラでした。舞台装置もみるみるうちに変わり(オペラ座の舞台から地下の貯水池とかに変わったり、シャンデリアが舞台まで降りてくる)、歌い方もまるでオペラのような本格的な感じでした。
英語が完璧ならもっともっと楽しめたんでしょうが、筋は映画で知っていたのでなんとかついて行きました。隣の日本の子は英語が堪能のようで、ラストシーンのファントムが若き歌姫クリスティーヌを思いやり別れるシーンでは泣いていました。上演時間は休憩をはさんで2時間30分。パリのオペラ座でバレエを見て、ロンドンではオペラ座の怪人を見たのですから充分自己満足できました。


そして実質の最終日17日(金)やっぱり快晴

アンティークマーケットと買い物

この日は朝から2人別行動。午後6時にチェルシーで待ち合わせることにして、僕は前日ハロッズで買った買い物袋を握りしめて、7時過ぎからロンドンブリッジを渡ってテームズ川の南側のバーモンジースクウェアのアンティークマーケットへ出発。
ここのマーケットは金曜日しかやっていないマーケットで、朝5時からオープンしているとガイドブックに書いてありました。
マーケットに着いた途端。アンティーク好きの僕は ここだ!って思いました。
イギリスはアンティーク天国だと聞いていましたが、質・量ともに確かに充実してました。特に主役の銀製品はキャンドルスタンド、ティーポット、カトラリー(=ナイフ・フォーク、6〜7本セットが多い、単品売りも有)の量が豊富で2,000円〜10,000円もあれば買えます。古さは40〜100年物が多かったです。

ここで買ったのは
銀張りのキャンドルスタンド/燭台2台1セット(3,000円位)、
パピルスに手書きで描かれた古代エジプトの象形文字風の絵(縦30cm×横20cmの額入り2,500円位)、
金の額に入った大理石のレリーフ(母と子どもの浮き彫り。20cm角。£50/10,000円)、
銀メッキの魚用フォーク&ナイフ6本(3,000円位)、
高さ20cm位の金属でできた像(画像左。ライオンの上に乗って自由の女神みたいにたいまつを掲げた男の人の像。台がもげて無かったので安くて£8/1,600円)、
以上5点、合計20,100円でした。

今回イギリスに行くまで僕は全く銀製品に興味が無かったのですが、バーモンジーのアンティークマーケットでずらっと並んだ銀製品を見ているうちに、好きになってしまいました。

今この日記を書いている部屋に買ってきた物を早速飾っていますが、東洋趣味の僕の部屋にははっきり言って合わない!
しかし、夜になって(僕の部屋は蛍光灯ではなく白熱球のスタンドを使っているのですが)オレンジがかった光に輝くシルバーは金より上品で、イギリスの家も夜の照明は白熱球であることを考えると、もしかしてこの姿が好まれているのかな、と思いました。さらに、シルバーは光沢を維持するのに手間がかかるのが世話が焼けて、それがまたいいのかなあとも思います。2ヶ月に1回位磨かないとすぐ黒ずんでしまいますから。

さて、アンティークマーケットの後は、老朽化の為廃止されるかもしれないと言われているロンドン名物2階建てバス(ダブルデッガー£1.2/240円)に乗ってテムズ川を渡ってオックスフォードサーカスへ、終点が目的地だったので安心して乗れました。

その後、今度はアンティーク屋の専門店のデパート、グレイズに行きましたが、高級アンティークは目が利かないうちは衝動買いは厳禁。見学だけして、大衆デパート(と言っても建物は重厚で立派)マークス&スペンサーへ。
ここではまずタバコを買いましたが、日本で250円(当時)のロスマンズが£3.08/616円!でビックリ。松原から頼まれたシャワー&バスジェルのピーチとアロエ(@£1.75/350円)を買う為レジで並んでいると、卓弥君とばったり再会。ちょうど昼時だったのでキャブで紅茶の専門店
フォートナム&メイソンへ。

フォートナム&メイソンでは紅茶をどさっと買って(Peach Flavour Teabag £1.55/310円を10箱。三越だと700円)店の奥にあるティールームへ、ここで昼食。スモークサーモン&クリームチーズサンドウィッチを食べました(2,000円位)。
アフタヌーンティーは3時からだったので、ホテルで食べようと思ってアフタヌーンティーの必須アイテム=スコーン(£0.28/56円。イギリス人はスコンと発音)とスコンには欠かせないクローテッドクリーム(200円=特濃バターみたいなもの)とイギリス伝統のキドニーパイ(牛肉の腎臓のブラウンシチューが入っているパイ=手のひら大£0.3=60円)を買って帰りました。卓弥君とはフォートナム&メイソン前で再び別れました。

この後ロンドン名物の雨が少し降りましたが、すぐやんでしまいました。
僕はアンティークマーケットで買った物を置きにホテルへ一端帰り。その後
ビクトリア&アルバート博物館自然史博物館(イギリスは公立美術・博物館は全て入館無料)、マダムタッソーの蝋人形館(£8.95/1,736円=意外とおもしろかった。千代の富士は人気がありませんでした)へ行き。
6時にチェルシー(趣味の良い店が一杯ありました)で待ち合わせた卓弥君と
コンランショップへ。
コンランショップの中に入って、う〜むやっぱ本店は違うなーと思った瞬間、「ソリー閉店です」と言われてしまい一瞬で見学終了。あわてて歩いてハロッズに行ったのですがこちらも閉店。ロンドンの冬は6時には大きなデパートやショップは閉店してしまうのです。そこで、最もにぎわっていると言われるソーホーへダブルデッガーで行き、あやしいHな店が並ぶエリアをぬけて路地のつきあたりにあったパブに入って念願のエール(ale=地ビール)を飲みました。

このパブは暗い店内のテレビに写るフットボール(サッカー)の試合を会社帰りのおじさんが一杯見ていました。ここは黒編みタイツのあやしい金髪お姉さんもいたし、ビールにジンを入れて飲む常連さんが一杯いる観光客が皆無の本場の大衆パブでした。
パブのビールはジョッキ=Tankardの量をOne PintとかHalf Pintとか指定しますが1パイント(470ml)で£2〜3/400〜600円位でした。

その後キドニーパイを食べる為、いかにも場末のレストランに入って食事。フィッシュ&チップスに再トライしたらまずかったけれど満足。ここのウェイトレスさんは学生さん風でニコニコと愛想が良く気分が良かったので最後だったのでチップをはずみました。
その後はピンク色のとさかが生えたパンクのお姉さんが店番をしているHショップを冷やかしたり、電話ボックスに貼ってあるあやしいチラシを記念品にとはがしたり、ほろ酔い気分でヘラヘラしながら地下鉄でホテルに帰りました(ホントです)。
ホテル近くのハマースミスの駅ビルのスーパーで牛乳(500ml位)を買ったらたったの£0.29/58円。さすが酪農国です。普通サイズの紙パックジュースは£0.65/136円だったからかなり安めです。
次の日は5時半起きなので早々に寝ました。


18日(土)最後は曇り

帰国当日は6時起きでポートベローマーケット〜ノッティングヒルへ&あとがき

この日は10時にホテルを出発する予定の日なのですが、出発をじっと待つなんて事はしません。
前夜にルームサービスを朝6:00〜6:30に予約し、6時ちょっと過ぎからに朝食(ノボテルの朝食は前日に時間を指定するルームサービス。内容はパン3種類とオレンジジュース+紅茶/コーヒー)。前日に買ったスコーンとキドニーパイも朝から食べて、まだ暗いのにキャブでノッティングヒルにある
ポートベローのアンティークマーケットへ駆けつけました。

ここは朝5時半から土・日にやっているメジャーなマーケットです。地下鉄だとノッティングヒルゲートで降ります。ここは10m位の幅の道の両側に店とストール(=屋台)がずーっと続いていました(500m位)。アンティークの屋台が終わると、野菜や花を扱った屋台が続いていて、この野菜や花を扱っているあたりが、まさに「ノッティングヒルの恋人」の舞台になった場所なのです。映画の成功以来観光客が押しかけているようですが、落ち着いた街で、おしゃれな街ではないです。おしゃれさを期待して行くと拍子抜けすると思います。

着いたのは7時ちょっと前でしたが、まだ暗いのに半分位の店がやってました。夜が明けて来るとストールも始まり人も増えて活気が出てきました。
僕は早速バーモンジーで買ったナイフとフォークに合うスプーンを捜してカトラリーを扱う店を何軒も見て回りましたが、無く。人の良さそうなおばちゃんの店でサンプル用に持ってきたフォークを見せて
「これに合うスプーンを捜しているんだけど、ありませんか?」と聞くと
「さっきも見に来た人でしょう?他の店になかった?」無かったと言うと
「そう。うちにも無いわよ、そのフォークはモダンデザインだからね」
「え!?」って顔を僕がしていると
「ここにあるのはアンティーク。Youが持っているのはモダン」と手元のスプーンを取り上げ、スターリングシルバー(純銀)であり作成した年を証明するホールマーク(年代と産地を示す2mm角位の小さな刻印)を指で指して微笑みました。
なる程。確かに僕が買ったのにはホールマークは付いていないし、ナイフとフォークがセットで3,000円位だけど、おばちゃんの店のスプーンは6本で20,000円でした。
三越で新品を買ったら1本10,000〜20,000円だからこれでも驚く程安いのですが西洋アンティークは奥が深そうです、勉強になりました。その後悔しくて日本でホールマークブックというホールマークが何年を示すかを調べる小さなハンドブックを買ってしまいました。アンティークに作った年を示す印がついているのですからイギリスのアンティークは安心して買えます。

結局ポートベローで買ったのは、
四角い縦長のガラスの香水びんを透かし彫り風の銀細工で覆ったパヒュームボトル£18/3,600円(画像左。高さは10cm位)、
銀張りのゴージャスな感じの高さ10cm位のシュガーポットとミルクポットのセット£45/9,000円、以上2点。合計12,600円でした。
今回の旅で買ったアンティークは、合計7点/32,700円。安物のブランド品のバッグ並の金額で一生持ってられる物が買えるなんて、安いものです。
卓弥君は銀の小さな携帯型灰皿をお父さんへのおみやげとして買ってました。もうこれで最後の最後。後ろ髪を引かれる思いで、9時過ぎにホテルへ帰りました。出発日の朝暗いうちから目一杯行動できて大満足でした。

ホテルでパッキングをして、HISのバスでヒースローへ。
帰りにやけにスーツケースが重いなーと思いつつヴァージンにチェックインしたら、制限キロ数(20キロ)をはるかに越える36キロに達していて、HISのツアコンちゃんを交えて10分位やりとりして、なんとか6キロオーバーにまけてもらいました。なぜかと言うと、バゲージチケットはオーバーしたキロ当たり£24=4,800円だと言うのです。通常25キロ(5キロオーバー)までは大目にみてくれるんだそうですが、結局まけてもらって6キロオーバー。144ポンドなんと28,800円の超過料金をとられてしまいました。

大ショックでしたが良い勉強になりました。家に帰ってから体重計をひっぱりだしてスーツケースの中身をチェックしたところ、なんとガイドブック関係だけで8キロもあったのです、機内持ち込み手荷物にいれとけばよかったと思ってもあとの祭り。

ちなみに、36kgは15cmの段差を男の片腕で落ち上げられない位の重さです。皆さんもくれぐれも用心して下さい。

ヴァージンはヒースローでヴァージン専用の待合い室から出てトイレに行こうとしたら、パスポートを預けて欲しいとか言って、口調は丁寧だったけど人の大切なパスポートを係員のポケットに入れるし、機内持ち込み手荷物は5kgまでですと待合い室でアナウンスをするし、待合い室に入る時や機内に入る時にまでパスポートの提示を求めます。どうもヒースローのルールが厳しいようなのです。その後ニースからの乗り継ぎでロンドン発のANAに乗った時もそうでした。
帰りは13時発(ヒースローの第三ターミナルの免税品コーナーにはハロッズがありました)、成田19日(日)10時着。11時間のフライトでした。
帰りの朝食はお粥が出ました。お粥は機内食用の横長のアルミの容器にお粥が入っていて、別の容器に玉子焼き・さばの燻製・梅干しが入っている、いたってシンプルな内容。パンに飽き飽きしていたのでペロッと食べてしまいました。

成田到着後、卓弥君とは京成の地下駅でお別れ。彼は習志野の友人宅に預けた荷物(彼は東京に出張で来てそのままロンパリに出発していたので、スーツ等の出張荷物を預けていた)を取りに寄ってから京都に帰りました。後で聞いたら、パリで買ったワインを友人宅で1本空けてしまったそうです。

その後、私はスカイライナーで帰ったのですが、日暮里で降りるところ上野まで寝過ごしてしまい、スーツケースもやたら重いので結局江古田までタクシーで帰りました。

さてさて、超現実的な旅費の合計ですが、

ツアー料金              144,000円
現地のこずかい            123,400円(みやげ代含む)
ヴァージンに払った超過料金     28,400円(これが計算外で大ショック)
帰りの機内で買ったエルメスのスカーフ代 28,000円
ラルフローレンの香水           4,000円
   合   計           327,800円
超過料金さえ無ければジャスト30万円でした。実際はタクシー代や記録忘れの出費を加えると31万円位にはなっていると思います。31万円から超過料金とブランド品(エルメスのスカーフとラルフローレンの香水)を除くと24.96万円、さらにアンティーク購入費32,700円を引くと21.69万円ですから、高級レストランのディナーやミュージカル観劇をしても、びっくりする程の額にはなりませんでした。


あとがき(98年2月記)

今回のロンパリツアーは僕にとって初めてのヨーロッパでした。初めて訪れた場所がロンドン&パリというのはベストなチョイスだったと今でも思っています。
パリはセーヌの両岸の景観が特に美しく、さすが「世界遺産」に登録されるだけのことはあります。パリは歴史的な大都会という印象が強く、生きた街としての魅力が僕にはあまり感じられませんでした。しかし、美しい景観は見るだけで価値が充分あると思います。
その後訪れた南仏の魅力とパリの魅力はまったく違い、しかもパリはフランスでは唯一の大都会である事が良くわかりました。
フランスの都市は日本のように全国ミニ東京のような状態ではなく、フランスの第二の都市であるマルセイユはパリと似た街並みも一部ありますが港町としての魅力があり、ニースやカンヌはイタリアの影響を受けた黄色やオレンジ色の壁の古いアパートが並ぶリゾートとしての魅力、またフランスの田舎、南仏のモンペリエ、アルル、アヴィニョンには茶色がかったオレンジ色の瓦の家並みが続き、ローマ帝国時代の遺跡も残っていて魅力がありました。僕にはフランスの地方の方が魅力的でした。

しかし、パリで飲むワインは不思議な位おいしく、レストランの素晴らしい雰囲気は他の都市では味わえないものです。オルセーの魅力的な芸術品もあり、ぜひまた行ってみたい街です。今度行く時はプラタナスやマロニエの葉が青々とした季節に行きたいと思っています。パリ郊外のフィンテンブロー宮殿やディズニーランド・パリにも行ってみたいと思っています。

ロンドンは僕にとってはパリを上回る魅力があり、世界を代表する他の大都市(パリ、ニューヨーク、L.A.)よりも僕には魅力的でした(バンコク、香港、ソウル、台北等のアジアの都市とはジャンルが違うのでここでは比較しません)。
ロンドンに行ってから1年以上経った今でもロンドンで知った洋食器、銀製品、紅茶、ガーデニングの魅力は薄れる事はありませんでした。特に洋食器、銀製品はロンドンに行く前には全く興味がなかったので大きな影響を受けました。この1年はそれまで買っていた和骨董を全く買わなくなってしまいました(魅力を感じなくなった訳ではなく、予算の問題ですが......)。イギリスのアンティークマーケットは僕が過去行った10数カ国20数都市の中では規模・質共に文句無く1番の内容でした。フリーマーケットも同様です。

僕はイギリスのスタイルが単に好きになったのだと自己分析をしています。僕はもともと骨董好きなので西洋アンティークにすんなり入り込む事ができたのです。古い物好きという点ではイギリス人と同じ価値観を僕はたまたま持っていたのです。
僕は骨董は飾るのではなく使う主義なので、良いカップ&ソーサーと良いシルバーのカトラリー(フォーク&スプーン)が手に入ったら必然的に紅茶を飲むようになり、結局イギリス風のスタイルを取り入れるようになったのです。

次回イギリスに行ったら、ロンドンはもとより車を借りて郊外にも行きたいと思っています。特に美しいイングランドの田舎の風景が有名なコッツウォルズ地方や小さな湖が点在するスコットランドの湖水地方には是非行ってみたいと思います。あの緑のうねるような大地には言いしれぬ魅力があります。

長い日記を読んで下さった方に心よりお礼をします。
ありがとうございました。


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