『実践社会調査入門』の訂正,およびより正確な理解のための補足説明


・第1刷~6刷(157〜8頁)「順位尺度」→「順序尺度」[第7刷で修正予定]
 恥ずかしながら,長い間気がつかなかったのですが,本書では,「順序尺度」とすべきところを,「順位尺度」と誤って表記していました.「順序尺度」が正しい表現です.
・第1刷(163〜4頁)分散分析のF値の説明について [第2刷では修正済み]
 本書では,「F=級間平方和/級内平方和」となっていますが,正しくは「F=級間平均平方/級内平均平方」です.級間平均平方は級間平方和をJ-1で割ることで求められ,級内平均平方は級内平方和をN-Jで割ることによって求められます(Jはカテゴリーの数,Nはサンプル数).J-1とか,N-Jというのは自由度を示していて,χ2値を求めるときに説明したのと同じように,カテゴリーの数やサンプル数による影響を調整するための計算です.詳しくはボーンシュテット・ノーキ(1990)の183〜4頁,ないし片瀬一男編,『社会統計学』(放送大学教育振興会,2007)154頁をご参照ください.

・第1刷(154〜5頁)サンプリングの方法について [第2刷では修正済み]
 ここで紹介されているサンプリングの方法については,若干誤解を招く部分がありました.まず,「簡便な方法」として言及されている非該当者の近傍の該当者を抽出するというやり方は,必ずしも正しいとはされていません.
 正式には非該当者は飛ばして抽出を続けていくことになります.この場合、多めに抽出してそこからランダムに正規サンプルを抽出する方法と、計画通りのサンプル数を抽出する方法の2つがあります。
 ここで「多めに抽出するやり方をお勧め」するといっているのは,この方法をとると、正規のサンプル以外に予備サンプルを確保することが可能になるためです.予備サンプルは、正規サンプルが転居、死亡など「非該当」であったときに、これに代えて使用されるサンプルです。ただし、この予備サンプルの使用については,いろいろと議論 があって,あくまでこの使用を認めないという考え方もあります.ここでは,転居などの場合,本来ならば抽出の段階で飛ばしていたはずなので,多めに抽出した分から順に補充していくというやり方を念頭に置いているわけです.

・第1刷(177頁)オッズ比の説明について [第2刷では修正済み]
 ここではオッズ比を「当該の変数が独立変数が1単位変わったときに,従属変数が何単位変わるかを示す指標」と説明していますが,正確には「独立変数1単位の変化に対して,従属変数の起こりやすさが何倍変化するかという指標」です.

・(143頁)表6−3の有意差検定結果について [第3刷では修正済み]
 表6−3の下の段のクロス表に関する検定結果ですが,実際に計算すると,5%水準ならば有意差があるという結果になります.したがって,正確には1%水準で考えると,有意差がなくなったということです.例として示すには,あまり明快なデータではありませんでした.なかなか適当なデータが見つからないということで,ご容赦をいただければ幸いです.

・(134頁)線形性と回帰分析について
 本書では,回帰分析は線形の関係を前提していると述べていますが,線形ではない関係を扱う回帰分析も存在しないわけではありません.この点はより進んだ段階で学んでいただければ幸いです.

・(171頁)「分散」という言葉の使い方について
 本書のこの部分では,決定係数の説明に「分散」という言葉を使っていますが,正確には「全平方和にしめる回帰平方和の比率」であって,「分散」という表現は実は適切ではありません.分散とは厳密には平方和を平均化したものだからです.このように本書では,「分散」という言葉を単に「散らばり具合」という意味で使っている部分が多々あります.正確な表現をとるとかえってわかりにくかったり,むずかしい説明を付加しなければならない場合があるからです.より進んだ段階へと学習を進める方は,この点にご注意ください.