社会学1(中央大学)講義要目
第1講 社会学とは何か――その歴史と特色
社会学誕生の前史と背景
・前近代の共同体の時代から、近代の市場交換の時代へ
・神の意志と法の精神による統治の時代から、それが動揺する時代へ
・政治学における動揺=啓蒙思想と社会契約説──ホッブス,ロック,ルソー
・アダム・スミスの『国富論』と経済学の誕生――リカード,マルサスなどの古典派経済学
・市場にもとづく自由競争の秩序=「神の見えざる手」と社会ダーウィニズムの成立
・古典派経済学と社会ダーウィニズムへの批判としてのマルクスとマルクス主義社会科学
・近代資本主義=市場と市民社会の成立による神=国家=法からの経済と社会の自立化
社会学の誕生
・共同体と国家を中心とした社会から,市場と交易を中心とした社会への変化
・ホッブス,ロック,ルソーなどの啓蒙思想による政治学の再編
・「万民の万民に対する闘争」から社会契約による国家への権力の委任へ
・アメリカ独立戦争の理論的根拠となったロックの市民政府論=抵抗権──国家から独立した社会=市民的秩序の自覚
・経済学の生誕とそれに続く社会学の誕生
・アダム・スミスに始まる古典派経済学――「神の見えざる手」
・市場という法や国家から独立した経済的秩序の成立→経済学の生誕
・フランス革命の混乱とサン・シモン→コント
・神=法にも,効用=経済にも従わないマスの出現
・マスの内実としての労働者大衆の台頭
・国家(法)でも,市場(経済)でもない「社会の自律的秩序」への関心→社会学の成立
・マルクスとの微妙な距離感
社会学の特徴
・法現象を対象とし,法人格として抽象された人間だけを対象とする法学
・経済現象を対象とし,効用をもつ経済人として抽象された人間だけを対象にする経済学
・社会現象を対象とし,人間を人間としてトータルにそのものとして対象とする社会学
いくつかの問い
・人間が法を無視し、損得勘定を度外視して行動するのは、どんなときか
・法を守り、利益を追求するのもまた人間だとしたら、社会学の独自性はどこにあるのか
・そんな社会学はどんな方法で研究できるか
・社会学が何でもありで、よくわからないと言われるのはなぜか
社会学の方法
・家族,ジェンダー,エスニシティ,差別,意識,感情,スティグマ,文化……
・普通の人が人間や社会を観察する姿勢と何ら変わらない社会学の方法
・視察,観察,聞き取り調査(「フィールドワーク」)という基本的な方法(人類学)
・文書化されたデータの分析という方法(歴史学)
第2講 人物でたどる社会学の展開
社会学の位置
・資本主義の成立と啓蒙思想,社会ダーウィニズム
・労働者大衆の台頭と社会主義による批判,マルクス主義
・労働者大衆を対象としつつも,マルクスとは距離を取る社会学の位置
社会学の敵手としてのマルクスとマルクス主義
・マルクス主義社会科学者としてのマルクス
・経済学者としてのマルクスと社会学者としてのマルクス──経済学を批判する社会学的な視点と史的唯物論という独自の貢献
・マルクスの経済学への批判としての社会学の展開
・現代社会学の展開とマルクスの社会学が持つ可能性
社会学が批判したマルクス主義の諸テーゼ
・経済決定論としての史的唯物論──歴史は究極的に経済的要因(生産力と生産関係の矛盾)によって決まる
・土台と上部構造──存在が意識を規定する
・階級闘争と暴力革命──共産党によるプロレタリアート独裁
・マルクスの社会学――生きて活動する人間の社会的関係の生産と再生産
いくつかの問い
・マルクスのそれぞれの主張に対抗するとき、どんな議論が出てくると思うか?
・マルクスの経済決定論に対しては
・存在が意識を規定するに対しては
・階級闘争と暴力革命に対しては
マルクスと3人の社会学者
・マルクスを認めたうえで,社会学の独自性を求めたM.ヴェ―バー──官僚制=政治行政的な制度と「思念された意味」への注目
・マルクス主義を批判しながらも,意外とマルクスに近いE.デュルケム──社会の共同性,集合性,構造への注目
・マルクスとは異なる方向から社会学の独自性を求めたG.ジンメル──社会そのものとしての心的相互作用とその形式への注目
3人の巨人とその末裔
・ヴェ-バー→パーソンズの社会システム論,シュッツの現象学的社会学
・デュルケム→フランス構造主義の展開,マートンから計量社会学へ
・ジンメル→シカゴ学派都市社会学の社会過程論,ミードから象徴的相互作用論,ゴフマンの社会学へ
第3講 M.ヴェーバーの社会学 前編
ヴェーバー社会学のライト・モチーフ
・「合理化」=「近代」の宿命の探究
・「なぜ、西欧においてのみ、合理的な資本主義が成立しえたのか?」
・解答としてのヴェーバーの宗教への注目
ヴェーバーの宗教社会学
・ヴェーバーの『宗教社会学論集』(「プロ倫」,「諸教派」,「ヒンズー教と仏教」,「儒教と道教」,「古代ユダヤ
教」)
・『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
・教科書的通説=カルバンが利殖を認めた?
・新教徒の多い地域に著しい資本主義的な経済発展
・資本主義に適合しない農民たちの生活様式
・近代資本主義の絶えざる合理化に適合する生活様式(Lebensführung)の形成
・カルバンの予定説=「神の器」としての世俗内禁欲→絶えざる利殖への専心
・プロテスタンティズムの倫理から資本主義の精神へ
いくつかの問い
・われわれはどこで資本主義の精神を身につけているのか?
・ヴェーバーが宗教を通してとらえようとした社会学的な側面とは何か?
・資本主義の精神はどんな社会をもたらすか?
ヴェーバーの理解社会学と宿命としての近代
・学校と受験勉強による資本主義精神の植え付け
・行為の主観的意味の理解による説明←→デュルケムの社会学
・近代資本主義成立の主体的条件の解明←→マルクス
・ヴェーバーの「近代」認識=合理化(天職義務による専門人化と官僚制化)
・絶えざる合理化は近代の宿命←→マルクス
・『プロ倫』の有名な最後の一節=「精神のない専門人、心情のない享楽人……」
・絶えざる形式合理化(官僚制)の過程←→実質合理性
・「宿命として甘受し、専門人として天職に生きる」――全き近代人としてのヴェーバー
・ヴェーバーの処方箋→職業としての学問,政治,カリスマ
第4講 M.ヴェーバーの社会学 後編
ヴェ―バーの方法と概念
・ヴェーバーの方法論──価値自由と理念型
・社会学の基礎概念──行為の諸類型、支配の諸類型、形式合理性と実質合理性
・ペシミスティックなヴェーバーの政治と展望──カリスマへの期待
ヴェ―バーの社会科学方法論
・「社会科学および社会政策における認識の『客観性』」
・「価値関係づけ」における論争=「神々の争い」
・「価値関係づけ」を明示した上での「価値自由」な部分での論争
・特定の「価値関係づけ」に整合的な理論的モデル=「理念型」の構成による検討
・「理念型」構成による諸手段の提示と結果の予測のみに禁欲(『職業としての学問』)
理念型としての基礎概念
・理解社会学的アプローチにもとづく概念構成
・「支配の諸類型」――「伝統的支配」,「合法的支配」,「カリスマ的支配」
・合理的行為の3類型――「伝統的行為」,「目的合理的行為」,「価値合理的行為」,(「感情的行為」)
・前近代から近代への歴史的展開を題材とした理念型=概念の構成
・「カリスマ的支配」と「価値合理的行為」の変革期における非日常的な力(←『職業としての政治』,『宗教社会学論
集』)
・官僚制と近代における「形式合理性」と「実質合理性」への着目
ヴェーバーとマルクス──社会変革の展望をめぐって
・近代=資本主義突破の二つの道──宿命ととらえたヴェーバーと歴史の所産ととらえたマルクス
・マルクスの道=プロレタリアート独裁から社会主義へ(←→現実の社会主義国)
・ヴェーバーの道=カリスマへの期待とやがて日常化せざるをえないカリスマへの冷徹な認識
・カリスマ的支配の日常化としての「合法的支配」と「目的合理的行為」
・「鉄の」官僚制における「形式合理性」への堕落傾向(『社会主義』)とビスマルクの負の遺産
・ヴェーバーの展望――「行動する議会」(「新秩序ドイツの議会と政府」)
いくつかの問い
・ヴェーバーとマルクスの違いはどこにあるか?
・マルクスとは異なるヴェーバーの視点の特質はどこにあるか?
・ヴェーバーに見る社会学の特質はどこにあるか?
ヴェーバーから学ぶ社会学のエッセンス
・法的でも,経済的でもない,人々の主観的な意味を含んだ社会的な側面への着目
・歴史の第一義的な動力としての「経済」にたいする主観的な意味を含んだ「社会」の力
・経済的,法的な制度との関連で社会的側面の限定された意義に着目する視点
・行政「官僚制」などの「合法的支配」にたいする「カリスマ」や「行動する議会」の力
第5講 E.デュルケムの社会学
デュルケム社会学の基底
・社会は外的に実在するという考え方→方法的集合主義
・新カント派の社会哲学の影響
・デュルケムにおける個人と社会──マルクスとの意外な共通点
デュルケムの社会学方法論――『社会学的方法の規準』
・「社会的事実」への着目
・「もっとも基本的な規準、それは、社会的事実を物のように考察することである」
・「それらは、行動、思考および感覚の諸様式から成っていて、個人にたいしては外在し、かつ個人のうえにいやおうなく
影響を課することのできる一種の強制力をもっている」
・「物のように考察すること」の意味──外的な客観的な指標による把握
『自殺論』のデュルケム
・ヨーロッパ諸国の自殺率統計の提示(←→『プロ倫』)
→ 社会集団によって異なり、短期的には不変な自殺率の値←社会的事実
・自殺の3つの社会的タイプへの区分
・「自己本位的自殺」←共同性の弛緩,宗教、家族、政治による自殺への免疫作用
・「集団本位的自殺」←共同性の発露=「未開」民族における義務的な自殺
・「アノミー的自殺」←無規制状態,激変期における自殺率の上昇
・自己本位的自殺とアノミー的自殺のよくわからない違い→デュルケム社会学の真髄
デュルケム社会学の原点――『宗教生活の原初形態』
・デュルケムの宗教社会学←→ヴェーバーの宗教社会学
・宗教の原初的な形態としての「トーテミズム」への着目
・「集合表象」としての個々のトーテム
・社会集団――集合表象――集合意識
・人間社会の普遍的な共同性への関心とその論理ならびに発現形態への着目
いくつかの問い
・アノミー的自殺と自己本位的自殺の違いはどこにあるか?
・マルクスとデュルケムの意外な共通点とはどこにあるか?
デュルケムと社会学
・「アノミー」概念の意義=共同性の喪失(近代の根本的な病理)
・個人は本来社会と統合されるべきいう信念=マルクスの共産主義
・計量社会学などが陥りがちな客観主義の源流
・フランス構造主義の源流――レヴィストロース,アルチュセール
第6講 G.ジンメルの社会学
ジンメルの「形式社会学」
・官僚制や制度との対比で生活様式や行為の理解という側面から社会を語ったヴェ-バー
・自殺率などの統計数値やトーテム記号などの集合表象から社会を語ったデュルケム
・人と人とのコミュニケーションから社会を語る社会学の始祖としてのジンメル
・特殊科学としての社会学←→コント、スペンサーなどの百科全書的総合社会学
・形式と内容の区別――「内容」に関する他の社会科学と「形式」を問題にする社会学
・上位と下位、競争と闘争、社会圏などの社会関係の形式への着目とその後の展開
「心的相互作用」と「社会化の形式」
・「ふと目と目をかわしたときに社会が成立する」――心的な相互作用としての社会関係
・心的相互作用における「社会化」の形式への着目
・制度やシステムや構造ではなく、人と人との相互作用に着目
・しかも、その「形式」を重視――なにゆえ「形式」なのか?
・相互作用の形式から、社会の形式への展開(→ミードの社会学)
ジンメル社会学の展開――シカゴ学派のプラグマティズムとG.H.ミード
・J.デューイのプラグマティズムと「実験学校」の設置
・シカゴ学派の都市社会学――パークの「実験室としての都市」
・G.H.ミード『精神・自我・社会』
・シカゴ学派都市社会学の調査方法への着目――身振り手振りによる相互作用と相互理解
・「重要な他者」との相互作用→ごっこ遊びと役割取得→「一般化された他者」への展開
・動作や言語(「形式」)を通した相手の内面(「心的」)の取得=コミュニケーション
・ミードの描いた理想社会――高度な他者理解によるシステムの作動
・物質と精神,環境と主体,社会と個人の二元論の実践的克服
いくつかの問い
・ジンメル社会学の他の社会学の違いはどこにあるか?
・ジンメル社会学と他の社会学はどう関係するか、しないか?
・ジンメルはなぜ「形式」と言ったのか?
ミクロ社会学としての展開
・シンボリック相互作用論
・現象学的社会学
・エスノメソドロジー
・ゴフマンの相互行為論
・いわゆるミクロ社会学としての継承=発展と矮小化──ミクロとマクロはどうつながるのか
第7講 K.マルクスの社会学 前編
社会学とマルクス主義
・マルクス理解の蹉跌――経済決定論,時代遅れ,暴力革命,ソビエト連邦の崩壊
・マルクスの予言は外れたが,マルクスがその仕組みを明らかにした資本主義は続いていること
・現代社会理解の鍵,マルクスを前提とした研究の理解
社会学とマルクスの社会科学
・抽象的に社会を認識したがる社会学とその物質的基盤に着目するマルクスの視点
・行為と労働――自然との関係、社会をなして自然に働きかける人間
・社会関係と生産関係――土地所有、生産手段、生産力
・上部構造と土台――「経済」の規定性、具体的人間の生活の生産と再生産の重視
・非歴史的な理論構成と史的唯物論――歴史変動の理論としての生産力と生産関係の矛盾
マルクスが『資本論』で問題にしたこと
・つねに拡大してやまない近代の謎
・ヴェ―バーやデュルケムが決して問題にしなかったこと=近代経済学の前提
・古典派経済学(スミス、リカード)への社会学的批判としての『資本論』
・古典派経済学の前提=等価交換、自由競争、神の見えざる手
・古典派経済学がいうほどに対等とは思えない現実
『資本論』における商品の分析
・商品の等価交換という最も単純な形態の分析
・1反の布地と1着の着物の交換――「布地」と「着物」が等価とはどういうことか
・「布地」のもつ本来の価値と「着物」のもつ本来の価値は等価ではありえない→使用価値
・等価とは,それぞれの具体的な「使用価値」ではなく,「交換価値」が等価なだけ
・古典派経済学の説明=交換価値は人間労働の産物という共通性によって測定/了解可能となる(労働価値説)
・現実的具体的にはそれぞれを必要とする異なった要求をもつ人間の出会いが必要
・経済的な現象の背後に潜む社会的な関係への着目=マルクスの社会学
資本の自己増殖という謎
・市場交換が本当に対等ならば,富はどこから生まれるのか
・商品の等価交換をいくら繰り返しても、全体としての価値の総量は決して増加しない
いくつかの問い
・等価交換の繰り返しの中から、どうやったら価値が生まれるのか?
・等価交換で対等なのに、なぜ格差が生まれるのか?
資本の自己増殖という謎
・資本の自己増殖はいかにして可能になるのか
・労働力という特異な商品への着目
第8講 K.マルクスの社会学 後編
労働力という特異な商品
・価値はなにゆえ増殖するのか――「労働力」という特異な商品の秘密
・消費(使用)されることによって、価値を生み出す特異な商品の交換過程への混入
・「労働力」一般を購入した資本家が、「労働」をさせることで生み出される価値
・「労働力」の価格(賃金)よりもつねに多くの価値を生産する「労働」
・「労働」によって生産される価値はすべて資本家の手に落ちる=搾取、不払い労働
・「労働力」商品のこの特異な性格を見落した古典派経済学の陥穽→経済学批判
・等価交換によって手に入れたものはどう使おうが買い手の自由という自由主義が生み出す不平等
商品の物神的な性格
・本来は商品の使用価値のために生産するのが人間の普通の営み
・ところが,資本主義の市場経済は,他人の使用価値を見込み生産する仕組み
・そうすると,生産者=資本家の生産への動機づけは,資本の増殖=交換価値の獲得でしかなくなること
・利子も地代も株式もすべてこれを前提にして組み立てられてしまうこと
・資本の自己増殖が至上命令になってしまう資本主義的生産様式
・たとえ人を殺してでも,資本の自己増殖を実現してしまう拝金主義→貨幣の物神化
マルクスが構想した未来社会像
・利潤=交換価値にたよることでしか生産の動機づけを持ちえない資本家
・他人の使用価値の実現を自らの喜びとすることのできる人間の能力
・直接に「社会」化された人間による「社会」主義社会
・原始共産制のより拡張した形態での復活
・人はその能力に応じて働き,必要に応じて取る共産主義的な社会
・ミードの理想社会像とよく似た展望
いくつかの問い
・資本の自己増殖を維持するためには何が必要か?
・資本の耐えざる自己増殖は最終的に何をもたらすか?
資本蓄積メカニズムと「近代の宿命」
・人間労働の現実的具体的側面を見落すと貨幣が貨幣を生み出していくように「見える」(G→W+L→G’/G→G’=
資本の自己増殖)
・他人の使用価値を生産する分業と市場交換、私的所有を前提とした自由競争=資本主義
・資本が1循環することで何らかの増加分を生み出さなければ、再生産不可能な仕組み
・限りない新製品の開発、少しずつモデルチェンジする浪費、限りある資源の蕩尽
第9講 アメリカ社会学の誕生と展開
プラグマティズムとシカゴ学派の社会学
・サムナーの「モーレス」,クーリーの「第一次集団」
・シカゴ大学社会学部の成立
・シカゴ学派の形成──スモール,タマス,パーク,バージェス,ワース
・プラグマティズムの社会学──ミードとデューイ
・デュルケムとジンメルの影響──シカゴ学派による調査実践
・ジンメルの社会過程論とデュルケムの客観主義
シカゴからコロンビアへの展開
・シカゴモノグラフの成果と限界
・コロンビアにおけるサーベイ調査の発展──ラザースフェルドとマートン
・『アメリカ兵』における達成と政策科学への道
・シカゴとコロンビアの結婚──科学としての社会調査と政策科学としての社会学
・社会学における社会調査の確立とアメリカンサイエンスの成立
シカゴからハーバードへの展開
・パーソンズとハーバードの社会学
・パーソンズとストッファー──理論的な体系化と実践的な社会調査の統一
・パーソンズの社会学──ミクロな社会的行為論とマクロな社会システム論の統合
・通常科学としての社会学の発展
いくつかの問い
・ヨーロッパの社会学とアメリカの社会学はどこが違うか?
・あなたはどちらの社会学が好きか?
アメリカ社会学の達成
・科学的な社会調査にもとづく社会学への展開
・実証的な研究にもとづく政策科学としての展開
・支配的な社会秩序を前提とした社会学に対する批判
・学生反乱と反体制の時代におけるパーソンズとラザースフェルドへの批判
第10講 T.パーソンズの社会学──社会学の伝統的発想
パーソンズの構造=機能主義と社会システム論
・パーソンズの一般的な評価──抽象的,難解,体系的,静態的
・構造=機能主義者としてのパーソンズ
・主意主義的行為理論および行為の一般理論から社会システム論へ
・機能的要件に注目したAGIL図式──適応,目的達成,統合,潜在的パタン維持と緊張処理
秩序問題とパーソンズ
・パーソンズ社会学の原点──社会秩序はいかにして可能か
・ダブルコンティンジェンシーにたいする役割と規範の内面化による対処
・パーソナリティシステムへの社会システムの浸透
・社会の内面化による秩序問題の解決=古典的な社会学の発想
パーソンズの「社会」観
・パーソンズがデュルケムから引き継いだもの
・デュルケムとマルクスの共通点=社会と個人との本来的な統一の観念
・ジンメル,ミード,シカゴ学派との共通点
・パーソナリティシステムの相互作用体系としての社会システムの制度化への信頼
いくつかの問い
・パーソンズの壮大な理論体系をどう評価するか?
・パーソンズの理論にはどのようなな弱点があると思うか?
・パーソンズの理論はどのような時代状況を反映していたと思うか?
パーソンズ理論への批判
・結果としての制度,構造への信頼と固定視
・制度的な社会を前提とする社会学の通常科学化における静態的な保守性
・「重症の理論病患者」としての誇大理論の難解さ
・アメリカの覇権と黄金時代への学生反乱の時代における批判の噴出
・パーソンズ批判から現代社会学へ=社会にかんする古典的な統一感のゆらぎ