慢性腸炎はどのように治療したら良いか?



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文献一覧表
Chronic Enteropathies: How Should I Treat Them?
慢性腸疾患はどのように治療したらよいか?
ACVIM 2003
Kenneth W. Simpson, BVM&S, PhD, MRCVS, DipACVIM, DipECVIM、Ithaca, NY
訳:竹内 和義
特発性炎症性腸疾患の概要
 特発性炎症性腸疾患とは、消化管粘膜に細胞浸潤が認められる異なったいくつかの腸疾患
の総称である。診断は消化管バイオプシーによる組織学的特徴および消化管の炎症の原因と
して知られている内部寄生虫や食物感受性の除外診断によって行われる。最も一般的な炎症
性細胞の浸潤は、リンパ球およびプラズマ細胞または好酸球である。好中球または肉芽腫性
の炎症が認められることはあまり多くない。


リンパ球・プラズマ細胞性腸炎
 リンパ球・プラズマ細胞性腸炎は犬および猫における炎症性腸疾患で最も一般的である。腸
の粘膜固有層に過剰にリンパ球・プラズマ細胞が集積する状態と定義されている。細胞集積
(浸潤)の程度は様々で、主観的に軽度・中等度・重度に分類されている。中等度から重度の
リンパ球・プラズマ細胞性腸炎はしばしば蛋白喪失性腸症を伴う。この病態の重度の症例が
バッセンジーで報告されている。炎症部位の範囲は様々で、十二指腸から小腸および大腸に
波及する。
臨床症状
 体重減少と嘔吐を伴う慢性の小腸性下痢が犬で最も多い臨床症状であるが、猫は嘔吐が最
も一般的な臨床症状である。嘔吐物にはしばしば胆汁が含まれる。猫ではしばしば毛球が含
まれる。その他の症状としては、食欲の変化、腹鳴、腹部不快感などがある。この病気の重傷
度は様々で、軽症例では間欠的な下痢から、重症例では激しい小腸性下痢、食欲不振、体重
減少が認められる。この疾患の重傷度は細胞浸潤の程度に比例すると考えられている。身体
検査所見では、正常から、腸間膜リンパ節腫大を伴う場合と伴わない場合の消化管の肥厚、
および重度の蛋白喪失性腸症がある場合には著明な体重減少、腹水、浮腫が認められる。
診断
 特発性リンパ球・プラズマ細胞性腸炎の診断は、全身性の寄生虫性、感染性、膵臓性また
は構造的原因などによる慢性下痢症の除外とバイオプシーによる消化管への過剰なリンパ
球・プラズマ細胞の浸潤を証明することによって確定される。
治療
 IBDの治療は一般的に、食事の変更、抗生物質および免疫抑制剤などによって行われる。
治療はこの疾患の重傷度によって左右される。軽度から中等度の消化管の炎症は食物過敏
症または食物不耐性が原因の場合と特発性小腸細菌過剰増殖の可能性が高い。

治療的食物療法試験
@高消化性で脂肪とグルテンを制限した食事
A単一の新奇蛋白源で作られた食事
B加水分解蛋白食

 などにより食物過敏症または食物不耐性があるかを明確にすることが出来る。反応は一般
的に2週間以内に認められる。

抗生物質反応性腸炎、小腸細菌過剰増殖にたいする治療試験
@21日間のタイロシン(10mg/kg PO TID)
Aメトロニダゾール(15mg/kg PO BID)
Bオキシテトラサイクリン(10-20mg/kg PO TID)
 
 が使用される。これらの治療に対して反応が認められない中等度から重度の炎症または低
蛋白血症が認められる症例では、多くの場合、治療反応を実現する目的で免疫抑制療法が
必要となる。プレドニゾロンの経口投与(1-2mg/kg PO BID)が第一選択薬となる。一般的
には免疫抑制量をはじめの2−3週間投与し、その後は2−3週間毎に50%ずつ減量してゆき、
隔日投与で2−3ヶ月継続投与する。もし治療反応が良好でなく、プレドニゾロンの副作用が
強い場合は、この処方にアザチオプリンを併用する。犬の場合には、アザチオプリンを毎
日5日間投与(2mg/kg PO SID)し、その後はプレドニゾロンと交互に隔日投与する。猫は犬に
比べアザチオプリンに対する感受性が高いため(0.3mg/kg PO SID)で投与するが、クロラムブ
シル(6mg/m2 PO PO EOD (@2mg/5.3kg cat)とプレドニゾロン(5mg PO /cat/day)のコンビネー
ション療法の方が効果的である。補助的なコバラミン:ビタミンB12  (1ml SC q 2-3wks)と葉酸
/コバラミン複合ビタミン剤を、血中コバラミン濃度が低地の場合には併用する必要がある。
メトロニダゾール(15mg/kg PO BID 10-14d then SID 10-14d)も、コルチコステロイドと併用する
ことで細菌の過剰増殖および免疫系(免疫調整作用?として)に対して効果が見込まれる。治
療の成功は臨床症状の軽減と血漿蛋白を指標とする。臨床症状改善状態が2−3ヶ月間得ら
れたら免疫抑制療法は徐々に減量することが出来る。もし臨床症状が再発したら毎日の投薬
療法を臨床症状が改善するまで継続し、その後再度徐々に投薬を減量させてゆく。これらの
療法に対して治療反応が悪いか、初期導入療法後に直ぐに症状が悪化する場合には、リンパ
腫を除外診断する必要がある。
予後
リンパ球・プラズマ細胞性腸炎の予後は様々で、病状の重傷度に依存する。多くの動物はグ
ルココルチコイドと食餌療法の長期療法が必要となる。


好酸球性腸炎
 好酸球性腸炎は腸の粘膜固有層に過剰の好酸球が浸潤(集積)した病態を特徴とする。こ
の病気は寄生虫または食物に対する免疫学的な反応(過敏反応)が原因と考えられている。
この病気はその他の胃腸系にも波及する可能性がある。
臨床症状
 嘔吐・体重減少を伴う慢性の小腸性下痢が特徴的臨床症状である。大腸性(腸炎症状)また
は嘔吐症状が優性の症例もまれにある。身体検査所見では、正常から局所性または広範性
の消化管の肥厚および著明な体重減少が認められる。
診断
 消化管バイオプシー検査。臨床病理学的異常として末梢血の好酸球増多症が認められるこ
ともある。肥満細胞腫、副腎皮質機能低下症、内部寄生虫症なども同様な臨床兆候を示すの
で除外診断が必要となる。好酸球増多症の程度は猫において著明で脾臓、肝臓、リンパ節お
よび骨髄への好酸球浸潤を伴う可能性がある。消化管からの蛋白漏出はリンパ球・プラズマ
細胞性腸炎に比較して少ない。
治療
 厳格な除去食に反応する動物もあるが、一般的にはプレドニゾロン療法(2mg/kg PO SID)が
必要である。犬の場合、臨床症状は1−2週間の内に改善し、プレドニゾロンの用量も徐々に
減量可能である。高消化性の単一新奇蛋白源または加水分解蛋白食の併用は効果的に臨
床症状の安定・維持の助けとなる。予防的な駆虫剤の投与(フェンベンダゾール(50mg/kg PO 
SID 3 days)も、好酸球性胃腸炎に関連性が認められている内蔵への幼虫の侵入を防ぐ意味
から正当性が認められている。猫の好酸球増多症候群は、免疫抑制療法剤や食事療法、駆
虫剤などに対しての反応は不良である。
予後
予後に関しては油断出来ず、再発がしばしば認められる。猫の好酸球増多症候群の予後は
あまり期待出来ない。


その他の炎症性腸疾患群
 好中球性または肉芽腫性炎症を主兆候とするその他の腸炎の報告は小動物領域ではあま
り多くない。これらの腸炎では、連鎖球菌、キャンピロバクター、エルシニア(腸内細菌科に属
するグラム陰性短桿菌で、代表菌種としてはペスト菌、仮性結核菌、腸炎エルシニアなどがあ
る)、ミコバクテリアおよびヒストプラズマのような真菌感染などが認められることがある。肉芽
腫性腸炎の場合には、感染原因物質を特定するために、消化管粘膜や消化管リンパ節およ
びその他の腹腔内臓器のバイオプー検査による特殊染色や培養検査等を実施する必要があ
る。血清学、胸部レントゲン検査、骨髄生検は全身性真菌感染症の助けになる。特発性肉芽
腫性または好中球性腸炎の予後は要注意もしくは不良である。

消化器型リンパ腫
 リンパ肉腫(LSA)とは、吸収不良を伴う腫瘍性のリンパ球が粘膜および粘膜下織に浸潤す
る病態と定義する。局所性リンパ肉腫では閉塞を伴うことがある。猫ではしばしば猫白血病ウ
イルスとの関連性が指摘されるが、猫の消化器型リンパ腫は普通FeLV陰性であり、犬の病因
も判明していない。猫のリンパ肉腫はリンパ球性またはリンパ芽球性で、リンパ球性は化学療
法によく反応する。リンパ球・プラズマ細胞性腸炎が希にLSAに発展することがある。

臨床症状
 体重減少、慢性小腸性下痢および進行性の食欲不振が一般的な消化器型リンパ肉腫の特
徴である。嘔吐も同様に認められる。身体検査では広範性または局所性の消化管の肥厚と腸
間膜リンパ節腫大を伴う場合と伴わない場合がある。消化管の穿孔が起こると急性の腹部痛
およびショックを呈する可能性がある。肝臓脾臓の腫大および全身性のリンパ節腫大が起こ
ることは希である。低蛋白血症の症状が明確に現れる。
診断
 犬および猫では中齢から老齢で最も発症率が高い。生化学的ルーチン検査によって、犬の
リンパ肉腫性蛋白喪失性腸炎がしばしば診断される。貧血はしばしば、正球性、正色素性、非
再生性または小球性、低色素性および好中球増加症が認められることがある。超音波検査は
消化管の肥厚と腸間膜リンパ節腫大を評価する場合に有効な手段となる。診断は、腫大した
消化管リンパ節または末梢リンパ節の針吸引またはバイオプシー検査によって腫瘍性リンパ
球が認められることで行われるが、消化管のバイオプシー検査によって確定される場合の方
がより頻度が高い。内視鏡によるバイオプシー検査では病変を発見出来ない場合があり、リン
パ球プラズマ細胞性腸炎と誤診されることがある。猫の消化器型リンパ腫では血清コバラミン
濃度はしばしば低地を示し、血清葉酸値も同時に低下することがある。
治療および予後
 犬は治療反応が悪い。猫のリンパ球性リンパ腫は、クロラムブシル(6mg/m2 PO PO EOD (@
2mg/5.3kg cat)とプレドニゾロン(5mg PO /cat/day).による治療によって劇的で永続的な治療
反応が見込める(平均17-20ヶ月)。補助療法的にコバラミン(1ml SC q 2-3wks)および葉酸と
ビタミンB群複合剤の投与を併用すべきである。リンパ芽球性リンパ腫はこれに比べ遙かに治
療反応が悪い。

リンパ管拡張症
 消化管リンパ管拡張症は粘膜内のリンパ管が異常に拡張した状態を指す。リンパ管拡張症
は局所性または全身性リンパ節の異常または門脈圧の亢進(たとえば右心不全、後大静脈閉
塞、肝疾患)の結果として起こる。リンパ管の異常はしばしば脂肪肉芽腫性炎症を伴い、この
炎症性変化は腸間膜上に小さな白い肉芽腫として肉眼的に確認出来る。リンパ管またはリン
パ節への腫瘍の浸潤によってもリンパ管拡張症は起こる。全身性のリンパ管の異常をリンパ
管造影によって明らかになる場合も(希に)ある。リンパ管の拡張は、タンパク質を豊富に含む
リンパ液が消化管に漏出し、長鎖脂肪酸の重度の吸収不良を引き起こす。ヨークシャーテリ
ア、ソフトコーテッド・ウイートンテリアおよびランドハウンドにおいて発症率が高いため、品種特
異性の家族性の疾患である可能性がある。
臨床症状
 消化管リンパ管拡張症は犬では非常に一般的であるが猫では希である。臨床症状は基本
的に消化管からの蛋白の喪失の程度に依存し、体重減少程度から慢性の下痢、腹水、浮腫
および乳び胸まで様々である。
診断
 多くの場合蛋白喪失性腸炎として現れ、内視鏡ではリンパ管の拡張が粘膜面に白い水疱状
に認められ、内視鏡によるバイオプシー検査が推奨される。開腹手術によるバイオプシー検査
は、術創の癒合が(低蛋白のため)悪いことを十分に注意して行う必要がある。
治療
リンパ管拡張症の原因は不明である場合が多い。治療は一般的に補助的または、対症療法
的になる。推奨される食餌療法はその他の小腸性下痢に対する方法と同様である。中鎖脂肪
酸(MCT オイル, ココナッツオイル 0.5-2ml/kg /day を食事に混ぜて)を食事に添加することに
より、吸収しやすいカロリー源となる。多くの場合プレドニゾロンの投与(1-2mg/kg PO BID)が
必要で、脂肪肉芽腫性炎症を軽減する作用がある。プレドニゾロンは緩解が得られたら効果
的な最低用量に徐々に減量して行く。補助的療法としてメトロニダゾールまたはタイロシンの投
与も可能である。
予後
 治療に対する反応は様々で、数年間症状が安定している症例もあるが、多くの場合は、突然
の低蛋白血症を引き起こす危険が常にある。
SMALL INTESTINAL BACTERIAL OVERGROWTH / ANTIBIOTIC RESPONSIVE 
ENTEROPATHY

小腸の細菌過剰増殖/抗生物質反応性腸炎

小腸の細菌過剰増殖(SIBO)=
                 小腸内での細菌の異常な増殖状態

健康な犬・猫の消化管内ミクロフローラ(消化管内細菌叢)
 人は、小腸内の液体/組織の総細菌数は5 (log10 cfu/ml or gram)以下で嫌気性菌数は4.5
(log10 cfu/ml or gram)以下である。連鎖球菌やブドウ球菌のようなグラム陽性好気性菌が優
性である。クロストリジウムやバクテロイドのような嫌気性菌は滅多に認められない。
食品細菌検査の定量単位 CFU/g (ml) とはどういう意味ですか? 
  Colony Forming Unit(コロニーフォーミングユニット) の略称で菌量の単位です。20CFU/
g または20CFU/ml とは1gまたは1ml中に菌が20個存在することを表しています
 人のこのような所見を健康な犬や猫に適用することは出来ない。健康犬および猫の小腸内
のミクロフローラに関する文献がこれまでに少なくとも24件ある。これらの研究の多くが、健康
な犬や猫の小腸内には多量の様々な細菌が生息していることを示している。犬の近位小腸の
総細菌数は0-9.43 (log10 cfu/ml or gram)、嫌気性菌は0 to 8.18 (log10 cfu/ml or gram)の範
囲にあった。同様に猫の十二指腸の総細菌数は2 to 8.3 (log10 cfu/ml or gram)、嫌気性菌は
2 to 8.05 (log10cfu/ml)の範囲にあった。犬および猫の一般的な好気性菌は、連鎖球菌属、ブ
ドウ球菌属、桿菌属、大腸菌、コリネバクテリウム属、エンテロバクター・クロアカエ(汚染腸内
菌)、緑膿菌属、パスツレラムルトシダ(動物パスツレラ症病原菌)などであった。クロストリジウ
ム属、ビフィドバクテリウム属、ユーバクテリウム属(真性細菌)バクテロイド属などが一般的な
嫌気性菌であった。ラクトバチルス属(乳酸桿菌)も同様に一般的であった。

犬および猫における小腸内細菌過剰増殖(SIBO)
小腸内細菌過剰増殖症候群は、小腸の細菌が過剰増殖することによって下痢や体重減少な
どの臨床症状を呈する疾患の総称である。この病名は同様な臨床症状を示す、抗生物質に
反応するような明確な細菌増殖が認められない症例にも用いられていた。
犬および猫の文献からの正常細菌叢から推測して、SIBOとは、細菌数が犬では> 9.43 (log10 
cfu/ml or gram) 、猫では > 8.3 (log10 cfu/ml or gram) または嫌気性菌数で犬では > 8.18 
(log10cfu/ml or gram) in dogs, 猫では> 8.05 (log10 cfu/ml or gram)と定義することが出来る。

SIBO以外で抗生物質療法によって改善が認められる疾患

@.潜在性病原体:ジアルジア、コクシジウム、サルモネラ、キャンピロバクター、腸管病原性大
腸菌?

A未知の病原体(例:ヘリコバクター属)

B内因性の細菌叢に対する宿主の感受性増強

  • .固有の細菌叢への免疫耐性能の減弱(崩壊) : たとえば、生まれながらにIL10ノック
    アウト(IL10産生能が無い)のマウスは細菌フリーであれば発症しないが、そうでないとI
    BDを発症する。同様に、正常細菌叢に対する耐性の消失または感受性の増強による、
    異常な細菌叢に対する有害な作用は抗生物質療法に反応するバッセンジー犬の免疫
    増殖性小腸疾患によって説明出来るかもしれない。
  • (腸管)粘膜内のIgA欠乏による内因性細菌叢に対する感受性の増強は、ジャーマンシェ
    パードの慢性下痢症に対する抗生物質療法への(良好な)反応性によって説明可能で
    ある。
  • 障害と修復のバランスの不良な変化 : たとえばEPI(好酸球性腸炎)のような、退行性
    変化の進行による粘膜内酵素産生能の低下

特発性のSIBOは犬や猫に起こるか?
 1983年にBattらがジャーマンシェパードの小腸細菌過剰増殖について報告したが、このSIBO
の明確な原因となる潜在疾患を見いだすことは出来なかった。この研究では下痢を呈したジャ
ーマンシェパードと6頭の健康な犬の小腸の細菌数の比較が行われた。この研究では、犬の
多くのSIBOは下痢症状に伴い(小腸内)細菌数が>5 (log10 cfu/ml)に増殖することを示した。
残念なことに犬から採取された消化管液は様々に希釈され、あるいは培養前に凍結されてい
た。罹患犬の異常な臨床症状やそれに伴う粘膜の変性に対して抗生物質療法が反応すること
は、これらの下痢において(消化管内の)細菌叢が重要な要素になっていることを示唆する。し
かしながら、過剰な細菌の増殖によって臨床症状が現れるのか、腸炎を起こすと消化管が正
常細菌叢に対してダメージ受けやすくなるためなのかは、明確にされていない。健康な猫およ
び犬の細菌数は(Battらの報告よりも)明らかに高いことが証明されているにもかかわらず、
(Battらの)あとに続く研究者達は、Battらの細菌数の基準値(カットオフライン)を利用してき
た。(訳者注:つまり、Battらの健康犬猫の細菌数の基準値は低すぎた!ということ)
ある研究報告により、健康なGSDのグループにおいて十二指腸の細菌数がSIBOの基準であ
る>5 (log10 cfu/ml)を示したことにより、現実的な犬の特発性SIBOに対してさらなる混乱が発
生した。この著者は明確に全ての犬は臨床的に正常であり、現場にいた誰もが、これらの犬
が消化管の疾患を持っているようには見えなかったと宣言した。臨床症状が認められないこと
は、体重減少やコバラミン・葉酸濃度の変化を伴う典型的な下痢症状を示すような、人のSIBO
症候群、犬の実験モデル、battらによるGSDの報告などに比較して明らかに矛盾している。こ
の著者は、Battらが健康な犬の消化管液を培養したのに違いないと指摘している。107頭の犬
による、より細菌の研究によると、52頭が特発性SIBO (消化管液の細菌数が >5 (log10 cfu/
ml))であったが、潜在する疾患は確認出来なかった。このような高頻度の特発性SIBOの発生
率からすると、5 (log10 cfu/ml)のカットオフラインの正当性にさらなる疑問が生じてくる。(訳者
注:つまり、消化管内細菌数 >5 (log10 cfu/ml)の基準は犬および猫では低すぎて、実際の臨
床では利用出来ない!ということ)

治療
 SIBOが疑われる症例に対しての治療は、潜在する解剖学的、構造的異常を正常化し、EPI
(があれば)の治療および抗生物質によって異常な細菌叢を制御することである。適切な抗生
物質としては、オキシテトラサイクリン(20mg/kg TID PO)、タイロシン(10mg/kg TID PO)またはメ
トロニダゾール(15 mg/kg BID PO)などがある。犬の特発性SIBOに対する抗生物質療法は通
常28日間継続する。食事の変更も重要な要素であり、経験的なエビデンスではあるが、高消
化性で低脂肪の食事が推奨される。
予後
 動物の不確定の抗生物質反応性腸炎は、抗生物質療法を中止すると再発しさらに長期の
治療が必要になることが多い。二次性のSIBOの予後は潜在する疾患に左右される。

Speaker Information
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Kenneth W. Simpson, BVM&S, PhD, MRCVS, DipACVIM, DipECVIM-CA
Clinical Sciences, NYS, CVM
Cornell University
VMC 2001
Ithaca, NY 14853