アレルギー疾患最新情報:アトピー性皮膚炎
Update on Allergies: Atopic Dermatitis
Northeast Veterinary Conference 2004
Stephen D. White, DVM, DACVD
Department of Medicine and Epidemiology, School of Veterinary Medicine, University of
CaliforniaDavis, CA, USA  竹内和義 訳 20050925

目的
小動物分野におけるアトピー性皮膚炎の最新情報を臨床家向けにアップデートする。

キーポイント
犬のアトピー性皮膚炎は(おそらく猫でも)即時過敏型反応で、獣医師が目にするアレルギー
性皮膚炎の中では2番目に多い。サイクロスポリンのような新しい治療薬が利用できるようにな
って、この病気の治療管理がより効果的となった。

概要
アトピー性皮膚炎は、異論もあるが犬で2番目に多いアレルギー性疾患であり(ノミアレルギー
に次いで)猫では3番目に多いアレルギー疾患である(蚤および食物アレルギーに次いで)。診
断は、掻痒を起こしている他の原因を除外することが最も効果的で、さらに皮内反応や血清反
応で確定する。治療は、減感作療法、コルチコステロイド、新しく認可されたサイクロスポリン
のような非ステロイド性抗掻痒薬などを投与して行われる。

詳細
病因論
  アトピー性皮膚炎は、異論もあるがノミアレルギーについで2番目に犬に多いアレルギー疾患
で、猫では蚤・食物に次いで3番目に多いアレルギー疾患である。犬では強い遺伝性があり、
好発犬種としてはゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、テリア、ダルメシアン、シャー
ペイなどがあげられる。カリフォルニア大学デービス校において(UCD)アトピー性皮膚炎が最
も多発する犬種は、ゴールデンレトリバー、ウエストハイランドホワイトテリア、チャイニーズシャ
ーペイ、ブルテリア、ビションフリーゼおよびチベタンテリアの順となっている。コロラド州立大学
(CSU)では、アトピー性皮膚炎に最もかかりやすい代表的な3犬種系は、レトリバー系、テリア
系、スパニエル系の順である。猫での遺伝的傾向は、詳しい報告が見あたらないが、おそらく
関連はあると考えられる。
  アトピー性皮膚炎はIgE(免疫グロブリン)が介在するアレルギー反応である。アレルゲンが気
道(呼吸器系)や皮膚から体内に進入すると、皮膚の中で抗体と結合しさらにそれらが肥満細
胞と結合する。抗原-抗体結合は肥満細胞からの様々な炎症性物質(ヒスタミンなど)の放出を
促す。感作は表皮内のランゲルハンス細胞との相互作用で行われ、抗原と結合したランゲル
ハンス細胞は局所のリンパ節に移動し、Tリンパ球およびBリンパ球とも結合する。これらは人
やマウスで見られるような、ランゲルハンス細胞が抗原を提示した場合にTH-2サブクラスがB
リンパ球を刺激して抗体を過剰生産させるメカニズムと同様であると考えられる。アトピーの犬
では(人と同様)CD4+T細胞(ヘルパー細胞)が、CD8+T細胞(サプレッサー細胞)より皮膚内で
数が多いことが最近明らかになったが、健康犬に比べると両者とも数が増えていた。

臨床徴候
  アトピー性皮膚炎は季節性があったり、通年であったりする。最も多く発症する年齢は1歳か
ら7歳の間である。UCDで最近完了した研究では、罹患犬の平均年齢は1.66歳で、95%の犬は
5再未満で最初の臨床症状が現れる。秋田犬、シャーペイ、チャウチャウなどの外来品種は6
カ月未満で発症する傾向が強い。初期には発症している期間は非常に短いが、おそらく徐々
にアレルギーが強くなって、しばしば1年中症状が発現するようになってしまう。特徴的な病変
部は、足、耳、腋窩部、顔面などで、結膜炎も今までに報告されているより多く認められる。紅
斑、脱毛、色素過剰沈着を伴った掻痒が典型的な皮膚症錠である。臨床症状は重症例では
全身性に発展する。
  猫では、一般的に顔面が多く、足は比較的希で、場合によっては全身性になることもある。紅
斑、脱毛、色素過剰沈着を伴った掻痒が特徴的皮膚症状である。猫では、発症年齢、性別に
より好発傾向などは明らかになっていない。
  アトピーの犬は黄色ブドウ球菌、マラセチアの二次感染を起こしやすい。したがって、表皮の
膿皮症(表皮円形痂皮、丘疹)またはイースト菌感染(皮膚や爪の根本の脂性の茶色の分泌
物、指間や尾の下側の紅斑)などの臨床徴候が良く見られる。黄色ブドウ球菌は、ブドウ球菌
特異的IgEの産生を増加させ、同時に非特異的に肥満細胞のIgE分子と結合するブドウ球菌蛋
白A(SPA)を産生してアトピーの病変をさらに悪化させる。一方、アトピー状態は、掻痒によっ
て物理的に角質層の感染バリヤーが傷害されるので、黄色ブドウ球菌がアトピー犬の角質細
胞に接着しやすくなり、ブドウ球菌抗原が表皮内に進入しやすくなると、肥満細胞の脱顆粒が
さらに増強され、膿皮症がますます悪化する。アトピーの猫も黄色ブドウ球菌やマラセチアに
二次感染しやすくなるが犬ほどひどくはないようである。

診断
  アトピー性皮膚炎は、病歴、身体検査および(古典的な再発性の特に季節性の顔面の紅斑・
掻痒などは別として)、特に食物アレルギー、外部寄生虫症などのその他の掻痒の原因の除
外診断によってなされる。アトピー性皮膚炎は、この手順の次に皮内反応やアレルギー特異
性の血清IgE検査によって確定診断される。偽陽性(または臨床的に意義のない反応)が高率
に認められるため、その他の診断手技で除外診断を行った後に実施すべきである。
  皮内反応検査および血清学的検査のどちらがより的確な診断手技であるかに関しては多く
の議論がある。UCD、CSU及び岐阜大学における3つの250頭以上の研究によると、皮内反応
および血清ELISA反応によって作成された減感作薬による減感作療法への治療反応はほぼ
同等であった。

治療
  最も適切な治療法は減感作注射である。UCDにおける減感作療法による治療効果は、犬で
およそ65%で、著者の経験では猫では70-80%ある。減感作療法は獣医師と飼い主相互にお
いて沢山のコミュニケーションが必要であるため、飼い主さんは以下の点に良く認識する必要
がある
  1. 減感作療法を行った場合、最終効果判定を行うまでの最低1年間は継続しなければな
    らない。
  2. もし効果が認められた場合、治療は一生涯続ける必要がある。(UCDにおける研究で
    は、150例中2例のみが2年間再発がなかっただけであった)
  3. もし効果があった場合、その後も補充的な療法は継続する必要がある。(抗生物質、抗
    ヒスタミン、脂肪酸製剤など)
  4. 軽度な副作用(注射部位の疼痛)および重度な副作用(アナフィラキシー:非常に希)が
    ある。
  5. 費用(米国の)は1年間に500-1000ドルで、注射の回数に依存し(多くの犬が7-10日毎に
    維持注射を継続している)獣医師の診察を掻痒の発現や軽度の副作用発現時に受ける
    必要がある。
  もし減感作療法が不成功に終わった場合か、オーナーがこの療法を拒否した場合は、抗掻
痒剤による治療が必要となる。プレドニゾロン(1mg/kg sid<猫は2倍量>から開始し徐々に減
量し、必要に応じて最低用量を隔日投与する)またはデキサメサゾン(0.1mg/kg sidから開始し
その後漸減する。猫は良いが犬では医原性クッシングを続発しやすい)などが効果的である。
  犬で良く使用される抗ヒスタミン剤は、ジフェンヒドラミン(2.2 mg/kg t.i.d.)、塩酸ヒドロキシジン
(2.2 mg/kg t.i.d.)、クロルフェニラミン(0.2-0.8 mg/kg b.i.d. to t.i.d.)またはクレマスチン(0.1 mg/
kg b.i.d.)などである。ある一つの研究では、ジフェンヒドラミンとクロルフェニラミンが最も一般的
に使用されている抗ヒスタミン剤であり同時に最も効果的であると論じている。猫に於いてはク
ロルフェニラミン(2-4 mg/5 kg b.i.d.)またはクレマスチン(0.1 mg/kg b.i.d.)が利用されている。
  三環抗うつ剤も掻痒のコントロールに有効な場合がある。犬ではアミトリプチリン(0.1 mg/kg
b.i.d.)またはドキセピン(2.2 mg/kg b.i.d.)が利用されている。猫では、著者はアミトリプチリン(5-
10 mg/cat b.i.d.)を使用している。

テマリルP(日本未発売)
  トリメプラジン5mgとプレドニゾロン2mgの複合剤(テマリルP:Temeril-P®, Pfizer)は犬のアトピ
ーのそう痒性のコントロールに際して、プレドニゾロンの用量を減量する場合に非常に有効で
ある。この薬は経験的用量として10kg以下の犬で1錠bid、10から25kgは2錠bid、25kg以上は3
錠bidで投与されている。

タクロリムス軟膏
  タクロリムス軟膏[Protopic: Fujisawa]は軽度から中等度の人のアトピー性皮膚炎に効果的に
しかも安全に使用されている。0.1%の軟膏は成人用として、0.03%は子供と成人の長期の間
欠性の治療薬として、基本的な治療に反応が悪いか不耐性のある症例で適切な効果が認め
られている。0.1%の製品の犬への効果が最近報告された。この製品は、やや効果である。
(30 gm tube = $70-120).

必須脂肪酸(EFA)
  必須脂肪酸(EFA)を含んだ製品が非ステロイド性抗掻痒剤として使われている。これらの薬
剤は明らかにアラキドン酸やその他の炎症前駆物質の産生を阻害させる作用がある。著者は
EFAとオメガ3やオメガ3や6を含む複合製剤との間に明らかな効果に関する差異を明確にする
ことが出来ていない。犬においてはこれらの物質が痒みを、特に抗ヒスタミン剤と併用した場
合、25%ほど減弱する作用を有している。ドックフードの中に含まれる場合、成功率はある一
つの公開研究では42%(良好から非常に良好として)に達した。その他の研究では44%であっ
た。後者の研究では、療法食に対して反応した犬は、血漿中や皮膚内での脂肪酸の変化のパ
ターンが、療法食に反応しない犬と異なり、アトピー犬は脂肪酸の代謝能力において異なった
サブセットを有していることが示唆された。

抗ヒスタミン
  抗ヒスタミンは必須脂肪酸と組み合わせて猫に投与すると、少なくとも50%において臨床症
状な改善が目止められる。

サイクロスポリン
  サイクロスポリンはAtopica®アトピカ(Novartis)の商品名で10, 25, 50 and 100 mgのカプセル
で販売されている。理想的にはこの薬は空腹時に投与すべきであるが、消化器系の障害を起
こしやすく、食事と一緒に投与すると副作用を抑えるのに役立つ。多くの犬で副作用無く投与
可能である。低用量の投与がアトピーの治療に使われ、一般的に5-7mg/kg/dayあるいはそれ
以下の用量で、この用量では副作用は希である。最も多い副作用は吐気や食欲不振である。
非常に高価なため、大型犬に投与する場合はケトコナゾールを併用することでアトピカの用量
を減量させる必要があり、実際効果的に減量することが可能である。(これは両者の薬剤の体
内での代謝性に起因する)。一般的にケトコナゾールを5mg/kg併用することで、著者は犬
へのサイクロスポリンの投与量を50%削減(5mg/kg/dayのところを2.5mg/kg/dayに)す
ることが可能となっている。

ペントキシフィリン(日本未発売)
  ペントキシフィリン(Trental®, Aventis Pharmaceuticals: 400 mg tablet)はメチルキサンチン
誘導体で、アトピー犬の皮膚炎に効果を発揮する場合がある。推奨用量は20-30mg/kg8時間
毎である。嘔吐を呈する犬が時々あり、希に興奮状態を呈することがある。この薬の作用機序
は、おそらく炎症性物質の作用を抑制すると考えられている。

シャンプー製剤
  オートミールを含んだシャンプーや0.5-1.0%のヒドロコルチゾンを含有したシャンプーは犬
の補助療法として効果的であるが、猫はシャンプーを好まないのであまり効果は認められてい
ない。少なくとも1週間に2-3回シャンプーすることが理想的である。また「レジ」タイプのペットの
皮膚被毛に残留性のあるリンスも推奨されている。これらの代表的な製品としてはResi-
CortTM(Virbac;ビルバック)があり1%のヒドロコルチゾンを含有し週1-2回使用する。

要約
  アトピー性皮膚炎は、異論はあるがノミについで二番目に多いアレルギー疾患で、猫では
(ノミ、食物に次いで)3番目に多いアレルギー疾患である。診断は他の掻痒の原因を除外して
行われるのがベストで、その後は皮内反応または血清学的検査によって確定診断する。治療
法は減感作療法、コルチコステロイド、最近認可された非ステロイド性抗掻痒剤などによって
行われる。
Copyright 1991-2005, Veterinary Information Network, Inc.

参考資料
プロトピック軟膏0.1%(タクロリムス水和物軟膏)

医療法人社団アップル会藤澤皮膚科医学博士藤澤重樹

1.はじめに
  臓器移植後の拒絶反応予防薬として用いられる移植免疫抑制薬のシクロスポリン、タクロリムスは、すでに過剰
な免疫応答により発症する自己免疫疾患やアレルギー疾患にも幅広く応用されている。シクロスポリン(商品名、サ
ンディミュン)は、炎症性角化症である乾癬に対する内服療法がすでに保険適応となり、治療に用いられ、高い有用
性を示している。シクロスポリンの内服療法はアトビー性皮膚炎(以下AD)についても、わが国では治験段階である
が、欧州を中心に多くの国では既に認可されている。治療に抵抗性のアトピー性皮膚炎患者に長期間(22〜44ヶ月
間)シクロスポリンを投与して、その後、中止して2年以上(13〜34ヶ月間)観察しても、ほとんど再発が認められなか
ったという報告もある。
  シクロスポリン、タクロリムスともにT細胞の活性化を強力に抑制する薬理作用を有する。タクロリムスの分子量
(822.05)はシクロスポリン(1202.63)に比べて小さいために経皮吸収が容易で、かつシクロスポリンの30分の1の濃
度の外用剤で、同等の効果を示すことから、皮膚局所における濃度を高めかつ全身的副作用を回避する目的で
1992年2月から、外用化が検討されてきた。それが世界に先駆けて、藤沢薬品工業によって開発されたのがプロトピ
ック軟膏である。1993年7月からフェーズU、1996年6月かフェーズVに入り、1997年7月に厚生省に薬価収載への
申請が出された。そして、1999年6月に成人(16歳以上)ADへの0.1%の濃度のプロトピック軟膏が承認された。しか
しその後、価格の決定に時間がかかり、薬価収載が延び延びとなって、発売が待ち望まれていた。やっと、同年11
月19日に、薬価収載され、11月24日になり、使用が可能となった。

2.夕クロリムスとは
  タクロリムスは、筑波山麓の土壌より分離された放線菌Streptomycestsukubaenesisが産生するマクロライド骨
格を有する化合物である。T細胞の活性化に伴うIL-2,-3,-4,-5、インターフェロン(IFN)-γ、GM-CSF等のサイトカイン
遺伝子の転写を阻害し、産生を阻害することにより免疫抑制作用を発揮する。タクロリムスは、その優れた免疫抑制
効果により、すでに移植領域において臨床応用され、注射剤、カプセル剤(プログラフ)が肝・腎・骨髄移植後の拒絶
反応の抑制、GVHD(graft-versus-host disease)の治療に用いられている。 

3.タクロリムスの作用機序
 マクロライド骨格を有する放線菌の代謝産物であるタクロリムス、真菌の培養濾液中から分離される環状ペプチド
であるシクロスポリンは全く異なる化学構造を有するにもかかわらず、移植免疫抑制薬としての免疫抑制効果は非
常によく似ている。両薬剤はいずれもT細胞が抗原刺激とマクロファージからのIL-1刺激により活性化される初期段
階に作用して、強力な免疫抑制作用を発揮する。ステロイドは強力な免疫抑制、抗炎症効果を有しているものの、T
細胞に特異的というわけではなく、その作用はほとんど全ての細胞におよび、副作用も多岐にわたるという点で異な
る。タクロリムス、シクロスポリンにはT細胞の活性化の抑制の他に、皮膚の抗原提示細胞であるランゲル
ハンス細胞の抗原提示の抑制や、IgE依存性におきる肥胖細胞、好塩基球からのヒスタミン放出の抑制、
好椴球の脱顆粒の抑制などの作用がある。 

4.プロトピック軟膏の成人ADへの効果、利点と注意点
  プロトピック軟膏は炎症症状の強いAD、特に潮紅を伴う顔面、頚部の皮疹に良く効く。一方、慢性の湿疹のた
め、皮膚が硬くなっているようなところ(苔癬化局面)は薬剤の吸収の悪さが影響し、効果がやや劣る。
 プロトピック軟膏の問題点としてまずあげられるのは、顔面や、頸部の潮紅の強い皮疹に使用した場合、ほてり感
やヒリヒリ感など特有の刺激感が高率(60〜80%)に認められることである。この刺激感は、一過性で、皮疹の軽快
とともに通常2〜3日、長くて1週間で消失する。しかし、「唐辛子を塗ったような痛くて耐えられないような」激しい刺
激感で、使用が継続できない症例もときどき経験する。
  免疫抑制薬であるため、外用した患部の皮膚に感染症が生じやすくなる。開発治験の対象となった、568例のAD
では、1年間の長期外用試験でみられた皮膚感染症の主なものは、毛嚢炎が最も多く(12.0%)、次いでカポジ水痘
様発疹症(4.2%)、単純疱疹(3.3%)であった(表1)。そのうち高度のものは、カポジ水痘様発疹6例、伝染性膿痂
疹1例の計7例であった。AD患者のカポジ水痘様発疹症罹患率は3〜5%と考えられており、臨床試験における発生
率と差がないと考えられるが、AD患者ではカポジ水痘様発疹症が幾度も再発するので、注意して観察する必要があ
る。また長期観察試験において、7.4%の患者にざ瘡が認められているので、ニキビがある部位には使用を避けるべ
きである(表2)。
 プロトピック軟膏は強い免疫抑制作用があるため、皮膚癌発生のリスクを考慮して、PUVA療法などの紫外線療法
を実施中の患者への処方は禁忌となっている。プロトピック軟膏を使用した部位を日光に長時間さらさないようにと使
用上の注意事項として明記されている。
 プロトピック軟膏の臨床試験では重篤な全身性副作用は認められていない。移植領域においてタクロリムスを全身
投与された患者で20ng/mlを超える高い血中濃度が持続した場合には、腎障害や高カリウム血症、高血糖、胸痛、
振戦、感染症など全身性副作用の発現頻度が高くなる。プロトピック軟膏を安全に使用するためには、そのような血
中濃度上昇に伴う全身性の副作用が生じないように注意する必要がある。長期観察試験では、重症例または皮疹
の著明な増悪をきたした場合に、一過性ながら血中濃度が10ng/mlを超えた症例が認められている。この様な症例
が数例あり、いずれも全身に広範囲に使用したため、1日の外用量が10g以上となっていた。このことから、血中濃度
10ng/mを安全性確保の基準として、1日に2回、1回塗布量の上限を5gまでで、10g/日までに抑えるように使用上
の注意事項として制限されている。
 プロトピック軟膏をびらん・潰瘍面など、バリア機能が著しく損なわれた表皮剥離部位や掻破痕に使用すると、ヒリ
ヒリ感の刺激性が高まるばかりでなく、薬剤の吸収が増すために血中濃度上昇による全身への影響を無視できなく
なるので、これらの部位への塗布を避けることとされている。プロトピック軟膏の優れているところは、ステロイド外用
剤に認められる副作用である皮膚萎縮、毛細血管拡張、依存性、外用中止後のリバウンドが少ないことである。アト
ピー性皮膚炎治療にシクロスポリンの内服療法を用いた際にも、依存性、中止後のリバウンド症状がほとんど認めら
れず、この点がステロイド剤と異なる優れたところである。プロトピック軟膏の利点と注意点を表3にまとめた。 

5.小児への使用
 プロトピック軟膏は16歳末満の小児に対しては治験が行われていないため、まだ使用できない。というより、保険
診療の適応となっていない。米国で行われている小児の治験では、0.03%の濃度でも良好な結果が示されている。
わが国でも近い将来、16歳末満の小児に対するプロトピック軟膏外用の臨床試験が行われ、0.03%のプロトピック軟
膏が小児で使用できるようになる予定である。 

プロトピック軟膏の利点と注意点
<利点>
○ステロイド外用薬の副作用である皮膚萎縮、毛細血管拡張がない。
○ステロイド外用剤に比べて、依存性、中止後のリバウンドが少ない。
○正常な皮膚からは吸収されない。
○目の周囲にも比較的安全に使用することができる。
<注意点>
○皮膚刺激性頻度が高い。特に、顔面・頸部、靡爛や掻破痕がある部位。
○苔癬化の強い部位や痒疹には効きづらい。
○カポジ水痘様発疹症などの皮膚ウイルス感染症に注意が必要。
○長期連用の際の皮膚癌の発生などの安全性が確立していない。
○本剤を使用した部位を日光に長時間さらしてはいけない。
○紫外線療法を実施中の患者への処方は禁忌である。