Dhulikhel

コダリからデュリケルまでは、バイクで半日の距離である。デュリケルにも手頃なトレッキングルートがあるということで2泊の予定で立ち寄った。デュリケルに着いて宿の親父に聞いて知ったんだけど、この町には夜間外出禁止令が出ていた。

ネパールでは政府軍とマオイストという反政府ゲリラとの間で戦闘が行われていた。警察署や軍の駐屯地が襲撃されるという事件が相次いでいたので、その戦闘に巻き込まれないように、警察署・軍の施設等には近寄るなという渡航情報が外務省から出されていたのだが、この町には軍の駐屯地があったのだった。町は平静であったが、さすがに駐屯地周辺には緊張感が・・・。

そんな理由で、例年より観光客が少なく、宿の親父も困っているようだった。その夜の宿泊客は、僕を含めて3組4人だけだった。ドイツから来た旅行者は、ここまでバスで来たそうだが、検問で5時間ぐらい待たされたという。カトマンズ方面に向かう車はすべて荷物検査が必要なのだ。鞄の中まで徹底的に調べるらしい。僕はというと、検問に並んだ長蛇の車列をするするとすり抜け、先頭まで行って、日本人であることを告げるだけで検査無しで通過できるのだった。

そのドイツ君は大江健三郎のファンだそうな。食事の時にもその本を離さず、日本人ならみんな大江健三郎を読んでいるだろうと言わんばかりに語り出した。ちょっと困った人だった。

そして、次の日朝早くトレッキングに出かけた。ガイドは町中で拾ったというより、拾っていただいた。

今の日本にはあまり残っていない光景。木に神様を祭るというのは日本にもよく見られるが、年頃の女の子たちがこのように合掌している姿は、日本ではまず見ることはできない。ネパールを旅したある女優さんは、「ネパールには明治時代の日本の生活が残っている。」と言っていた。僕は昭和の人間のなんだけど、何となくそんな感じがする。

ガイド君は、この辺の人に結構顔が利くらしい。彼の紹介で家の中に入れてもらった。家の中は土間のみで、ベッドと飯炊き用のかまどがあった。家畜の寝床もあった。

右端がガイド君

誰でも喜んで写真を取らせてくれるのがいい。帰ってからできる限り、撮った写真を送った。この夫婦の写真と上の集合写真はガイド氏に配達をお願いした。

しばらく歩くと、とてもかわいい3人娘と会った。カメラを向けるとちょっと恥じらいながらも笑顔で応えてくれた。

ここはナモーブッダというチベット仏教の寺院。この日はお祭りみたいな雰囲気だった。ここで昼食を取る。50円ぐらいだったかな?

この寺には若い修行僧がたくさんいた。ガイド君の知り合いも多いみたいで、お昼のおつとめを見せてもらった。ホルン、木魚、太鼓にあわせて読経するのであるが、こんなんでええんか?というぐらい気合いが入ってなかった。しばらくすると年配のお坊さんが入ってきた。そして彼らの態度は一変した。

ここはお寺の建設現場。女性たちがきびきびと働いていた。背中のかごに土砂や砂利を入れて坂道を往復していた。普通こんな過酷な仕事は男がすると思うのだが・・・。

僕が撮った写真は圧倒的に子ども、女性の写真が多い。別に僕の趣味だからというわけでなく、彼女たちの、精一杯がんばって生きている姿がとても魅力的だったのだ。ネパールの農村地帯では、なぜか働いている男の姿をほとんど見なかった。やつらはテーブル台に群がりゲームに夢中だった。こういう光景を何回も見たのでガイド君に、男は働かないのかと聞いてみた。彼は、今は農閑期だからと笑っていたが、おしゃべりな彼にしては、あまり多くを語らなかった。

オレンジの収穫。このあたりで採れたオレンジはすべてカトマンズへ出荷される。オレンジのおかげで、生活は豊かなのだそうだ。衛星放送用のパラボラアンテナを付けている家が何軒かあった。

最近日本政府の援助で、近くに道路ができ、収穫したオレンジをトラックで運べるようになったのだそうだ。以前はオレンジを背負って十数キロを歩かねばならなかったらしい。

「道路をつくってくれたお礼だ。」と言って、両手に持ちきれないほどのオレンジをくれた。

しばらく行くと、オレンジを背負ったさっきの人たちが追いついてきた。担いでいるのはやはり女性だった。近くに道ができてよかったと言うが、近いといっても4〜5キロは歩かねばならない。僕よりも足取りも軽やかに追い抜いていった。

休憩に立ち寄ったお店。紅茶(ものすごく甘いミルクティ)を飲んだ。

そしてやっと車道へ出た。結構疲れが出てきたので、バスに乗りたかったが、あと3キロ我慢せよと言われた。こんな悪路を行くバスの上に乗るというのも一度は体験したかったんだけど・・・。

このころガイド君はしきりに時間を気にし出した。急がないと最終のバスに乗れないらしい・・・。最終のバスに乗れなければ宿に帰れない。夜間外出禁止令が出ていたので、ちょっと不安になった。

今回の旅のベストショット。祭りでもあったのかな?とても華やかだった。

パナウティの人たち。「日本人よ、まあここに座っていけ。」というので仲間に入れてもらった。

最終のバスに乗り、デュリケルへ。そして、この旅で最もエキサイティングな体験をすることになる。道はくねくね、道幅は、小さいバスがぎりぎりで対向できるかどうかというぐらい。なんと我らが運ちゃんはクラクションをけたたましく鳴らし、前を行くバスを煽り始めたのだ。まさか追い抜くんじゃないよな。

そしてそのまさかの暴挙をしでかしてくれた。前のバスは道を譲りスピードを緩めるでもない。おまけに道もまっすぐではない。このスピードで接触したらどちらかは道からはじき飛ばされるだろう。そして対向車が来たら・・・。

追い抜く瞬間、思わず「ワオー!」と声を出してしまった。結構たくさん乗客が乗っていたが、うろたえていたのは僕だけだった。しかし、恐るべき運ちゃんの度胸とテクニック。日本でこんな運転をしたら、間違いなくクビになると思う。

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ドキドキの追い越しシーン

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