地域移行への問題点

現在国立のぞみの園で生活している重度知的障害者がスムーズに地域へ移行できるのか考えたい

のぞみの園職員から投稿

Aさん 男性40代

 通称コロニーと言われる私達の職場、正式名称は、独立行政法人「国立重度知的障害者総合施設のぞみの園」と、この10月1日よりなりました。それまでは特殊法人心身障害者福祉協会国立コロニーのぞみの園と言いました。いずれも一回では覚えきれない長い名称です。まさに官僚が考え出したと分かる名称です。仕事の内容は、重度・最重度の知的障害者を24時間体制で、援助する入所型の更生施設です。身辺自立もままならず、社会生活能力も乏しい人達がほとんどを占めています。施設の中でしか、安定した生活を保障することが現実的に不可能な人達です。
私達の職場は小泉内閣の特殊法人合理化計画のもと、本年10月より独立行政法人へ移行しました。移行に伴い3〜5年で現在の入所者を地域移行(出身地へ帰す)やグループホームへ入所させ、そして定員規模を段階的に縮小していく、ということになりました。さらに新規入所は受け付けないということですので、現段階では将来的に廃止まで決まったような状況です。厚労省は「ノーマライゼーションの理念に基づき、知的障害者の地域生活を支援し、知的障害者の自立や社会参加を促進していくことが喫緊の課題である。のぞみの園の施設機能と運営は、時代のニーズに合致したものに大きく転換することが必要である。独立行政法人として効率的な運営を追求しなければならない。」と検討報告を出し、職場で働く者、あるいは入所者や保護者にも迫ってきています。 
施設開設以来30年以上が経過する中で、安定した生活を送れるようになった入所者が、地域移行という今までとは180度違った、一方的な方針変更は人権尊重という視点からしても許されるものではありません。その際、一番の被害者は当の本人達です。保護者の方々の反対意見を無視し、また、受け入れ先予定である自治体の地域移行への困難性の指摘があるにもかかわらず、地域移行を押し進めようとしています
こういう職場での労働というのは、正直言って意欲はまったく沸いてきません。当然職員の疑問は増すばかりです。どう考えても重度・最重度の人は生活環境を変えれば、その生活環境になじめず不適応行動を起こすのは明白です。地域社会の障害者への理解も不充分です。本当に地域生活が可能なのだろうか。こんな疑問や、今後の働く場はどうなるのだろうか、という不安、仲間との議論や疑問は増すばかりです。
退職まで数年と迫っている人達は、もうどうでもいいと言い、管理職、組合の幹部も時代が変わるから仕方がない。と声を合わせています。中堅の人や子育ての終わってない人、採用されたばかりの職員は職場が未来のないことにたいへんな不安を持っています。こういう職場状況の中では仕事をしながら、働く仲間に諦めるな、泣き寝入りはよそう、私達職員がこういうときこそ自覚を持って果たして本当に地域移行が必要なのか意見を言うことが大切だ。それが自分自身のため、そして入所者のためなのでは、と話をしています。