厚労省独法化検討委員会の最終報告について


 厚労省の独立行政法人化検討委員会は、入所者500人の内3割〜4割(約200人)を出身地の施設やグループホームなどに移行する。との最終報告をまとめたようだが、これを見てはっきり言えることは、独法化委員会は国立コロニー入所者の個々の障害程度や特性・事情に合わせて地域移行の目標人数を出したわけではなく、国立コロニーの予算や運営状況、そして国の行財政改革=合理化論のみから数字をあげ、まとめただけである。
 と、いうのは国立コロニー自ら五段階評価に基づく、入所者の実態を調べ、数十名の地域移行可能者という実数を検討委員会に提出したものに不満を示し、水増し的にもっと取り組めとばかりに、3割から4割にしただけである。国立コロニーで出した地域移行可能者というのは、日常生活を共にしている職員が評価をし、一定の条件、設備、スタッフ、社会的理解がそろえば、あるいは何とか地域移行が可能かもしれない。という思いで出したものである。それを検討委員会は、保護者の意向や、入所者の障害実態を認識するわけではなく、物をあっちからこっちへ移動するかのような目標数字を出しただけである。これでは無理強いである。何という不見識な検討委員会であろうか。重度・最重度の人達を環境変化にさらすとどんな不適応行動を起こすのか想像できないのであろうか。
 さらに、厚労省と検討委員会は最終答申まで17回も討議を進めてきたが、
@何故国立コロニーが縮小されなければならないのか、
A何故、新規入所を受け付けないのか

 全く説明がない。最終答申にも、北欧諸国が、アメリカが閉鎖した、時代の要請ではない、新しい知的障害者福祉行政の動向とミスマッチだなどとは書いてあるが、それは説明では決してない。むしろ言い訳である。そして入所者の地域移行の結論だけが出ているのである。まさにノーマライゼージョンを言いつつ、コロニー解体・廃止であり、厚労省としてこれまでやってきた知的障害者施設の経営からの撤退と逃げ込みである。
 その上「コロニー」という名称は終生保護を目的としているかのようで良くないようなことまでふれている。この名称を付けたのは、当時の厚生省であり、しかも国立コロニーを国家プロジェクトで開設したはずである。現在、国立コロニーに生活されている入所者、保護者、あるいは働いている人達に対して、あまりに失礼ではないのか。もっともこの問題に対しては、当のコロニー労組委員長が、独法化委員会の席上「終身収容施設」と発言しているのだから始末に負えない。この発言を契機に国立コロニーは隔離収容施設だとキャンペーンを張られ、、戻っておいでの、、、記事や、30余年もの長い間ごめんなさい、、、の文書が出てきたのは言うまでもない話だ。こういうイメージや状況を作り出しておいて、それに便乗し名称がというのも不愉快な話である。
 いずれにせよノーマライぜーションの思想の基、今後の福祉の充実を改革の理念に掲げ、養護されるべき重度・最重度知的障害者の福祉がどうあるべきかの議論を置き去りにしている行財政改革の爪痕とならないよう願うばかりである。



国立コロニー独立行政法人化検討委員会報告書概要


1.知的障害者福祉行政における国立コロニーの位置づけ、役割及び評価について 
○ 知的障害者福祉行政においては、ノーマライゼーションの理念に基づき、知的障害者の地域生活を支援し、知的障害者の自立や社会参加を促進していくことが喫緊の課題である。のぞみの園の施設機能と運営は、時代のニーズに合致したものに大きく転換することが必要であるほか、独立行政法人として効率的な運営を追求しなければならない。

2.のぞみの園が実施すべき重度知的障害者のモデル的な処遇について
○ 現在入所している人が、例えどのような重度の知的障害者であっても、その人の地域での生活が可能になるような支援こそ、のぞみの園が目指すべき処遇でなければならない。

3.のぞみの園の業務の効率性の評価等について
○ のぞみの園は、総支出に占める人件費比率、総収入に占める自己収入比率、入所者一人あたりの職員数、運営費交付金の節減状況などの指標により、独立行政法人として効率的な運営を行っていく必要がある。

4.のぞみの園のサービスの質の評価等について
 ○ のぞみの園は、サービスの質の面でも、効率性を担保しつつ、民間の類似施設の目標とされる存在でなければならない。このため、提供するサービスについて、第三者による評価を受け、今後のサービス改善に役立てていく必要がある。

5.のぞみの園に対する政策目標について
○のぞみの園の運営においては、今後、新たな入所者を受け入れないことを基本とし、現在の入所者については、地域への移行を進めていかなければならない。
 のぞみの園が、今日の時代の要請に応じてい転換していくための政策目標としては、中期目標期間中(平成19年度末までの期間を想定)に、現在の入所者数を3割から4割程度縮小させるものとして設定されるべきである。
○ 入所者の地域への移行に当たっては、本人や家族の意向を尊重するとともに、家族の負担や不安が生じないよう十分に配慮するなど、慎重かつ丁寧に進められる必要がある。
○ 独立行政法人への移行という改革の時期を捉えて、人件費の見直し等運営の合理化・効率化に向けて徹底的に取り組むことが必要である。

6.のぞみの園に対する中期目標について
○ 運営の徹底的な合理化・効率化を進め、中期目標期間中における運営費交付金の節減をはかること。
○ 中期目標期間中において、総事業費に占める自己収入の比率を増加させること。
○ 重度知的障害者の地域移行に向けたモデル的な処遇を推進することにより、入所者数を中期目標期間中において3割から4割程度縮減すること。また、特に支援の必要度が高い入所者への地域への移行にも積極的に取り組むこと。