BBSカウンターキリ番「6000」リクエスト:For 蘭堂さま
お題:牧×三井でキャプテン牧シリーズ馴れ初め編
す、すみません。
冬眠しちゃったんで、すんごくお待たせしてしまいました。
そのうえ、こんなおセンチな話とは…。
なんかありがちですね(泣)
星空の彼方から…
三井…。
いつもお前のことを想っているよ…。
この星域を漂流し始めて、もうどのくらい経ったのだろう。
俺は、牧紳一。
銀河系宇宙連合艦隊所属の戦艦『神奈川』の副艦長を務めている。
『神奈川』は、異星系間戦争に出撃し、かなりの功績を挙げたのだが、帰還途中に同僚艦の操船ミスによる爆発に巻き込まれてしまった。
あの時は、咄嗟の判断で緊急ワープを敢行したのだが、爆発の影響をかわしきれずに艦の航行機能を失ってしまったうえに、予定していたワープ先から、遥かに離れたこの星域に飛ばされてしまったのは痛かった。
生命維持関係の動力は無事だったものの、通信機能と航行機能が失われた艦では、ただ微弱な遭難信号を通りがかった船に見つけてもらうしかないというのに、この辺境の星域にはほとんど艦船の航行が望めそうにない。
艦長は、救助されるまでにかなりの期間がかかる可能性を考えて、生存者をコールドスリープで待機させることにした。
俺は眠りたくはなかった。
もし、数十年単位で眠りについたとして、助かった時には、もう恋人に逢うことが出来なくなるかもしれないからだ。
一人ブリッジでメンテナンスのために残ることを志願した。
あれから、二年近く経ったようだ。
恋人はどうしているだろう。
俺の恋人…三井寿とは、宇宙連合の士官学校の同期だった。
『神奈川』が僚艦の事故に巻き込まれた時に、三井の乗艦する駆逐艦『江ノ島』も近くにいたはずだ。
三井は無事だったのだろうか?
かなり離れた所にいたのを憶えているので、おそらくは無事だとは思うのだが、爆発事故を目の当たりにして、『神奈川』も巻き込まれたと思ってショックを受けていないだろうか。
寂しがりやなあいつのことだ、何より、俺がいなくなったことで、泣いたりしてはいないだろうか。
しかし、この状態では、三井に再び逢うことはかなわないかもしれない。
だからかもしれないが、この頃思い浮かぶのは、三井のことばかりだ…。
三井と知り合ったのは士官学校の最終学年の時だった…。
「よっ、牧。いつもすまないな」
子供のころからの腐れ縁の藤真が、寮の門限破りをして帰ってきた。
一階の俺の部屋の窓から忍び込むのを当然と思っているようで、今日も窓から入ってくる。
「藤真、いい加減にしないと、今に見つかるぞ」
「大丈夫だって。普段真面目にしてるから。あ、そうだ。おい、三井、さっさと入ってこいよ」
そう言って、藤真が振り返る。
「三井?」
「あぁ。店であったんだよ。舎監に目をつけられてて入れねぇから徹夜するって言ってたから、ココを紹介してやったってわけ」
「ふ、藤真…。ここって、牧の部屋か?」
そう言って窓から入り込んできたのが三井だった。
同期だというだけで、今まで接点もなかった三井と、この時始めて声を交わしたのだった。
「そうだよ。まさか寮長の部屋から出入りしてるだろうとは舎監も思わないだろ」
「藤真…。三井も、門限は守るためにあるんだぞ。最高学年がこんなことじゃ、後輩に示しがつかないだろう?」
「うッ…」
三井が、すまなそうに俯く。
「まぁまぁ、そう言うなって。三井は、今、訳あってバイト中なんだってさ。あと少しらしいから、協力してやってくれよ」
「バイト?」
「あ、あぁ、約束の期間はあと二週間なんだ。すまねーけど、牧、協力してくれねーかな…」
「…まぁ、仕方ないな。ばれないようにしろよ」
「おう!サンキューな!牧!」
そういって、三井が俺に抱きついてきた。
「うわっ!三井?」
「あ、すまねー」
藤真と三井がそれぞれの部屋に帰っていって、一人になるとようやく息を吐いた。
今まで声を交わしたことがなかったが、俺は知っていた。
三井をよく見ていた。
実は密かに気になっていたのだ。
そう、情けないが片想いだったのだ。
それからの三井は、バイトの間、毎夜俺の部屋の窓を叩いて入ってくる。
しばらく、俺と世間話をしてから部屋に戻るようになった。
バイトの理由を聞けば、昔からの友達が事故に逢い、その友に代わって店を手伝っているらしい。
ようやく友が復帰したので、三井はお役御免となったようだ。
バイトが終わる頃には、すっかり俺とも打ち解けたようで、その後も俺の部屋に遊びにくるようになった。
卒業間近になり、配属先が決まる頃、とうとう俺は三井に告白することにした。
ラッキーなことに、三井も俺のことを思っていてくれてたらしい。
両想いとなって、俺たちは付き合い始めた。
卒業して、配属された基地が同じだったことも幸いし、俺たちの仲は順調だった。
そう、あの爆発事故に遭うまでは…。
一人、ブリッジでいつ来るかわからない救援を待っている毎日が続いている。
いつも思い出すのは、三井、お前のことばかりだ。
お前の笑顔、拗ねた横顔、そして泣顔。
逢いたいよ、三井。
そうしたら、お前に言いたい事がある。
一生俺と…。
ん?
ブリッジの外から、物音がする。
なんだ?
何者かが侵入してきたのか?
まさか、こんな壊れた船を襲う海賊もいないだろう。
空耳だな。
三井、俺はこんな感じで日々を過ごしているよ。
お前は、今、どうしている?
この星空の彼方から、お前の幸せを祈っている。
三井…。