BBSカウンターキリ番「522」リクエスト:For いけださん

お題:三題話「夏服」「バスケットのボール」「熱帯夜」

ということで、キリ番リクエスト第1回目は、いけださんへの三題話です。

いけださんが、挿絵をつけてくださいましたので、なかなかにぎやかになりました。

ありがとう!!

「それが答えだ!」のシリーズは、真壁さんのHPで公開中です。よかったらそちらもどうぞご覧下さいね。

 

それが答えだ!EX

まかせなさい
By.いけだ

 

「あー、もう夏なんだなぁ」

カフェでぼんやり窓の外の通行する人を見ていた、三井が呟いた。

「どうしたんですか?三井さん」

うっとりと、向いに座る三井を見ていた仙道が、三井の言葉に反応して尋ねる。

「ほら、もう夏服じゃん。いいよなー、白いセーラー服」

「まさか着たいんですか?」

答えの変わりにおしぼりが、仙道の顔面に帰ってきた。

「違うだろ?フツー、デートしてーとかおもわねぇか?男として?」

「俺はセーラー服より、白いシャツの三井さんとデートしたいです」

「お前…。終わってるぞ」

呆れたように、三井は仙道を見てため息をついた。

三井と、仙道は所謂お付き合いをしている間柄だ。

昨年の秋、国体出場のための神奈川県選抜の代表として合宿に参加した二人が、ふとしたことから恋愛関係に陥ってしまった。

それ以来、こうやって、暇があればデートに誘いにやってくる仙道に、押し切られる形で三井は、仙道との時間を過ごしてきた。

この春に、三井は東京の大学に入学した。

仙道は、陵南高校の3年生だ。

ライバル校の2年と3年だった去年よりも、逢える時間は減ってしまった。

今日は、たまたま、三井が実家のほうに戻ってきていたため、デートに誘うことが出来たが、インターハイを控えたバスケ部のキャプテンとしては、そうそう上京して三井に逢いにいけるわけではなかった。

「終わっててもいいんです。三井さんの顔をこうして見られていたら、セーラー服なんて…。まさか、三井さんは、俺よりセーラー服から覗くうなじとか、二の腕とかがいいんですか?」

「俺は…」

そりゃ、男だからムサイ男の腕よりは、女のプルンとした二の腕のほうがいいだろうがと、言いたかった三井だが、目の前の窓に、張り付いている男を見て、驚いて言葉を飲み込んだ。

「ありゃ?」

仙道が、素っ頓狂な声を上げた。

「あれって、お前ンとこの後輩じゃなかったか?変な関西弁しゃべる小うるさい…」

三井が呆然と窓ガラスに張り付いている相田彦一を見つめて言った。

「えぇ、うちの2年です」

その話題の相田は、窓から離れて、店の中にと駆け込んできた。

「キャプテーン!捜しましたで!練習中に急におらんようにならはるから、皆大慌てで捜してましたんやで!」

「あれ、今日は早引けするって…」

「副キャプテンは聞いてへんし、知らんってゆうてはりました!さ、戻りましょ!」

「え、でも、俺、今日はデートだし…」

ぐいぐいと仙道の腕を取って、相田は有無を言わせず引っ張っていく。

「仙道…。お前、練習サボってたのか?夕べ休みだって言ってなかったか?」

三井は、二人について店を出る。

「…三井さん、そ、それは…。」

「それは?」

言葉に詰まる仙道に、三井はぎろっと睨みつける。

「…すみません」

「馬鹿野郎!インハイ前に何言ってんだ!おかしいと思ったんだよな。そうそう、あの監督が休みを出すとは思えねぇからよ。インハイ予選後の休養って言われりゃ、それもそうかと思っちまったが、やっぱり嘘だったんだな!!キャプテンだろ?こんなときにサボっていいと思ってんのか?」

ぺしっと、仙道の後頭部をはたいて、三井は一気にまくし立てた。

今年のインターハイ神奈川県予選は、仙道率いる陵南が優勝、2位が三井の母校湘北高校だった。

この2校がインターハイ出場を手中にし、来る、夏の大会にむかって練習を開始しているはずだった。

三井が実家に戻っていたのは、母校湘北のバスケ部を激励に来たついでに、親に顔を見せに寄ったためだが、引き止められて、夕べは、神奈川の実家に泊まっていたのだ。

その夕べ、仙道に連絡をとったところ、仙道は明日の練習は休みだから、デートしようと約束を取り付けられたのだった。

「三井さん…。でも…」

「でも、何だ?久しぶりに会えたからって理由なんかじゃ許さねーぞ」

「…」

仙道は、項垂れて、相田に引っ張られていく。

「じゃぁ、仙道。俺は帰るからな」

「え?そ、そんなぁ!」

仙道は、相田の手を振り切って、三井に向き直る。

がしっと肩を掴んで、三井の目を見る。

「お願いです、三井さん、一緒に陵南まできてください」

「あぁ?何で俺が」

「このままじゃ、俺、練習手につきません。お願いです」

「で、ついていってどうすんだよ」

「一緒にバスケしませんか?」

「はぁ?」

「俺、三井さんと1on1したいです!」

「お前…」

ふぅっとため息をついて、三井はあきらめたように肩をすくめた。

「お前ンとこの監督がいいって言ったらな」

「さぁ、そんならさっさと戻りましょ!」

様子を見ていた相田が再び仙道を引っ張っていく。

 

陵南高校バスケット部の練習場では、緊張がみなぎっていた。

今にも、監督の雷が落ちんとしていたのだ。

キャプテンの仙道が姿をくらましたと知った監督が、怒りに震えている。

数名が捜しに出ているが、およそ、見つけられそうにはない。

そんなときに、体育館の扉が開いて、相田彦一が戻ってきた。

「キャプテン見つけてきました」

そう言うと、仙道の腕を引っ張ってくる。

「仙道!何処に行ってたんだ!もうすぐインターハイなんだぞ!もう少し気合を入れたらどうなんだ!…?そこにいるのは?」

「はぁ、元湘北の三井さんです」

「な、なんでその三井君がここにいるんだ?」

「はぁ、俺、ちょっと、三井さんとバスケしたくって、無理言って来て貰ったんですけど…。だめでしょうか?」

「どうも」

三井が、ぺこりと田岡監督に挨拶をした。

「み、三井君!いやぁ、よく来てくれたね!」

監督は、三井に抱きつかんばかりに近づき、三井の手を取ってぶんぶんと上下に振る。

「仙道は、インターハイも近いというのにどうも気合が足らんのでなぁ、びしっと稽古つけてやってくれるか?」

「は、はぁ…」

三井の手を離そうとしない、田岡に仙道が割ってはいる。

「じゃ、三井さんに着替えてもらいますんで」

そう言うと強引に、田岡の手を離し三井の腕を取って、部室へと連れて行く。

「すみません、急にこんなことになっちゃって…」

「…まぁ、仕方ねーな。でも、俺、なんも用意してねーぞ」

「あ、これ、俺の予備なんですが…」

自分は、さっさと着替えながら、そう言うとウエアを渡す。

「シューズは…俺のじゃ大きいですね…。そういえば、今日、三井さんバスケットシューズでしたね。それ、綺麗に拭いて上がっちゃってください」

「いいのか?」

「綺麗なシューズじゃないですか。十分ですよ。それに、シューズは、なれないものだと足に負担かけちゃうし…」

「う、うん」

三井は、ウエアを手にしたまま、立っている。

「どうしたんです?着替えてくださ…あ、そうか、俺がいるんで警戒してますね。大丈夫ですよ。外で待ってますから」

仙道は、部室の外に出て行った。

三井は、しぶしぶ着替え始める。

「う、でかい」

三井には仙道の服は少し大きいようだが、まぁ、許容範囲だったのであきらめることにした。

着替えて、部室の門番をしていた仙道と、体育館に戻る。

体をほぐして、仙道が三井に声をかける。

「じゃぁ、三井さん1on1お願いします」

「え、でも、マジでいいのか?フォーメーションとかそういう練習しねーのか?」

仙道は、監督の田岡を見つめる。

「いいんだ。三井君。フォーメーションはまた明日でもいいから、仙道に全国レベルの選手との対戦練習させてやってくれ」

そう言うとまた三井の手を取ろうとするので、仙道が、その間に割ってはいる。

「じゃぁ、向こうでさせてもらいます」

三井を連れて田岡のいる場所と反対のゴールにむかう。

仙道は、バスケットのボールを三井に手渡し、ゴール下で向き直る。

「さぁ、三井さん、お願いします!」

 

夕暮れが、迫ってきていた。

ようやく、長い練習が終わろうとしている。

三井は、仙道との1on1のあと、他のメンバーも交えたミニゲームに参加させられた。

出ずっぱりで、かなり、体力を消耗して、体育館の床に座り込んでいる。

仙道が三井に、スポーツドリンクを渡す。

「お疲れ様でした。でも、俺たちにはいい練習になりました。ありがとうございます」

「そ、そっか?」

「はい!三井さんのバスケの視点は、うちのメンバーにとても参考になったと思います。それに、シュートの正確さも…」

「そ、それなら、邪魔した甲斐があるけどよ…」

どうやら、今日の練習は終了したようで、1年生たちがコートの掃除をはじめた。

田岡監督が、三井のところにやってきて、手を握り、礼をくどくどと言い始めたので、仙道が手を振り払い部室へと連れ戻った。

シャワーを使ったあと、部室にいた他の一行を、早々に追いやって、三井を中に入れる。

三井を着替えさせて、部室を後にする。

外は、すでに夕闇があたりを覆い尽くしている。

近くのファミリーレストランで夕食をとリ、家路にと向かう。

「はぁ、夜になっても、熱いですね。今日もまた熱帯夜かなぁ」

「うーん、寝苦しーから、やなんだよな」

「三井さん、今日は東京に帰っちゃうんですか?」

「おう、そのつもりだったんだけどな、くたびれたからもう一泊こっちでしようかな」

「じ、じゃぁ、うちに来ませんか?ここからも近いし、電車に乗らなくてもいいですよ。ね?」

「はぁ?お前ン家?」

「えぇ。だめですか?」

仙道は、不安そうに三井をみる。

三井は、仙道のその、飼主にしかられた大型犬のような眼に弱かった。

それに、これから混んだ電車に乗るのも、億劫だったし、三井は、仙道の提案に乗ることにした。

「ふー、しかたねーな」

「やった!」

仙道が三井に抱きつく。

慌てて、三井は、仙道の腕から抜け出そうとじたばたする。

「ば、バカやろ!往来でこんなことすんなっていつもいってるだろ!それに!今日は疲れてるんだからな!Hなことは無しだぞ!それなら、てめーの家に泊まってやる」

「えぇ?そんなー」

「嫌なら、このまま帰る」

「うーっ、わかりました。我慢します。だから、このまま帰っちゃうのは無しですよ」

仙道は、しぶしぶだが、三井に同意する。

まぁ、事をはじめてしまえば、三井は仙道から逃れられるわけがないので、とりあえずここは同意しておいて、三井を家に連れ帰ることが先決だ。

あとは、成り行きでなんとでも、傾れこめるだろうと計算をして、気力を奮い立たせる。

「それじゃ、帰りましょう」

下心たっぷりの送り狼仙道の誘導で、あかずきんちゃん三井は彼の借りている下宿へと向かった。

 

はたして、仙道の邪な目的が達せられたのかどうかは、皆さんのご想像にお任せするということで…。

 

 

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Revised: 2001/07/02 .