HPカウンターキリ番「4714」リクエスト:For どこそこAさま
お題:「冬っぽくロマンチックな牧×三」。
うーん・・・。
設定はロマンチックなはずなのに…。
ちっともロマンチックになりませんでしたか…。
すみません。写真おまけにつけましたので、そちらでロマンチックさをご想像ください(轟沈)
お待たせしたうえに、この出来で、申し訳ありません
![]()
ロマンチック…?
「さあ、これや!行って来るよな?」
土屋が、目の前にチケットを差し出した。
「ホントにいいのか?」
三井が、疑わしそうに、チケットに手を出す。
「半額でええって言うたやろ?」
「うん、まぁ」
「お代は帰ってきてからでええって」
ほんなら気ィつけていって来ィやと言いながら、土屋は手を振って学食から出ていった。
残された三井は、目の前のテーブルの上に置かれたチケットを睨んでいる。
「どうしたんだ?三井」
B定食のトレイを持って、牧が戻ってきた。
三井が睨んでいるチケットに気が付く。
「?どうしたんだ?それ?」
「土屋がさぁ」
「土屋が?」
「半額でいいって言うから…」
牧が、トレイを置いて、チケットを手にする。
「神戸行きの新幹線とホテルのチケットじゃないか」
「うん」
「半額でいいって言うのか?」
「うん」
「怪しいな」
「だろ?俺もそう思うんだ」
「しかし、まぁ、偽物ではなさそうだが」
「人聞きの悪いこと言うなぁ!お前等、せっかくの人の好意をそう言うか?」
いつのまにか、戻ってきた土屋が、腰に手を当てて、二人を睨んでいた。
「土屋ぁ!」
三井が、怖そうに牧の陰に隠れる。
「ミッチー…」
「土屋、このチケットどうしたんだ?」
牧が間に入って、話をつなぐ。
土屋の言うことには、知り合いに頼まれてその男と彼女のデート用に、神戸の2泊3日の旅行を計画してやったのだが、結局その二人が別れてしまい、チケットが中に浮いてしまったのだ。
直前すぎて、ほぼ全額キャンセル代にとられてしまうので、土屋が、半額で買い取ってやったのだという。
「土産は、ゴーフルでえぇから」
そのチケットを、牧たちに売りつけようとしているのだ。
「そうか…。しかし、明日からとは急な話なんだな」
「季節限定やからな」
「?」
「この時期の神戸は、観光シーズンなんや」
「この寒い時期に?」
「そうや。まぁ行ったらわかるって」
そういうと、今度こそ学食から出て行ったようだ。
「どうする?」
「どうもこうも、行かないと俺たちがキャンセル料払わないといけないんじゃないか?」
「俺もそう思う」
「仕方ないな。急だけれど、ちょうど明日からの連休は予定もないし、行くか?」
「うん!俺、実はこの2日目の温泉が、気になってたんだ」
「有馬温泉か。確かに有名な温泉だな」
「だろ?行ってみてーよな」
三井がうっとりと呟く。
結局、二人は、急いで大学から帰宅し、神戸行きの仕度をしたのだった。
「うわー。海だー」
新神戸で新幹線を降り、地下鉄と、送迎バスを乗り継いで、元町の海沿いに立つホテルに着いた。
部屋に入って窓の外を見ると、真正面に神戸港が広がっている。
「あれが、ハーバーランドだな。目の前のホテルが神戸メリケンパークオリエンタルホテルか」
手にした観光地図を見ながら牧が確認する。
ホテルの窓から向かって右がハーバーランド。正面が神戸港。左にポートアイランドが見える。
二人は、とりあえず周辺を観光することにした。
土屋が、周辺の観光施設や、時間の過ごし方をメモして入れてくれていたので、それを参考にぶらぶらしてみることにした。
ホテルからすぐのポートタワーに上ってみる。
ここからは、360度神戸の町が見渡せる。
地図を見ながら、大体の観光施設の方角を見る。
「三井、これから、どうする?土屋のメモだと、今日はルミナリエというのをやっているようだ。それは夜遅くから見に行くといいとかいてあるから、夕食の後行くとしよう。それまで、何処に行きたい?向こうが北野、異人館がある。ここはハーバーランド、港と商業施設があるらしい。船の遊覧とかもできるようだが…?で、そのあたりが、元町だ。南京町があるらしい。まぁ、土屋が言うにはッ横浜の中華街を見ている俺たちには、小さく感じるだろうということだ」
「んー。南京町は、明日の昼メシ喰う方がいいって言ってたから、今日はハーバーランドか、異人館かなぁ」
「全体に、横浜と共通するようなところが多いらしいな。さて…」
結局、二人はハーバーランドをぶらついて、船で港遊覧することにしたようだ。
久しぶりで海を見ていたかったのかもしれない。
ハーバーランドの突堤に、コンチェルトという船が接岸している。
ちょうど、午後のケーキバイキング付きの神戸港遊覧があるようなので、それに乗ることにした。
ハーバーランドモザイクの1階で、チケットを購入して、少し待って船に乗り込む。
船に入ると、バイオリン奏者が、入り口すぐの小さなホールで、曲を弾いていた。
船内は、弦楽とピアノの生演奏を聞きながら、ケーキを食べて、神戸港を遊覧するようになっているらしい。
決められたテーブルについて、あたりを見渡す。
「うーん。女性ばっかり」
女性グループか、男女カップルばかりの客の中で、彼らは、若干浮いていたようだ。
「まぁ、神戸自体が、女性向のまちだから仕方ないな」
牧も苦笑している。
コンチェルトが、発進すると、彼らの座っている大ホールで、ピアノとバイオリンの二重奏が始まった。
バイキングも始まり、三井がさっさとケーキを取りに立っていた。
牧は、若干甘いものが苦手なので、サンドイッチか何かがないかと遠目に物色を始める。
三井が、皿に山盛りのケーキを載せて戻ってきたので、牧はそれを見ただけで、胸焼けしそうだった。
交代で、牧が甘くなさそうなものを物色して皿に載せて戻ってくる。
その後、牧が再びコーヒーと三井用の紅茶を取りに行き、席に戻ってくる。
「じゃ、いっただきまーす!」
ハートマークがついていそうな口ぶりで、三井がケーキに手を伸ばす。
美味そうに食べる三井に、牧は、感心しながら窓の外を見る。
船はどうやら、船舶ドック工場を進んでいる。
「あ!潜水艦だ」
ドックの横に海上自衛隊の潜水艦が接岸している。
どうやら修理か点検に来ているようだ。
その様子を横目に、コンチェルトは須磨を越えて明石大橋が見える海域までやってきて、方向転換して再びハーバーランドまで戻るコースをとる。
その間およそ、1時間と少し、三井は、ケーキやアイスクリームを食べまくり、満足そうに船を下りた。
「あー、食った食った!」
牧が思い出しても吐きそうになるくらい、三井はケーキを胃袋に納めていた。
「夕食入るのか?」
「ん?甘いもんは、別バラだって」
三井が、けろっと答える。
「夕食も何処にしたいか考えておいてくれよ」
「うん、あのさ、ハーバーランドもいいんだけど、ホテルでイタリアンディナーバイキングやってたんだけど…」
「それがいいのか?」
「うん、なんか、ルミナリエの間ってこの界隈は食事場所に困るって、土屋が言ってたんだ。ホテルで食べるのが無難だって」
「そうか、それならここで時間を潰して、ホテルに戻ろう」
「うん!」
ハーバーランドで観覧車に乗ったり、雑貨屋を見て歩いたりして、時間を過ごし、彼らはホテルに戻っていった。
ホテルで、バイキングで、再び大食いの証明をして、三井は、部屋に戻ってきた。
「ふわー。食った食った!」
もう入らないといって、ベッドにダイビングする。
牧は、三井の転がったベッドを横目に、窓に目をやると、窓の外には夜が迫っていた。
「三井、さっきいたモザイクが、きれいだぞ」
さっき乗った観覧車が、ネオンで輝いている。
夜の神戸港の景色が広がっていた。
「ほんとだ。向かいのホテルも、ライトアップしてるんだな。これって、このホテルから見ると得した気分なんだ」
「そうだな、あそこに泊まっていたらこの景色は見れないんだな」
窓際に腰掛けて三井の呟きに牧も同意する。
牧は、三井を後ろから抱きしめて、首筋にキスを這わせる。
「くすぐってーよ。牧」
くすくす笑いながら、首を竦める三井の向きを変えて、牧はキスを迫る。
「…んっ」
三井もすんなり応じて、いい雰囲気になったと思ったのもつかの間。
「なぁ、何時ごろルミナリエ見に行く?」
三井が、我に帰って牧に尋ねる。
「土屋は9時以降にしたほうが良いといっているよ」
「そっか。まだ時間あるんだ」
牧から離れて、三井は再びベッドに転がった。
「三井?」
「ちょっと寝る」
どうやら、お腹がくちくなったので、眠気が出てきたらしい。
「食べてすぐ寝ると、牛になるぞ」
牧の小声の愚痴も聞いていないようで、三井はすよすよと眠りだした。
牧は、溜息をついて、自分のベッドに腰掛けた。
小さい音でテレビをかける。
出かけるまで小一時間。
三井の寝息と牧の溜息が、部屋に聞こえていた。
「三井。そろそろ起きろ」
「んーっ」
大きく伸びをする三井に、牧はそろそろ出かけるから支度をしろと、声をかける。
風邪をひかないように、完全防備で、ホテルを出る。
ホテルから会場までは歩いて10分もかからない。
途中、ホテルに戻ってくる人たちとすれ違いながら、牧達は会場に向かった。
「うわー。きれーだ!」
神戸大丸の近くにある通りが、ルミナリエの会場だ。
そこには、数メートル間隔に電飾のアーチが立っている。
白、赤、青、緑、黄などの小さな電球を、白い木の枠に飾りつけてある。
通りにそって光のアーチをくぐりぬけていく。


通りをぶらぶらと歩いていくと、最後に公園にたどり着く。
そこにはひときわ大きな光のモニュメントが立てられていた。
「なんか、すげー」
三井はひたすら感激している。


寒さに、少し震えながらも、そこを動こうとしないので、牧は、三井の肩を抱いてやる。
「まき」
「少しは寒くないだろ」
「うん」
二人は、三井が、くしゃみを連発するまで、その場に佇んでいた。
牧が慌てて、三井を引っ張ってホテルに戻る。
三井は、ホテルに帰るまで、ひたすら綺麗だったと喋っていた。
「すぐにシャワーを浴びるんだ。体が冷え切ってるだろう?」
「うん」
三井も寒かったのか、さっさと風呂に入り、温まって出てきた。
牧も交代ですぐに入る。
身体を洗っている間、牧は、三井が果たして待っているかどうか不安だった。
もしかして、もう、眠ってしまっているのではと、普段以上にカラスの行水で出て行った。
三井は、窓際で、港の夜景を無心に見ていた。
「窓際も寒いんじゃないか?なんだ、冷えてるじゃないか」
「うん…。でも、牧が暖めてくれるだろ?」
「三井」
三井が、牧にぺったりと抱きつく。
「やっぱり、牧って暖たけー。体温たけーのな」
くすくす笑って、三井はいっそう身体を押し付けてくる。
牧は、三井を抱えて、ベッドに入ることにした。
「三井、もう寝るか?」
「うん」
そう言うと、三井は、牧の懐の中をごそごそしていたが、ちょうどいい寝心地のところを見つけたのか、ふうと、息をはいた。
「じゃぁ、おやすみ」
牧を残して、眠ろうとした。
「三井?」
「んー?」
「寝るって、ホントに寝るのか?」
牧が間の抜けた質問をしたので、三井が頭を上げる。
「あぁ、そうだけど。だって明日温泉だぜ。露天風呂もあるだろうから、キスマークなんかつけてられねーだろ?だから、もう寝ようぜ!明日は南京町にもいかねーとな。じゃ、おやすみ!」
いいたいことを言った後、問答無用とばかりに三井は牧の懐に潜り込んだ。
牧は、仕方なく、部屋の明かりを消して、明日の温泉地に賭けることにしたようだ。
窓の外では、モザイクの観覧車のイルミネーションが静かに輝いていた。
本当なら、かなりロマンチックな設定なのだが、間もなく、部屋には健康的な二つの寝息が聞こえてくるだけとなった。

![]()