BBSカウンターキリ番「4500」リクエスト:For 蘭堂さま

お題:牧×三井で三題話『たき火、縁側日なたぼっこ、雪見で温泉

す、すみません。

季節はずれになっちゃった…。

長い間お待たせしたうえに、この程度とは…。

なんかありがち?

おやすみ東京ex.キリ番篇 

緊急報告『アントワネット様温泉へ』

 

「三井?」

木枯らしの吹く2月のある日。牧は、先に帰ったはずの三井の姿を、思いがけない道端で見つけて声をかけた。

「おう、牧」

「何をしてるんだ?」

「ん?見てわかんねぇ?たき火番だよ」

「たき火番?」

三井は、たき火の前にしゃがみ込んで木の枝で落ち葉の中を突いていた。

「おう、ここのじーちゃんがたき火の準備してってときに通りがかってさ。さつまいも入れようって話になって、俺が番をすることになった」

「…」

たき火で、まぁ、焼きいもをするのはわかるが、それで何故、三井がたき火番をしているのかがイマイチわからなかったが、牧は、三井の機嫌がよさそうなので黙って様子を見ることにした。

「なんだよ?あっ!お前の分はねぇぞ!俺とじーちゃんとばーちゃんの分だかんな!」

「いや、別に芋が欲しいわけではないから安心しろ。暖かいから近寄ってるだけだ。しかし、ここの家のご主人と知り合いなのか?」

たき火に近づく者を威嚇している三井に、苦笑しながら同じようにしゃがみ込んだ。

「ん?おう、時々ここの犬と遊んでるうちに知り合いになってよ。帰りによく話すようになったんだ。ここんちの犬がまたでかくて抱きつきがいがあるんだよなー」

三井が嬉しそうに牧に話すのを聞いて、そう言えば、この家には茶色い犬がいたのを思い出す。秋田犬の雑種のようで、見かけの割にはなかなかに人懐っこい犬だ。老人がよく散歩をさせているが、いつも大人しく道を歩いているのを見かけることを思い出した。

「三井は、犬とも仲がいいのか?」

「おう、ここの犬…。あ、仁左衛門っていうんだけどさ。抱きついても怒んないんだよな。たまに散歩にいくんだ」

ばーちゃんが先代と当代の片岡仁左衛門親子のファンなんだってよと、三井が名前の由来補足説明をする。

「そうか。ここの奥さんは歌舞伎ファンなんだな」

「なぁ。片岡仁左衛門って誰?」

「え?」

「なんか、聞けねーんだよ。最初に誰って言いづらくってさ…」

三井は、ブツブツ言いながらたき火の中のアルミホイルの包みを転がしている。

「あぁ、片岡仁左衛門は歌舞伎の俳優さんだよ。当代って言うのは確か15代目で、先代は13代目のことだろう。関西歌舞伎の看板役者だよ。今の仁左衛門は東京中心に活動してるみたいだな。大河ドラマにも昔出てたし、CMにも出ていたな」

牧は、14代目がいないと不思議そうに言う三井に、説明をした。ここ数代片岡家は二つの家系が交代で仁左衛門を名乗っていたが、今回先代から当代へと親子で継承されてしまったため、もう一家の亡くなった俳優さんに追号で14代目を送ったのだということなどを簡単に説明した。

「ふーん。そうなんだ。牧って歌舞伎好きなのか?」

「まぁ、嫌いではないな。親によく連れられていったからなぁ。子供のころは訳がわからなかったが、最近は解説サービスもあって結構面白くなってきたよ」

「そっか。俺も一回見にいこーかな。ばーちゃんと話も合うしなぁ…」

「何事も体験だよ、三井。今度わかりやすい演目が立ったら教えてやるよ。話の内容によって、初心者にもよくわかる話とそうでない話があるからな」

「うん!」

「ところで、ここのご主人はどうしたんだ?」

「ん?寒いからって縁側で日なたぼっこしてるんじゃねーかな」

「それで、三井が火の番をしてるのか?」

「おう、芋と交換条件だって言われてさ…。あっ!芋に釣られたわけじゃねーぞ!じーさんが寒そうだったから手伝ってるだけだからな」

芋に釣られたんだなと、牧は思ったが賢明に黙っていた。

「そうか、確かに、じっと立っていると足元が寒いな」

「おう、火に当たってるとこはいいんだけど、背中がなぁ…。ときどき背中も暖めねーと風邪引きそうだよな」

「三井も寒がりだからなぁ」

「家に帰ったら風呂に入って暖まりてーよなぁ」

「わかった、帰ってきそうな頃に風呂を入れておいてやるよ」

「え?ラッキー!じゃ、あと小一時間くらいで帰るから、風呂よろしくな」

三井が嬉しそうに言うので、牧は快諾する。

しばらく、三井と立ち話をしていたが、牧は先に部屋に帰ることにした。

立ち去る時も、三井は真剣にアルミの包みを転がしている。

三井は、焼き芋が好きなのか、たき火でこうやって焼き芋をすることが好きなのか、今ひとつわからない牧だった。

 

牧が、三井と住む下宿に戻ってきて、約束通り風呂に湯を張リ終わった頃、三井が帰ってきた。

「ただいまー」

「お帰り。三井。風呂に湯を張ってあるぞ」

「え?サンキュー!じゃ、俺先に入っていい?」

「あぁ。冷えたんだろう?ゆっくり温まるんだぞ」

「おう!」

そそくさと着替えを持って三井が風呂に駆け込んだ。

どうやらかなり寒かったらしい。

牧は、夕食の用意をしながら三井を待つ。夕食は一応交代で当番制ということになっているが、だいたいは早く帰った方がすることになっている。どちらにしても、牧が用意をする確率が高かった。

三井に任せておくと彼の好きなものばかり作るので、栄養が偏ってしまうと牧が不安に思ったせいだ。

なるべくなら、身体にいいように肉も野菜もたくさんの品目を入れるように考えてはいるのだ。

用意が終わった頃に、三井が風呂からあがってきた。

「ふえー。生き返ったー。やっぱりたき火だけじゃ、寒いのなー」

「そうだな。温かい湯に浸かるのが一番かもな」

「あー、温泉いきてぇ」

三井がこぼす。

「なんだ?三井は温泉に行きたかったのか?」

「え?だってよ、冬だろ?雪見で温泉が基本じゃんか」

「基本なのか?」

「基本だよ!露天風呂で雪見ながらぼんやりするのが日本人の基本だ!」

やたら、主張するので牧はそれならと声をかける。

「それじゃぁ、温泉いくか?」

「え?いいのか?」

「あぁ、三井のお勧めの雪見のできる露天風呂を教えてくれよ。予約をさっそくいれよう」

牧は、実を言うと土屋に借りがあり、三井のナマ写真を撮ってくるようにという厳命をうけていた。

指定は寝姿かセクシーショットだったが、牧としてはとんでもないと考えていた。

以前、寝乱れた姿を写真販売したところ、飛ぶような売れ行きをみせてしまったため、牧は警戒しているのだ。

しかし、借りは借りだ。

金銭的な借りではないので、なかなか返済がままならない。

下手すると、土屋のことだから、もっと訳のわからない要求にエスカレートすることも考えられる。

利息が膨らまないうちに、さっさと借りを返しておきたいのだ。

そこで、牧は、温泉で上半身が写る程度なら、まぁ許せないこともないかと考えて、露天風呂写真を思いついた。

「やったぁ!だから牧って好きなんだ!」

そう言うと、三井は牧に抱きついた。

こんなときだけ、サービスがいいなと思いながらも、若干の後ろめたさを感じていた牧は、しかし、せっかくの据え膳だと開き直り、三井にキスをする。そして、パジャマのボタンを外して三井を美味しくいただこうと鎖骨に軽くキスを落とした。

「んッ…。ま、牧!」

「ん?どうした」

「メシ、冷めちゃうよ…」

「冷めるようなことしてもいいんだ?」

「ば…ッ!牧のエロオヤジっ!」

「ひどいな…。じゃぁ、お言葉に甘えてエロオヤジッぷりをお見せしようか?」

「わっ!い、いい!見せてもらわなくてもいいって!」

そう言うと、三井はじたばた暴れて牧の腕から逃げ出す。

牧も、食卓を前にあまりしつこいと、三井が機嫌を損ねるだろうから、ここは引いて、後でゆっくり三井をいただこうと考えた。

「わかったよ。今はまず夕飯が先だな」

「お、おう。夕飯が先だ」

 

夕食後、牧のエロオヤジッぷりを身をもって体験した三井は、口は災いの元という言葉をあらためてかみしめた。

数日後、三井が露天風呂で雪見をしながらご機嫌でピースサインをする姿が三井親衛隊『アントワネット様をフェルゼンとアラブの王族から守る会』発行の『ミッチーウォッチ』に掲載されたことは三井には内緒である。

 

 

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Revised: 2002/05/11 .