HPカウンターキリ番「3714」リクエスト:For ぼてみさま
お題:牧×三井で、
「なんでこんなに三井を甘やかしてしまうんだ、俺は・・・」な牧さん
すみません。
なんだか、ボケたおしな帝王様になってしまいました(笑)
甘々な牧×三を目指したのに、やや玉砕気味です。
ぼんやりな牧の独白にしたのが、失敗だったのかも…
帝王の知られざる悩み
「甘やかしとんなぁ」
土屋が、俺を見てにやりと笑う。
「甘やかしてますよ」
憮然と、仙道が俺に零す。
「甘やかしてるべ」
河田が溜息をついた。
「そうか?」
俺は、初耳といった感じで答える。
「自覚もないんか?」
やってられないというように、3人は肩をすくめ、処置なしと言って帰っていった。
そんなに、甘やかしているのだろうか?
誰をって?
無論、三井のことだ。
俺自身は、そんなに甘やかしているという自覚がなかったんだが、どうやら、俺は、三井に甘いらしい。
言われてみると、そうかもしれない。
今だって、三井が、洗濯当番だったはずだが、湘北の後輩達と遊びに行ってしまったので、仕方なく、俺が干している洗濯物を取り込んで、アイロン掛けをしているわけなんだが、やはり、これも三井を甘やかしているのだろうか?
しかし、三井が帰ってくる夜まで、洗濯物を放置しておくと、夜露で湿気てしまうし、取り込んだままでは皺になるから、畳んでおいたほうがいいし、これは仕方ないことだと思うんだが…。
そういえば、三井の帰りが遅いな。
湘北の後輩の宮城と桜木と流川がいきなり、この下宿にやってきたのには驚いた。
あの傍若無人さは、いくら上下関係に煩くない湘北とはいえ、ちょっと如何なものかと思うが…。
まぁ、三井が、嬉しそうにしていたから、これでいいんだろうと思う。
しかし、帰りが遅いな。
駅前まで迎えに行ったほうが良いかな?
はっ!
これが、三井に甘いということか?
うーん。
だが、駅前は夜になると物騒だから、三井が何か困難に巻き込まれないように、見に行った方が、俺自身が安心するか。
これはいたしかたないことだと思う。
うん、そうだ、これは、仕方ないことだ。
「牧!」
三井が、笑って手を振って、こちらにやってくる。
ちょうど、帰ってくる三井に遭遇することが出来た。
ラッキーなタイミングだったな。
「どうしたんだ?こっちに用があったのか?」
三井が小首を傾げて俺を見る。
あぁ、なんて可愛い仕草なんだ。
もうすぐ、20歳になろうかという、男をつかまえて、可愛いも何もないとは思うんだが、三井に関しては、可愛いとしか言い様がないじゃないか。
無意識に俺に甘えているようなのが、これがまた、たまらないんだが…。
「あぁ、ちょっと本屋に行こうかと思ったんだ」
「え?もう行った?まだ?俺も見たい本あるんだ!一緒に行こうぜ」
「あぁ」
三井と本屋に寄る事になった。
探している本があるのは、事実なので、ちょうどよかった。
俺が捜していたのは、料理のレパートリーを広げるための、クッキングブックだ。
やはり、栄養バランスもよく、美味いものを食べたいし、普段の適当な料理の他にも、時間があればもっと手の込んだものも作ってみたいと思うわけで、わかりやすそうなものを捜していたのだった。
ちょうど、手ごろな物を見つけたので、それを買った。
三井は何やら週間雑誌を買っていたようだ。
帰りに、夕食の食材を買って帰り、今日は、適当に食事当番を済ました。
次回からは、買った本を参考にしよう。
「牧さん!」
海南の後輩、清田が電話をかけてきた。
何でも、進学のことで相談したいということなのだが、下宿に呼ぶと、三井とあれこれと喧嘩するので、駅前のファミレスを待ち合わせ場所に指定した。
待ち合わせの店に、三井がついて来た。
「なんで、こいつがいるんですか!」
「てめぇ!年上に向かってこいつってなんだ!」
やはり、いきなり口喧嘩を始めてしまった。
「こら、二人ともやめないか。大人気ないぞ」
清田に謝るように促し、三井を宥めて落ち着かせようとする。
「で、清田。俺に相談ってどうしたんだ?お前は、そのまま海南大に進学するんじゃないのか?」
「はぁ…」
清田が三井をチラッとみたが、とりあえず、他校からもスカウトが来たらしく、どうしたら良いのかということだった。
「お前は、どうなんだ?海南に進みたいのか、そのスカウト先に行ってみたいのか」
別に、海南大に無理して進学する必要はないはずだ。
清田の行きたいほうに行けばいいと思うんだが、バスケ推薦だと、確かにバスケを中途で止めたりすると、退学を余儀なくされる場合もあるし、内部進学の海南の方が、もしもの時は安心して進学できることはできるんだが。
まぁ、スカウトとの交渉で、もしもの時の条件をつけておけば、それはそれでいいわけだが…。
一応、その旨をアドバイスしてやる。
まぁ、俺も他校推薦だったわけだから、自分の行きたいところに行くのが一番なんだ。
そんなこんなで、清田の相談話が終わった。
そういえば、三井が大人しいな。
ふと、横を見ると、俺に凭れて居眠りしている。
うっ、なんて無防備な顔して眠っているんだ、三井…。
「牧さん、なんか、そいつに甘いっすよね」
清田が、何故か不満げに零す。
「そんなことはないと思うが…」
「だって、牧さん、高校のとき、同級生にそんな甘い顔見せたことなかったはずッス」
「そうか?」
「そうです!牧さんは、神奈川の帝王って呼ばれてて、いつも厳しく堂々としてましたって。そんな、横で涎たらして寝こんだ奴なんて見たら、きっと弛んでるって注意して説教してましたって」
「そうだったかな」
そうなのか?
俺はそんな風に、見られていたのか。
俺自身は、海南時代から、さほど変わったとは思わないのだが、後輩達から見たら、甘くなったと思えるんだろうか?
体育会系の部活だから、上下関係が、厳しいんだし、そう見えただけだと思うんだが。
首をひねっていると、清田が、呆れたように言う。
「牧さん、鼻の下延びてますって」
失礼な。
誰が、そんなに鼻の下を伸ばしているんだ。
「甘やかしすぎッス」
「ウルセーなっ。牧はこれでイーんだよ」
いつのまにか、目を覚ました三井が、なっ、と俺のほうを向いて確認する。
三井…。もしかして寝ぼけてるんじゃないか?
「んなわけねーだろ!テメー!牧さんから離れろって!」
「牧は、俺が甘えた方がイーんだよなー?」
そう言って、三井が俺にしなだれかかり、軽くキスした。
完全に寝ぼけているな。
嬉しいが、あとが大変じゃないか…。
周囲の注目を浴びているぞ。
もう、この店は来れないな…。
「ま、牧さん!!!」
清田が悲鳴をあげている。
そういえば、こいつは、俺と三井が付き合っているのを知らなかったか…。
俺は良いんだが、三井、あとで困るだろうに。
「三井?」
頬を軽く叩いて、三井の覚醒を促す。
「ん?あれ?」
「目が覚めたか、三井?」
「んーっ、帰る」
そう言うと、俺の手を取りかえろうと促す。
「そうか」
俺も、話は済んでいるからと、席を立つ。
「え?ま、牧さん?」
「じゃぁ、清田、悔いのないように自分の道を選ぶんだぞ」
伝票を持って、三井を伴い、周りの視線の痛い中を、レジに向かう。
「ま、牧さん、待ってくださいよ」
清田もついて来た。
確かにこの中で一人残るのは、辛いだろう。
店を出て、三井は下宿に向かう。
「なんだよ。野猿は用が終わったんだろ」
ついてくる清田に向かい、三井がつれなく声をかける。
「なっ!てめー!」
「清田…」
「牧さん!やっぱりこいつに甘すぎますって!一発がつんと言ってやらなきゃ、いつまでもこのままっすよ!」
「うっせーな!牧は俺に甘くていいんだよ!」
「な、なんでだよ!」
「それは、こいつが牧だからだ!」
「はぁっ?」
「行くぞ、牧!」
呆気にとられた清田を置いて、三井は俺の腕を抱えて、下宿に向かおうとする。
「清田、気をつけて帰れよ」
俺は、三井に引っ張られながら、一応、清田に声をかける。
清田は、我に帰ったようで、どうやら諦めて帰るらしく、駅に向かっていった。
しかし、俺はそんなに、三井に甘いんだろうか?
考えてみると、確かに甘いかもしれないな。
しかし、三井に厳しくといってもどうすればいいんだろう?
バスケに関しては、無論、甘やかしてはいないと思う。
お互い、少しでも上を目指しているのだ。
妥協は許さない。
しかし、恋人としての三井には、厳しくする必要がないじゃないか。
俺は三井に、懐かれるのが嬉しいし、三井はどうやら寂しがりらしい。
需要と供給が一致しているのだから、これで十分じゃないのだろうか?
周囲の意見は、やっかみではないのだろうか?
それが、最近の小さな悩みでもある。
「なぁ、牧。お前、俺を甘やかしてるか?」
部屋に戻って、三井が、ぽつりと零した。
気にしてたのか?
「さぁな。最近、あちこちで甘やかしているといわれるが、俺自身はそう思ってないな」
「…。やっぱり、お前、俺に甘めーかも…」
「そうか?」
三井ですら、甘やかしていると思っているのか。
三井は、それが嫌なのだろうか?
「三井はそれが嫌なのか?嫌ならなるべく気をつけるが」
「別に…。おまえがそれで良いんだったらイイ」
三井は、俺にぺったりと抱きついてきた。
抱きしめ返して、三井の指通りのいい髪を手で梳いてやる。
何故か、今日の三井は甘えん坊だな。
俺としては、可愛くて歓迎なんだが…。
はっ、これが、甘やかしているということか?
うーん…。
まぁ、これでお互い不満がないのだから、これでよしとしておこう。