HPカウンターキリ番「2714」リクエスト:For 鮎川さん

お題:仙道×三井で『フツーはデートコースにしないっスよ、三井サン!』と宮城君から突っ込まれそうな

    場所でデートする二人。

デートコースに悩んじゃいましたね(笑)…。なんか、仙道なら、どこでもデートコースにしちゃいそうで(笑)

ごめんなさいね、お待たせした割にこの程度で(泣)

 

 

これはこれでデートな一日

 

 

「三井サン、明日の土曜、自主練どうすんですか?」

部室で着替えていると、宮城が尋ねてきた。

「え?俺?明日は、ちょっとパス」

「あれ?デートっすか?」

「う?い、いや…」

「デートっすね?」

三井が口篭もっていると、宮城が断定した。

「どこ行くんです?」

「ど、どこだっていいだろ!」

「ほう、いいんですか?あいにく明日、俺もちょっと、訳ありで出かけるんですが、鉢合わせしても?」

「う、うっ…」

「いいんですね?」

困る。

それは、とても困る。

実は、三井の相手というのが問題だった。

これが、可愛い女の子なら、別に宮城に見られたって、なんとも思わないのだが、三井の相手は、宮城達にあまり見せたくは無い相手だった。

三井が、現在お付き合いしているのは、ライバル校である、陵南高校のエース仙道彰その人であった。

三井と、仙道の付き合いの馴れ初めは、国体に県の選抜代表として選ばれて、参加した合宿で同室になったことからである。

お互い意識しあって、気がつけば恋愛関係に陥ってしまっていた。

その後、ウインターカップが終わり、三井が、大学への推薦に合格し、そろそろ引退を考える頃になっても、その関係は、続いていた。

「さぁ、三井サン。キリキリ白状したらどうです?」

「うー…」

「わかりました。明日デート先で、お会いしたらご挨拶させていただきますよ。うちの三井サンがお世話になってますってね」

そう言うと、宮城は、バッグを手に部室を出ようとした。

「ま、待ってくれ!」

「白状する気になりましたか?」

「わ、わかったよ…。だから、いったとこにはくんなよ?」

「わかりましたって。三井サンがコイビトを内緒にしてるの十分にわかってますから。お邪魔したりしませんって」

「じゃ、邪魔だけじゃねーぞ。覗きにも来るなよ」

「わかってますって。秘密主義なんだから。三井サンから紹介してもらうまでは、アレコレ詮索しませんって」

「ほんとだな!約束だぞ」

「はいはい。で、明日はどこに行くんですか?」

「…」

「三井サン?」

「う…。わかったよ。料理教室だよ」

「はい?」

「だ、だから、俺、4月から一人暮らしだろ?だから、基本的なこと習っとけっておふくろに言われて…」

「それで、習い始めたんですか?」

「お、おう、明日で3回目だ」

「へぇ、コイビトと一緒に料理教室ねぇ」

「悪いかよ」

「いえ、別に、そういうわけじゃねーっス。でも、それってデートなんスか?」

「う…。じゃ、なんだってんだよ」

「うーん…。そういや、そうですね。二人でアツアツの料理教室ですか。いいかもしれませんねぇ。コイビトに手取り足取り手伝ってもらいながら、目指せ、男の手料理ですか」

今ひとつ納得できないようだが、とりあえず、教室のある駅前周辺には、宮城に近寄らないことを約束させて、三井は一安心した。

なんといっても、三井のコイビトは、身長190cmを優に越す大男だ。

しかも、役割的にいえば、三井が彼女かもしれない。

まぁ、尽くしているのは、どちらかというと仙道かもしれないが…。

どちらにせよ、仙道と付き合っているのは内緒だ。

まぁ、神奈川県の国体代表は、それとなく感づいてしまったようなのだが。

合宿の後、国体に出かけて、あちこちで、仙道と三井の2ショットが目撃されている。

しかも、仙道がラブラブ振りを発揮しているので、あの二人はどうやら出来ているらしいと、噂が回っていた。

宮城は、一度、仙道に確かめたことがある。

その時、仙道は、にっこり笑って『ないしょ』といいながら、ハートマークを飛ばして三井を盗み見ていたのだ。

そんなこんなで、宮城はどうやら三井の相手を感づいているが、三井には面と向かって聞いたことは無い。

漏れ聞くところによると、仙道が陵南のチームメイトに、コイビトは恥ずかしがりで、付き合っていることを回りに知られたくないらしいから言えないと零しているらしいのだ。

宮城が感づいていることを知れば、三井の精神の落ち着きが、一目で悪化するはずだ。

それでは、新生チームの強化に手を貸してもらっている三井の不安定さが、普段の練習に出てきてしまうかもしれない。

これで、この先輩は、メンタル面に左右されて普段の練習の質が乱高下してしまうのだ。

せっかく大学に入れるのに、怪我させては元も子もないし、新しいチームにも何らかの影響があるかもしれない。

そんなこんなで、宮城は、相手を問いただすことをしていないのだ。

「じゃ、デートって言いにくいデートですが、三井サンお気をつけて」

そういって、宮城は三井と部室で別れた。

一方、三井は、宮城にあまりひどく問い詰められなかったので、一安心して、急いで着替えて帰路につく。

きっと今日は、仙道から電話が入る。

仙道は、毎日電話をしたがるのだが、三井が、それを許さなかった。

普段は、携帯にメールを1日に1本だけ打つことを許している。

そうしないと、仙道は止め処なく電話をかけ、メールを打ってくること間違い無しだった。

なんといっても、三井と付き合い始めた時に1日とあけずに電話を掛け続け、メールを1時間に数本打ちつづけるという、一種のストーカー並の攻勢をかけてきたのだ。

練習後、ぐったりしている時に付き合うには、三井には、辛すぎたので、とうとう、この令達を下したのだった。

今でも、1日1本のメールは、文字数いっぱいいっぱいまで、ぎっしりと書き込んでくるし、電話は、何か待ち合わせとかがある日の前夜だけ許しているが、翌日会うというのに、長々と愛の言葉を囁かれるので、三井は少し困っている。

まぁ、嬉しい困惑ではあるのだが…。

さて、帰宅後、長々としたメールを受け取り、長々とした愛の囁き電話を受けた三井は、あっさりと『んじゃ、おやすみ。またあした』という、ひらがなだらけのメールを返して、明日の為に早めに休んだ。

 

翌日。

仙道と駅前で待ち合わせて、料理教室に向かう。

場所は、陵南高校の近く、仙道の下宿のある最寄駅の駅前にある教室を選んだのだ。

『一人暮らしの簡単な手料理』コースは、単身赴任の小父様方の味方として開講されたコースだ。

しかるに、参加者のほぼ全員が、殿方である。

三井のクラスでは、仙道が、最年少だ。

単身赴任のお父様方と、和気藹々としながらの講習は、今日はパスタの作り方だ。

「三井君、熱湯危ないから気をつけようね」

「三井君、包丁危ないからゆっくりとね」

同じテーブルの小父様方が、アレコレと三井の世話を焼く。

三井は、返事をして、一生懸命キノコを切り分けながら(今日はキノコのホワイトソースらしい)、時折パスタ鍋の中を覗き込んでいる。

同じテーブルの小父さん達には、一人暮らしをするので、切羽詰っていることと、甘やかして手伝わないで欲しいということを、前もってお願いしているのだ。

小父さん達は、約束した手前、注意するだけにとどめているが、かなり危なっかしく、ぎこちない三井に、はらはらさせられどうしだ。

しかし、完成した、料理の試食で、うまく出来たとにっこり笑う三井に、くらくらきてしまい、あれこれと注意をせずにはいられないほど、彼らは三井にはまりつつあるのだ。

一方仙道は、講師先生のお気に入りになってしまい、三井とは違うかぶりつきテーブルに、配置されていた。

仙道は、一人暮らし歴も、もう2年。

最低限の料理の基礎は身についていて、今更教室に通う必要はないのだが、最愛の三井が、他の男性にアレコレ触られるかもしれないという、強迫観念に凝り固まって、一緒に受講することにしたようだ。

なのに、講師の勝手で、三井とテーブルを隔てられ、あまつさえ、三井ハーレムと化している彼のテーブルを横目で見ているので、ストレスが溜まってしまっている。

先週、三井にあまり他のおじさんたちと仲良くならないでと、懇願したが、一笑に付されてしまった。

仙道が一緒にいて、にらみを利かせていないと、帰り道に送っていこうと小父様方が三井に声をかけてくるのだ。

初日、既に3人のエグゼクティブ系の小父さんが三井に声をかけているのを目撃して、仙道は愕然とした。

『あ、おれ、こいつときてるんで…』

仙道は、そう言って、断ってくれてほっとしたが、考えたら、仙道がいない時は送ってもらっちゃうかもしれないと思うと、気が気ではなく、何をさておいても、この教室には通ってきていた。

今日も、試食の後、片づけをして、解散となる。

「三井君、今日もその彼と一緒に帰るのかい?」

「はぁ、そうですけど」

「今度送らせて欲しいな。美味しいフランス料理の店を見つけたんだよ。君にぜひともご馳走したいんだ」

「いや、私こそ!海の見える素敵なイタリアレストランを見つけたんだ。私と今度食事をしてくれないかい?」

何人かの小父様方に囲まれて、デートのお誘いを受けている三井を、慌てて、仙道は引っ張って帰る。

「三井さーん。絶対に、あの人たちの誘いに乗らないで下さいね?」

「え?なんで?飯奢ってくれるって言ってるのに勿体ねーじゃん」

「見返りは、三井さんの身体だったらどうするんです?」

「え?そんなこと言ってねーぞ?」

「言ってなくても、そういう含みもあるんです!」

きょとんとしている三井に、仙道は脱力した。

「お願いですから、知らない男にはついていかないで下さいね」

子供じゃないぞと三井は思ったが、仙道の真剣な顔つきに、ちょっと引いてしまって、こくこくと頷くだけにしておいた。

ようやく、安心したのか、周囲に小父さんたちがいないのを確認して、仙道の表情が穏やかになった。

三井も、ほっとする。

やはり、コイビトの不機嫌は気にはなるのだ。

「三井さん、家によって行きませんか?」

仙道が、自分の下宿にお誘いをかける。

「うーん…」

「みついさーん」

「わかったよ。でも、夕飯は家で食うからな」

お泊りはなしということだ。

「はぁ、そうなんですか」

「おう、今日はお袋がなんかごちそー作るって言ってたし」

コイビトの自分との時間は、三井の母のご馳走以下なのかと落ち込んだ仙道だった。

仙道の下宿に向かって歩き始めて、まもなく、三井が立ち止まった。

「三井さん?」

「そうだ、仙道。お前、明日うちから学校にいく気あるか?」

「え?」

「これからうちに泊まりに来いよ。昨日、宮城から新しい対戦ゲーム借りたんだ。それしようぜ!」

「は、はぁ…」

仙道の手を取って、三井は駅に向かう。

途中、仙道を連れて帰る旨の電話を、母にかけ、電車に乗り込む。

「お袋喜んでたぞ。泊まりになるって言っといたからな。あの人お前のファンだしよ」

三井と付き合うまでは年上の女性キラーで鳴らしていた仙道は、三井の母にも今まで培ってきた技能全てをつぎ込んで気に入られる努力をしていたのだ。

三井の自宅に連れていかれ、三井の母の手料理を堪能し、三井の部屋で思い切り対戦ゲームをする。

三井は、ゲーム好きで、対戦には目がない。

知り合いに新しいゲームを借りてきては、仙道と手合わせを願うのが常だった。

ただし、好きと強いは別物だ。

三井はかなり弱い。

だから、仙道は、わからないように手加減する技術を日々磨いているようなものだ。

およそ半々の勝率になるように調整しながら、勝負を続ける。

この後は、風呂に入って、三井と同じベッドで濃密な時間を送れるかもしれないと思うと、真剣に三井の機嫌を損ねないように努力を続けた。

ようやく、三井に疲れが出てきて、ゲーム大会もお開きとなった。

交代で風呂を貰うと、三井の母に、三井とお揃いにしてもらったパジャマで、仙道はいそいそと三井のいる寝室に向かう。

「三井さん?」

三井は、既に爆睡していた。

なんだか、今日も三井に振り回された一日だった。

なんか、恋人ってこんなあっさりしたもんだったっけと、仙道は今までの年上のオネェ様方との濃密なお付き合いを思い出す。

しかし、こんな仕打ちを受けても、三井の傍にいられるほうが、楽しいのだから自分は終わっているなと、苦笑する。

「みついさん、おやすみなさい。いつか、本格的なデートしてくださいね」

広い三井のベッドに潜り込んで、爆睡する三井の耳元で、ささやかな希望を囁く。

片手で足りる程度の、三井との以前過ごした濃密な時間を思い出しながら、三井を腕に抱きこんで、仙道も若干気疲れはしたが、愛する三井とのデートな一日に終わりを告げた。

 

 

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Revised: 2001/10/05 .