HPカウンターキリ番「1714」リクエスト:For COBAさん

お題:三井、牧、仙道、流川、土屋、桜木の6人アイドルグループネタ

ということで、キリ番リクエストですが、アイドルは、いまいちわかんなくって…

ごめんなさいね、待たせた上にこんなので…

 

 

アイドル伝説

 

 

「ミッチー、今日からのスケジュールやけど…」

リーダーの土屋が、三井に声をかける。

三井は、今超売れっ子のアイドルグループ、SDBOYSのメンバーだ。

青春スポーツドラマ・スラムダンクに、素人対象のオーディションを受けて参加し、そこで、共演者で人気のあった、土屋、牧、仙道、流川、桜木の合計6人が、やはり、素人からのデビューで、同じプロダクションと契約したため、放映後、まとめてアイドルグループとしてデビューすることになったのだ。

三井は20歳、同じ歳の土屋と牧、1歳下の仙道と、2歳下の流川と桜木の6人グループだ。

もともとバスケットボールの経験者ばかりで、根っからの体育会系のグループになるかと思われたが、上下関係などあってなきが如しの桜木と流川がいるせいか、年長組がさほど上下関係に煩くないためか、グループ内は、なかなかフランクな付き合いのもと、うまくまとまっていた。

「だから、ミッチーって言うなって言ってるだろ」

不機嫌そうに三井が抗議する。

三井は、ミッチーと呼ばれるのが好きではない。

ファンの女の子達が、ミッチーと呼んで手を振るのがなんだか嫌なのだ。

「ミッチーはミッチーなのだ」

言い出しっぺの桜木が、三井の背中から抱きつく。

「こ、こら!桜木!暑いって!離れろよ」

三井がもがいていると、流川がやってきて、桜木から三井を引き剥がして、今度は自分が抱き込んでしまう。

「先輩にさわるな」

「ふぬっ!このキツネ!ミッチーを離せ!」

流川も桜木も、三井がお気に入りで、自分が、いつもそばにいようとあれこれと牽制しあっているのだ。

「こらこら、二人とも、三井さんがぐったりしてるじゃないか」

横から、仙道が、そう言うと、流川の腕の中からあっさりと三井を奪い取って、自分の背後に三井を隠す。

「あーっ!センドー!」

三つ巴の争いになりそうな気配に、我関せずを決めていた牧が、溜息をついて近づいてくる。

三井の腕を取って、土屋の座る椅子のほうに連れて行った。

「三井の取り合いもいいが、まずは、仕事の打ち合わせを済ませてからだ」

年少組に振り返って諭す。

「ほんまに、ミッチーもてもてでええねんけどな、仕事だけはちゃんとしてぇな」

土屋が、スケジュール表をめくりながら、溜息をつく。

三井は、自分のせいじゃないのにという表情で、土屋の横の空いた椅子に腰掛けた。

「で、何だよ。スケジュール変更なのか?」

「あぁ、そやねん。緊急に一つ仕事入ってしもてん。ミッチーのオフ、堪忍やけど来週までおあずけや」

「なっ!そんなー」

三井は、今控え室でスタンバイしている歌番組が終われば、オフの予定だった。

二週間働き詰めで、ようやくやってきた完全休日で、一日のんびり過ごそうと、楽しみに指折り数えていた休暇だったのだ。

「なんか、プロデューサーからうちの社長に、ぜひともミッチーにお願いしたいってご指名やったらしいねん。ここで、恩売っといたら後々無理きいてもらえるやろ?頼むから、文句言わんと行ってや」

「う、うー」

本来は、マネージャーの仕事のであるスケジュール調整だが、社長の親族である土屋は、メンバーの希望を聞きながら社長と直接交渉できるため、実際のマネージャーより有能であるとメンバーに考えられており、彼の指示は、暗黙のうちに従うということになっていた。

「一人やと寂しいと思うから、牧もおまけにつけたるから」

「え?俺もか?」

横で人事のように聞いていた牧が驚いた顔をする。

実は、牧も今日の午前中の歌取りが終わればオフだったのだ。

「…わかったよ」

三井が、せっかくのオフがつぶれるのは、牧も一緒だと聞いて、しぶしぶ頷く。

「そら、おおきに。社長も喜ぶわ」

「で、土屋、急に入った仕事ってなんなんだ?」

諦めて、牧が尋ねる。

「うん、台本はこれやねん」

そう言うと、かばんの中から薄い台本を二冊出して、牧と三井に渡す。

「げっ!」

悲鳴をあげたのは三井だった。

彼に渡された台本には、「真夏の恐怖心霊特集、緊急報告!呪われた廃屋の恐怖の一夜」とおどろおどろしい文字が躍っていた。

「これは…。つまり、始めからうちのグループから三井ともう一人を出すことで、企画された話のようだな」

「うん、この間、バラエティー番組でミッチーが、怖がりっちゅうことがばれてしもたやろ?あれから、何件もこういうオファー来てるねん。一応社長もことわっとったんやけど、ここだけは断れへんかったらしい」

「や、やだよ!見ろよこれ!!なんで、一家皆殺しのあった廃屋で、一晩過ごさなきゃなんねーんだよ!」

三井が内容を見て卒倒しかけている。

「せやから、牧をつけたるてゆうてるやん。牧といっしょやったら怖いことないやろ?明日は、あいにくミッチーと牧以外は、びっしりスケジュールはいってて、二人しか行けへんねん。ほんまやったら、メンバー全部でっていう話やったらしいねんけどな」

横で、桜木や流川、仙道が何で、自分たちもいける日にロケしないのかと非難しているが、土屋は無視をした。

グループ内で、三井はいまやアイドル状態である。

結成後数年がたち、それぞれ顔が売れ始め、単品の仕事の方が集まって出る仕事より、多くなってしまっている。

解散の噂が何度か囁かれたのだが、三井以外のメンバーは三井との繋がりを切りたくなくて、解散などする気はないようだ。

まして、三井は、ひとりでの仕事も増えてはきたが、グループメンバーと一緒にやる仕事の方が好きなため、抜けるという気も起こらない。

事務所の社長も三井のおかげでドル箱のグループが仲間割れせずにいるのがわかるため、扱いもいい。

なにより、三井に一番毒されているのが、社長だという噂もあるくらいなのだ。

本来なら、三井の泣くような仕事は入れたくはなかったが、今回は相手が悪すぎたというか、怖がる三井が可愛くて、ついつい自分も見たかったという、魔がさしてしまった社長である。

「うー」

涙目で三井は抗議しているが、実は、三井のこの表情を、プロデューサーが気に入ってしまったことで、急遽決まった番組だったのだ。

三井は、表情ですぐに心に感じていることが出てしまうらしく、怖がりで、涙目でびくびくしているのに、変に強がっているところが、玄人受けするらしい。

実際、彼のファンは、若いお嬢さんより男性、しかも年上のおじさん連中に多いらしく、かなり傍若無人に振舞う割に、TV関係者に非常に受けがいいようで、こんな恐怖物以外でも、TV局の上層部からの依頼が単独で来ることが多かった。

子供に人気のある桜木や、若い女性に異常に人気のある流川、OLや、ホステスのおねぇさんに人気のある仙道、性別関係なく全世代コンスタントにファン層のいる土屋と、年配の有閑マダムやクラブのママに支持の多い牧という、メンバーと比べても三井だけは、主に男性に人気がある点で好対照といえた。

「なぁ、土屋…。断るわけには…」

三井が恐る恐る尋ねた。

「あかんな、これ断ったら、ここの局の番組当分出してもらえへん。まぁ、俺らだけやったら別にこの局ぐらいはかまへんのやけど、うちの事務所の子全部に立ち入り禁止が出てしまうかもしれへん。そんなことになったら、大変やろ?」

土屋は、首を振って、三井を諦めさせる。

「仕方ないな」

牧が溜息をつく。

三井も泣く泣く了承させられ、歌番組終了後、牧と三井は迎えにきた特番のスタッフにロケ車に押し込められて、一路山奥の廃屋へと連れて行かれた。

車中で、弁当を食べながら、同行してくれる霊能者という男性と大まかな打ち合わせを行う。

霊能者の男が言うには、三井は、何かと霊を引き寄せる体質であるようだが、二人にはそれぞれなかなか徳の高い僧が守護霊としてついているようなので、そんじょそこらの霊では、太刀打ちできない程の力があるとのことだ。

怖がりの三井は、それを聞いてようやく安心して落ち着いた。

先発隊が、廃屋の中で、ある程度は過ごすことができるように、掃除などの準備をしているようだ。

牧と三井は、暗視カメラの前で、一晩過ごすだけという番組らしいが、この廃屋というのが、どうやらかなりの確率で怪現象が起こる所らしい。

ロケ車から降り立ってみた廃屋は、夕闇が迫る時間帯のため、緊迫感が増していた。

カメラが回り始める。

牧が、カメラに向かって、台本どおりに進行の台詞を話し始める。

三井は、牧の後ろに控えているだけだが、背後の廃屋から、何かが出てきそうでびくびくしている。

霊能者が、後ろの廃屋を見渡して、霊が見ていると語る。

一行は、満を持して廃屋に入っていった。

ビニールシートを敷いて、座布団を並べた居間と思われる場所に腰を据える。

そこには、廃屋の各部屋や、周囲に置いたカメラのモニターが据えられており、一晩それを見ながら過ごすことになるらしい。

三井が、もう涙目で、牧にしがみつくようにして座っている。

牧は、あまり霊感が強くないらしく、何も感じず、いっそ三井のしがみついてくるぬくもりの方に気がとられるくらいだ。

しがみつく三井の肩を抱き、一晩このままで、牧は過ごせるか不安になる。

二人きりではないので、何とか、理性は保てるだろうが、こんな三井と二人きりなら、カメラがあっても、思わず押し倒してしまいそうになるだろう。

胡散臭い霊能者に、別の意味で心から感謝した牧だった。

撮影は、大変だった。

ある意味、大成功といえる。

モニターには肉眼では見えない白い影やビシバシという音が、頻繁に現れ、モニターを覗いていた三井は恐怖で声も出なくなり、涙目で牧にしがみついている。

牧も、普段は、何も感じないが、こうもモニターに異常な現象を見せられるとさすがに緊張してしまって、あまり声も出ない。

夜明けが近づく頃、とうとう、牧にしがみついている三井を映している背後に白い影が渦巻いているのが見えて、恐怖で三井が逃げ出そうと部屋のドアを空けた時、その向こうに一瞬血みどろの男の姿が三井の視界に入ってしまった。

小さな悲鳴とともに、三井はとうとう気を失ってしまう。

牧が、慌てて、三井を介抱する。

気付けに水を飲ませようとするが、気を失っているため、三井は水を飲もうとしてくれない。

諦めて、牧が口移しに水を飲ませる。

ようやく意識を戻した三井が、もういやだと牧にしがみついて泣きじゃくる。

牧が、必死で宥めすかす様子を、ひたすらカメラは写している。

ようやく、朝がきて、霊の騒動も終わりに近づく。

牧が、カメラの前で、レポートの纏めをし、ようやく収録が終わった。

翌日、三井たちがレポートしたビデオの他に、数箇所の心霊スポットのレポートを数人のコメンテーターとスタジオで見ながらの特番収録を行うことになった。

スタジオでも、大騒ぎになった。

スタジオ内を撮影したモニターにも、白い影が映り、コメンテーターの他に、入った観客達の中の霊感の強い人たちが霊にあてられた。

特番に呼ばれた数名の霊能者が、三井が霊を呼び寄せ、活性化させているのだという。

三井は、半泣きで牧にしがみついていた。

パニック状態の収録もようやく終了し、三井は牧と一緒に帰路に着く。

メンバーは、同じマンションの各階に暮らしている。

牧と三井は、同じフロアの隣同士だ。

「おやすみ、三井」

牧が別れて部屋に入ろうとすると、三井が牧の服の袖を掴む。

三井は俯いて、何もいわないが、どうやら怖がっていて一人になりたくないらしい。

「…三井、うちに泊まっていくか?」

牧の問いにこっくりと頷いて、その日から三井は、牧の部屋に転がり込んだ。

廃屋の体験から、三井が、一人になりたがらない度を越えた怖がりになってしまったのは、仕方がないかもしれない。

 

収録された特番が、世間で話題になった。

その日の視聴率は、徐々に上がり、バラエティの心霊特番では信じられない程の数字をはじき出した。

人々は、三井の涙目にくらくらし、牧にしがみつく姿に妖しい想像を働かせ、牧が口移しで水を飲ませて介抱する姿に二人の仲を妄想し、心霊特集というよりは三井と牧の怪しい一日を覗き見したような気持ちになる。

しかも、普段の心霊番組と違い、霊の姿と思われる謎の影がやたら画面に現れる。

それが、全て三井が呼び寄せたものだと霊能者が断言するにいたり、これ以降、三井の出る心霊特番のオファーがひっきりなしに寄せられることになった。

牧は、この収録以降、三井との仲が噂され、バラエティ番組もセットで呼ばれることになり、新たなファンがついてしまった。

そう、日曜になると大きな海沿いの展示場で、自分の妄想を本にして売りさばく女性達のターゲットになってしまったのだ。

しかも、男性からのファンレターも増えてしまった。

『ボクのアニキになってください』

三井となら、何をいわれても構わないが、他の男に言い寄られるのは勘弁願いたいと、牧も悩むことになったが、他のメンバーよりは三井に近いポジションを得ることが出来たため、こんな手紙は黙殺された。

一方、三井は泣き顔で怖がっている姿をオンエアーされて、恥ずかしいのと、その嫌な仕事の依頼がやたら舞い込むので困り果てていた。

他のメンバー達とも一緒にオファーが来るのだが、どうしてもあの日の恐怖が忘れられず、社長に直談判してこんな仕事はとらないようにと訴えた。

社長は、三井の一番のファンであるため、三井の望みはかなった。

 

その後、どんなにオファーがきても、三井に心霊特集の仕事は命じられる事はなく、結局一度だけ放映されたその番組が、伝説として語り継がれることになった。

そして、死者の霊にも人気のあるアイドルとして、三井もその名を後世に残したということである。

 

 

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Revised: 2001/08/31 .