HPカウンターキリ番「1114」リクエスト:For ちはやさま

お題:流川の大きな両手に頬を挟まれて「あんた顔ちイせー…」と言われている三井

うーん、流×三。

こんなに、流川って動かしにくかったんですね(泣)

難産でした。ごめんなさい。しかもこんな出来上がりで…。

ちはや様すんません(泣)

 

 

未知との遭遇?

 

何とも気詰まりだった。

部活の帰り道。

居残り練習で、三井は2年下の無口な後輩、流川と二人だけになってしまい、今、駅に向かって二人で歩いている。

三井のかばんを、横に曳いた自転車の荷台に乗せて、三井の斜め後ろを黙々と歩いてくる流川に、何を話せばいいのか、悩む三井だった。

ようやく駅について、三井は斜め後ろを振り返る。

手を出して、かばんを受け取ろうとする。

「ス、すまなかったな…」

「ウス」

流川からかばんを受け取り、三井は駅の構内に向かおうとする。

「じゃ、じゃぁまたな」

その三井の腕を、流川が急に掴んだ。

「?な、なんだよ流川?」

三井が、思わぬ流川の行動にどきどきしながら振り返り、当の流川にたずねる。

「明日」

「へ?」

「明日も残る?」

三井は、頭を捻った。

この無口な後輩が、何かコミュニケーションをとろうとしているのはわかる。

流川の口にした、短いセンテンスで、思いつく限り意味を探る。

「俺が、明日居残り練習するかってことか?」

ようやく、ひとつの答えを導いて、尋ねる。

こっくりと、流川が頷く。

あっていたことにほっとしたが、今度は、その答えを考えねばならない。

「明日か、明日は、そうだな…」

明日は、特に予定はないだろうから、おそらく居残り練習をするとは思う。

三井は、復帰後間もなく、少しでも早くバスケットの勘を取り戻したいのだ。

「まぁな、多分、残るんじゃねぇ?」

流川は、その言葉を聞いて、頷き、三井の腕を放した。

「じゃ、また」

そういうと、そのまま、自転車に跨り、三井を残して帰っていった。

残された、三井は、あっけにとられる。

「なんなんだ?一体…」

後輩の行動に、首を捻り、三井は帰路についた。

一方、流川は、ご機嫌で自転車のペダルを漕いでいた。

あの、出戻りの先輩とのバスケ練習は楽しい。

仲間を引き連れて、殴りこんできた時は、練習時間を削られて頭にきたが、バスケがしたいと泣き崩れ、再び部に舞い戻ってきてからは、真摯にバスケの練習を続けているのを見て、もう、最初の蟠りは解けたと感じている。

練習については、昔とった杵柄というか、バスケセンスがあり、ちょっとしたところでも、自分のためになる指摘をしてくれたりもする。

1on1をすると、6割くらいは勝てるが、4割くらいは負けてしまう。

その、勝つ割合が、だんだん減ってきているので、気が抜けない。

最近は、その先輩の一挙手一投足が、気になってしまう。

変だとは思うが、なんだか可愛いのだ。

2歳も年上のくせに、子供みたいに我侭だったり、偉そうだったり、それでいて、バスケをするのが嬉しそうで、こっちも引き込まれていくのだ。

明日も、また居残りまで、一緒に練習ができる。

嬉しくて、流川は、機嫌よく家路に向かった。

 

翌日。

バスケ部の練習が終わり、数名が居残りをしている。

「センパイ」

流川が、ロングシュートの練習をしていた、三井に呼びかける。

「なんだ?」

「1on1の相手して欲しいっス」

「ん?まぁいいか…」

1on1を始めると、居残りをしているほかのメンバーの手がとまり、二人の動きを見ているのが、何となく感じられる。

三井は、先輩としてのプライドもあり、負けられないと必死になる。

今日の対戦は、なんとか五分五分で終了できた。

ほっと、一安心して三井は体育館のフロアにしゃがみ込む。

体力がなかなか戻らない。情けないのだが、もう、へとへとだ。

汗をタオルで拭いながらあたりを見回すと、流川が、使っていたコートをモップ掛けしている。

反対側のゴールには、もう誰もいない。

対戦の間に、みんな帰ってしまったようだ。

流川を手伝うかと、立ち上がったところで、どうやら、モップ掛けも終わったらしい。

二人して、部室に戻ることになった。

途中、水飲み場で頭から水を被り、汗を押さえる。

シャワーがないのが、公立の悲しいところだ。

濡れタオルで上半身を拭き、汗を押さえて部室に戻る。

少しふらつく足取りで、三井が自分のロッカーの前にやってきて、ロッカーの扉を開ける。

流川のロッカーは二つとなりだ。

制服に着替えて帰り支度をして、ロッカーの扉を閉める。

ふと横の流川を見ると、着替えて、じっとこちらを見ていた。

「な、何だ?」

流川が、ずいっと近づいてくる。

「る、流川?」

あとずさって、三井は壁に背中がついてしまう。

流川は、三井の顔の両脇に、手をついて、三井を動けないようにする。

「な、なんだよ!流川?なにすんだ?」

三井は、どきどきしている。

今になって、殴りこんだ時の、報復だろうか?

一方、流川は、三井の足元がふらついているのを、少し心配していたのだった。

ちゃんと帰れるのだろうか、それとも、もう少し休憩したほうが良いのか、なんなら、自分の家に連れ帰って、休ませても良いと考えていた。

「センパイ、アンタ…。足元ふらついてる」

「だ、だったらなんだってんだよ」

無表情な後輩に詰め寄られて、三井は、半分涙目になっている。

「家に来る?」

「は?」

「家、すぐそこだから」

そう言うと、三井の腕を取って、自転車置き場に引っ張っていく。

「な、なんなんだ?」

なんで、どうしてと、三井の小作りな頭はパニック状態だ。

有無を言わさず、荷台に乗せられて、流川の腰に手を回すように引っ張られる。

無言で流川が、自転車を漕ぎ始める。

「る、流川?」

一体何が起こるのか、三井はどうしていいのかわからない。

間もなく、流川の自転車は、一軒の家の前に止まった。

純和風の日本家屋の門を開けて、流川は門の内側に自転車を入れ、すぐに戻って呆然としている三井の腕を引っ張る。

「こっち」

母屋ではなく、離れのほうに三井を引っ張っていく。

離れは、二間続きの和室と、小さな台所と、風呂とトイレがついているようだ。

三井を部屋に上げ、畳の上に座らせる。

「飯もらってくる」

そう言うと、流川は三井を残して、母屋のほうに出て行った。

三井は、混乱している。どうやら、後輩の家に招待されたらしい。先ほどの流川の行動の、何処が、先輩を家に誘う仕草だったのかは頭を捻らねばならないが、空腹でもあるし、まぁいいかと、三井は足を畳の上に投げ出して座った。

確かに、今日は、いつもより疲労度が高く、いまだに、足元がふらついている。

このまま帰るのは若干不安でもあったため、ここの寄り道は、もっけの幸だったかもしれないと、思うことにした。

落ち着いて部屋を見渡せば、男子高校生の部屋とは思えない、これといった特徴のない部屋だ。

かろうじて、となりの部屋にコンポと書棚と勉強机、衣装箪笥とベッドがあり、流川の生活の痕跡がある。

こちらの部屋は、テレビとコタツ用のテーブルがあるだけの殺風景な部屋だ。

しばらくぼんやりしていると、流川が食事を運んできた。

テーブルの上に広げられた和風の料理を見ていると、流川が、食べるように促した。

「食べたら?」

「お、おう、戴きます」

両手を合わせて、戴きますの挨拶をして、三井は、食事を始める。

料理は、美味しく、普段洋風料理の得意な三井の母になれている三井は、家庭料理に和食が出るのが新鮮な気分だった。

和食といえば、祖父の家か、料亭でしか食べたことのない、三井だった。

珍しく残さず平らげて、ご馳走様の挨拶をする。

流川は、浴室で湯をいれてから、食器を下げに母屋に行き戻ってきた。

「ふろ入ったら?」

流川は、着替えを箪笥から出して三井に渡す。

「え?、いや、俺、もう帰るし…」

「帰る?」

「う、うん…」

ちょっとびくびくしながら、三井は頷く。

「だめだ、かえさねー」

流川が、首を振る。

「な、なんで?」

三井は焦って、流川に詰め寄る。

「あんた、まだ足ふらついてる。心配だから、今日はうちに泊まったらイイ」

「い、いや、お袋が心配すっから」

「家のお袋から、センパイの家に電話掛けて、泊まるって言った」

「うそ」

「うそじゃねー。だから、安心して風呂入ったらイイ」

そういうと、強引に着替えを押し付けて、風呂に押し込む。

三井は仕方なく、風呂に入ることにした。

風呂から戻ってくると、部屋に客用の布団が敷いてあり、流川が、冷たい飲み物を用意して、待っていた。

三井の、着ていたものを、母屋で洗濯してもらってくるといって、出て行き、もどると入れ替わりに流川が風呂に入る。

三井は、流川に出してもらったスポーツドリンクを飲んでぼんやりしていると、すぐに流川が戻ってきた。

自分にも、台所にある小型の冷蔵庫からスポーツドリンクを出して、一気に飲み干す。

ふと、三井と流川の目があった。

流川が、じりじりとにじり寄ってくる。

「流川?」

三井がびくついて、声をかける。

「少し、おっきかったか?」

三井の着ているTシャツと短パンをみて流川が呟く。そして、ふと三井の顔を見て、首を傾げる。

両手を伸ばし、三井の顔を、両手で包み込む。

「流川?」

三井は涙目だ。後輩が何を考えているのか良くわからない。

もしかして、なんか、嫌がらせでもされるんだろうかと、背中に冷や汗をかいている。

「あんた顔チイセーのな」

「あ、アンタって…。先輩だぞ!俺は!」

先輩後輩にこだわる以前に何か気にしなくてはいけないことがあるんじゃないかと思うが、三井は、焦って、両頬を押さえる流川の手を外そうとした。

しかし、力の差か、びくともしない。

「涙目?」

流川が、ふと気づいて、首をかしげる。そして、三井の顔に自分の顔を近づける。

三井は、迫ってくる、流川の顔に恐れをなしてぎゅっと目を閉じた。

すると、唇に軟らかいものが触れる。

この感触は、もしかして…。三井が恐る恐る目をあければ、流川の顔のアップだった。どう考えてもキスされている。

「!」

何するんだと声を発そうとしたときに、流川のキスが、深いものになった。流川の舌が入ってくる。

「んーっ!」

流川の強引なキスに蹂躙されて、三井は、酸欠でぐったりしてしまった。

ようやく、流川から解放される。

「な、何で…」

息も絶え絶えに、三井が抗議すると、流川はしれっと答えた。

「したかったから」

「な、なんだとー!」

「アンタ可愛いのな。気に入ったし…」

ちゅっと、頬にもキスされて、三井は、恐慌状態に陥った。

流川は、わたわたする三井を、引きずって客用の布団に寝かしつける。

「朝練あるし、寝たほうがイイ」

そう言うと、テーブルの上を片付けて、自分も自室に戻ろうとする。

「じゃ、オヤスミ」

そう言うと、さっさと寝床にはいっていく。

残された三井は、布団の中で悩みつづける。

「い、今のはなんだったんだ?」

もしかして、流川はホモなのか?あんなにもてるくせに。わからない。まるで、未知との遭遇だ。

しかも、俺がターゲットなのか?いや、これは悪い冗談だ。

きっと、あいつの冗談に違いない。明日になったらきっと忘れてるはずだ。

無理やりそう思い込んで、三井は布団を被って眠ることにした。

しばらく、三井はもぞもぞとしていたが、疲れが、どっと出てきて、睡魔に身体を委ねた。

部屋に二つの寝息が聞こえる、流川邸離れの夜は更けていった。

 

 

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Revised: 2001/07/22 .