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隊長の戯言


2004/10/12 (火)10日目

 33円のインスタントラーメンを常食に据え、30円のジュースを買っている。目下考え得る限りの最低辺生活である。
 ところが5駅離れた所に位置するK市郊外にとんでもない店、健康食品店がオープンした。野菜ジュース16本にインスタントラーメン12袋、それぞれが100円で買えてしまう。つまりは8円のラーメンに6円のジュースであり、インドも適わぬ究極物価。危ない薬が入っているのか、はたまた盗品か。
 無論、それらは日替わりかつタイムサービス商品となっておるものの、このセールは三ヶ月ぶっ続けに行なうそうだ。

 そこで小生、潜入を試みた。
 商品を買うには説明会に出席せねばならぬらしく、案内された部屋には多数のおばあちゃん、おじいちゃんがいる。ふと辺りを見渡せば、20代1人。30代ナシ。40代ナシ。50代若干数。60代以上100人以上(椅子が30席×4用意されていた)。ちなみに「20代一名」とはわしのことだ。
 10分程待たされたところで、蛍光色ジャンパーを羽織った細木数子33歳が颯爽と現われ、会場は拍手が巻き起こる。とりあえずわしも拍手しておく。
 「本日のサービス商品を提供する前に…」と細木数子33歳は早口でまくし立てる。
 「当社の他の商品を説明させて下さいっ!」
 プルーンの袋を片手に持った細木数子33歳はプルーンのウンチクを語り始め、わしは適当に聞き流していたら、突然会場内に
 「てーつーぶーんっ!!」
とご老人方の満場一致の喚声が響き渡り、それを聞いた細木数子33歳はニンマリと笑い「はい、もう一度ご一緒に、元気良くっ」
 「てーつーぶーんっ!!」
 とりあえずわしも合唱に加わる。そしてどうやらプルーンは特別価格で提供してくれるとのことであるが100円引きの250円。誰が買うか、あほたれ。さっさとメインイベントに移りやがれ。
 と、突然会場に大音量のBGMが鳴り響く。映画『タイタニック』のテーマソング「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」のクラブ風バージョン三倍早送り。強烈なテクノビートに壁は揺れ、窓ガラスが悲鳴をあげ、1人の老人が立ち上がった。
 「買いますっ!!」
 続けて「儂も」「アタシも」と会場の彼方此方から老人の叫び声が聞こえ、無機質でトリッピーなテクノビートにのった老人たちが次々と挙手をし財布を振りまわす。細木数子33歳は各々にキッチリと真っ向勝負で対応し、「ありがとうございますっ!」と朱面乱髪、汗を飛び散らせつつ会場内を奔走する。
 細木数子33歳が一通り会場を巡り終えれば、突然テクノがピタリと止み、一瞬の静寂を取り戻す。が再び大合唱が始まり、「しょくもつせんいっ!!」「しょくもつせんいっ!!」そしてテクノ・ビート。
 上記の行為は一時間に渡って数度繰り返され、わしはようやく目的の商品を手中に納めることができたのである。落花生2キロ100円。
 
 二つ勉強になった。
 ・健康は宗教である。
 ・年金制度は10年以内に崩壊する。


2004/10/11 (月)

 断煙九日目 ≪真人間になりつつも≫
 禁断症状は三日目がピークだったようで、以降は突発的ニコチン摂取欲求は特に働くことなく現在ようやく九日目。酒を飲んだらタバコが吸いたくなるので深酒もしておらぬ。とは言え、辞書を破って手巻きのサルビア、ダミアナを時折吸っているのはここだけの秘密だ。
 唐突な性的衝動に襲われるもののそれを晴らす方向性が見つからず仕方なくその代替行為としてのスポーツに打ちこむ思春期の心境と一緒で、晴れの日はジョギング、雨の日は筋トレなどをやっている。実に健康的。
『笑っていいとも』を見ながら、極々素直にワハハと笑い、夜はバラエティー番組を見つつもそもそとメシを食い、きれいさっぱりフロに入ってぐっすり寝る。まったく何だ、この生活は。
 もはや多面的視点の立場に立つことは適わず、清く正しく一点から物事を見据えて判断を下す。二元論でなく一元論、帰納法ではなく演繹法。どうにもこうにも“まっとう”な人になってしまった。毎晩シラフだし。
 とりあえず毎日戯言は書いておるものの、あまりも清く正しすぎる内容になってしまう為、ボツにしとります。そんなわけで、喫煙を再開するまでの残り六日間にアクセスして頂くのは大変心苦しゅうございますので、どうぞ適当に、そして今週いっぱいはごめんなさい。

*

 中島らもの遺稿が収められてる『蒐集家』(光文社文庫)が素晴らしく良かった。井上雅彦監修のホラー小説短編集。結局中島らもの原稿しか読んでおらぬけれども、『今夜全てのバーで』に匹敵するほどの秀逸な作品だった。題名は『DECO-CHIN』。らも流の「幸福の真理」がユーモアに包まれて描かれてるいる。やられた。卑怯だ。
 佐藤清彦の『おなら考』、安ちゃんの『肝臓先生』が100円で売られていたので思わず購入。


2004/10/5 (火)

 断煙三日目 ≪まだ先は長い≫
 禁断症状のピークは五日目ぐらいからだろう、と何の確信も持たずに気楽に構えていたのだが、何てことはない。二日目にして至極あっさりと禁断症状を迎えた。集中力がなくなり、思考能力も何となく鈍くなってしまったような気がする。時折、頭が真っ白になる瞬間がある。
 現在、爪楊枝を加えて耐え忍んでおるものの、もはや文章もまともに書けませんので本日手抜き進行。

*

 大学在籍時代にやたらと略語を使いたがる外国人教授がいて困った。ある時は黒板に
「Don't 4get D8! 10/8 …C U L8R」
 とだけ書き残し、授業の途中で早々に立ち去る。そこで、しばし熟考巡らせたところ
「Don't forget this date! 10/8 …see you later」
 だと判明。今日は休講にするから10月8日に会いましょう、ということである。訳の分からん暗号解読をさせるな。

 同音異義語ではないけれども、他サイトにて面白いニュースを見かけた。要約する。
 イギリス在住のラッセル・ピーコックさん夫妻に息子が生まれ、夫妻は彼をドリューと名づけた。ある日、ラッセルさんは息子と同性同名の人がいるかどうか、ネットで検索をかけたそうだ。すると、出てきたのは以下のメッセージ。
 「スペルミスです。
 Drew Peacock(ドリュー・ピーコック)→Droopy Cock(ドロッピィ・コック)」
 
 信じられませんでした。私は改めてドリュー・ピーコックとつぶやいてみました。そして何度も繰り返しました。ドリュー・ピーコック、ドリュー・ピーコック、ドルッピー・コック。―――なんてことをしてしまったのでしょう。
 と、ラッセル・ピーコックさんは語っているそうだ。
 
※Droopy(形)=垂れ下がった、しおれた
 Cock (名)=おんどり、チンポコ


2004/10/3 (日)

 断煙一日目 ≪本日スタート≫
 カートン(10個セット)で購入したタバコを紛失した。おい、嘘だろ。夢なら覚めてくれ。改めて買い直すのも悔しいので、約二週間の断煙草を行なうことにする。ただし貰いタバコ、拾いタバコ、シケモクの類を吸うことは可。つまるところ“つもり”期間であり、買ったつもり、吸ったつもりの妄想期間15日。
 個人的には禁煙状態によって陥る胸掻毟阿鼻叫喚狂人咆哮の世界を体験してみたい所存であります。  タバコを紛失したことにより、日記のネタが得られた上に新世界を経験出来るとは、おれはなんという果報者か。嬉しいなぁクソタレ、おれのタバコを拾ったやつは出てこいクソタレ。
 初日につき、ニコチン禁断症状はまだ発せず。余裕で耐えられる範疇だ。

*

 過去に一年間だけ禁煙したことがある。わしが健康的な空手家であった時分の話しであり、マジメに強さを追求していた頃の話だから、この時はまったく労せずにタバコを止めることが出来た。一週間で一箱吸う程度のライトスモーカーだったのも幸いしたのだろう。
 当時は栄養バランスには細心の注意を払い、毎日高価なプロテインを飲み、炭酸ジュースも断ち、酒も節制を務めていた。そんなことが出来たのも一年間限定、つまり選手として引退するまでの期間限定であったからだ。しかし反動というものは恐ろしいもので、一年が過ぎた後はアホのようにタバコを吸い、アホのようにコーラを飲みまくり、アホになり、現在に至る。

 そもそも選手時代は煙草を吸うこと自体禁止されていたのだが、根が非マジメであるわしはトイレに隠れてしばしばタバコを吸っていた。20歳になってこそこそタバコを吸わなくちゃならないのも妙に情けない。
 ある時、後輩を引き連れ、飲み屋街をさ迷っていた時のことだ。わしらはバッタリとコーチに出くわした。幸い後輩の発見の方が早く、「あっ!」と奇声を挙げたものだから、わしはその一言で瞬時に状況を察し、コーチに方へ振り返りつつも手に持っていたタバコをしれっと捨て、ビシリと直立不動の態勢をとった。伊達に反射神経は鍛えられちゃいないのだ。
 心の底で自画自賛しつつ、軍隊口調での改まった挨拶をしたところ、驚いた。挨拶の言葉と一緒に白い煙がもっさりと口から漏れてきたからだ。人間、驚いたり、咄嗟な行動を取った時には本当に「息を飲む」ようで、わしは状況を察した瞬間から期せずしてずっと息を止めていたようなのである。
 ちなみにその時咄嗟に考えた言い訳は「いやァ寒いですね」だ。10月の九州で息が白くなるかよ。





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